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「THE SECOND」は何故こんなにも素晴らしかったのか

※THE SECONDが最高の大会すぎて、stand fmで聞き手もいないのに1人で感想を1時間語るという寄行をしてしまいました。内容はかなり重複しますが、そのnote版という感じです。

https://stand.fm/episodes/6468f655b35aacbb2bcc2df1

THE SECONDが放送された。優勝はギャロップ。「芸歴16年以上の漫才の賞レース」という前代未聞の大会は大盛況で幕を閉じた。
正直、自分は「面白そうだな~」とは感じていたもののM-1ほどの熱量はなく、予選を見に行ったり配信を見たりということもしていなかった。しかし蓋を開けてみれば、賞レースとかもう抜きにして「こんなにずっと面白くて楽しい4時間の番組があっていいんですか?」という感じであった。
では何故、そこまで熱があったわけではない自分がstand fmで慣れない一人喋りを1時間ノンストップでやるレベルでハマったのか。

THE SECONDを最高の大会にした2つの要素

THE SECONDがこんなにも最高の大会になった理由はもちろん2つだけではないと思う。決勝に残った全てのコンビが死ぬほど面白かったのは言うまでもないし、最大の功労者は彼らである。しかしTHE SECONDの制度・ルール設定が非常に秀逸であったのも強調しておきたい。

①ネタ尺「6分」という時間設定

M-1のネタ尺が4分間であるのに対して、THE SECONDは6分間である。この6分という時間設定が素晴らしかったと思う。
M-1のネタ尺である4分間では「遊び」の部分までネタに取り入れるのはほぼ不可能だといってもいい。普段、芸人が寄席で披露するネタの持ち時間は10分が相場であり、M-1の4分という尺がどれほど短いか伺える。
恐らくコンビの特色によって、4分尺だとネタの魅力が伝わりきらない場合もある。M-1のネタを「仕上げる」という作業は「4分間にどのようなボケを入れ、どのようなツッコミを入れるか」を数ヶ月掛けて調整するという作業に等しい。その過程の中で、コンビとして本当は入れたいボケやツッコミを客受けや一般受けを考慮して泣く泣く取りやめるということも往々にして出てくる。4分尺はネタをやる上での余白の部分がほぼ無いに等しい。それと比較してTHE SECONDは冒頭で他のファイナリストに言及したりと''寄席の漫才''感が強い。M-1では尺と審査員ウケの都合上、他の出演者を冒頭で軽く弄るようなことはできないと思う。ネタをやる上での自由性の高さがTHE SECONDの最大の特色である。制作の指揮を取ったプロデューサーはインタビューにおいて「芸人ファースト」を意識していると答えていた。テレビ番組なので視聴者のことを考えるのは当然だが、まずは芸人が出場して良かったと思えるような大会を作りたいと。恐らく芸歴16年以上のコンビにとって、6分尺というのはテレビ番組のネタ尺においては最も伸び伸びとやれる時間だと思う。5分では4分とさほど変わらないし、7分では番組の尺的に厳しい。テレビで視聴している方も、芸人がやりたいネタを伸び伸びとやっている様子は見ていて気持ちがいい。ナイツ塙氏の著書「言い訳」では、「M-1は短距離走」と書かれていた。あの著書は2018年までのM-1を経て書かれたもので、スーパーマラドーナやギャロップについて「長距離走向き」と表現していた。出版から4年後、「長距離走」の賞レースが開催されるとは誰も予想しなかっただろう。そして著書で名前が出たギャロップが初代チャンピオンになっているとは。

②観客による審査

THE SECONDの開催が発表され、審査方法が完全客表だと知った時は正直な話あまり良いとは思えなかった自分がいた。予選・本戦に集まるのは相当なお笑いファン達だろうが、いくらお笑い好きといっても一般人の一存で芸人の人生まで決まってしまうというシステムは手放しに賛同できなかった。
また、予選で観客にコメントを求めたというレポートを見て困惑した記憶がある。テレビ番組としてのエンターテインメント性を追求しているのか、他の賞レースとの差別化を図っているのか当時は分からなかったが肯定はできなかった。自分が予選でコメントを求められたらと思うとゾッとするし、(いないとは思うが)芸人に対してリスペクトに欠けた発言をする観客などがいる可能性も考えられた。しかし一方で芸歴16年以上のベテラン達を審査できる5名前後の芸人を集めることもまた大変だろうなとも感じていた。M-1と全く同じ審査員にする訳にはいかないだろうし、そういう点では観客審査は致し方ないかもしれないと感じた。
しかし、蓋を開けてみればTHE SECOND大成功の理由の1つとして観客が審査するというシステムが挙げられるほどの英断だった。
まず、漫才というものは誰に向けられたものだろうか。言うまでもなく目の前の観客を笑わせるためのものである。芸人として相当なキャリアを築いた審査員たちのいる賞レースでは、観客の笑いをどれだけ取ったかという点も加点要素ではある。しかし基本的には審査員、つまり同業者を笑わせなければならないのは事実だろう。そのため「観客には相当ウケているのに審査員の点数は低い」という審査のギャップが生まれる可能性は低くない。それが悪いわけでは決してなく、客ウケのみで評価が決まるのであれば何をやってもいいという風潮が生まれてしまうかもしれないし、審査員の存在がそういった無秩序化の抑止力となっているのは確実だろう。お笑い自体あまり見ないような一般人には理解できなくても、同業者の目線からは非常に優れた演芸であるという評価の仕方は絶対に必要ではあると思う。しかしTHE SECONDの完全客票審査というシステムは「漫才は目の前の観客を笑わせるものである」というごく当たり前のことを思い出させてくれたように感じている。マシンガンズが2本目のネタでYahoo知恵袋の質問が書かれた紙を読み上げていたが、審査員によるジャッジであればかなり賛否が分かれていたと思う。アンバサダーである松本人志のコメントがそれを物語っていた。しかしTHE SECONDにおいては、勝ち上がるために必要であるのは観客からの評価のみである。小道具を使おうがメタ的なネタだろうが、客をより多く笑わせた方が勝利する。一般的な漫才における定説や模範を破っていたとしても、面白かった方が勝ちである。M-1グランプリにより「競技漫才」という言葉はすっかり定着したが、漫才師の主戦場である舞台上の生のネタの素晴らしさをTHE SECONDが再確認させてくれた。また観客にコメントを求めるというシステムに関しては、単純に人気投票化することを防ぐ役割もあるのだろう。(無論、あの場にそういった類のファンは存在しないとは思うが)ようするに「何故このネタにこの点数をつけたのか、急に指名されてもしっかり言語化できるぐらい考えて審査をしてくださいね」ということだろう。「自分が急に当てられてコメントを求められる可能性がある(しかもネタをやった芸人本人や他のお笑いファンの前で)」という意識があれば、半端な審査はできないというプレッシャーにもなる。THE SECONDの観客の審査を褒めるツイートが散見されたが、客にコメントを求めるシステムが彼らをより一層真剣にさせたのは間違いないと思う。
THE SECONDの情報解禁時点では審査システムにマイナスな印象を抱いていた自分だが、放送を見て「真意も知らずあれこれ言ってすみません」と恐れ多くなってしまった。
M-1はもちろん芸人が世に出るための重要な役割を果たしているが、同じ漫才の大会でありながらM-1とは対をなす賞レースとして、THE SECONDが今後も続いていってほしいと思う。

各コンビへの所感

ここでファイナリスト8組のネタを見た所感を書いてみようと思う。かなり私情が入り混じった文章にはなってしまうと思うが、ネタを見て感じたことを記述していきたい。

①金属バット

8組のファイナリストの中で誰のファンかと聞かれたら、私の場合は「金属バット」であると答えると思う。彼らがM-1でなかなか準々決勝から駒を進められない時期から毎年予選を見てきた。初めて準決勝に進出してから、毎年決勝のステージで見れることを期待してきたが惜しくも叶わなかった。金属バットのラストイヤー終了から約半年後、地上波の賞レース決勝で彼らを見ることが出来るとは誰が想像しただろうか。あの頃は芸歴15年以上の賞レースが新設されるとは知らず、金属バットのM-1グランプリが終わったことをただただ残念だと感じていた。(その後、大宮で囲碁将棋×金属バットのツーマンライブを見に行った時、非常に面白かった。賞レースを卒業した彼らの漫才はとても良かった。)
THE SECNDでの金属バットの漫才は、彼らにしか出すことの出来ない良さや魅力を十分すぎるほど伝えるものだった。自分はこれだから金属バットが好きなのだと、改めて感じさせられるようなネタだった。痛々しいが彼らがステージに現れた時、思わず涙してしまいそうな気分になった。何度も繰り返すようだが、M-1の出場資格を失ってからわずか半年後に賞レースの決勝に金属が進出しているとは、予想だにしなかったのである。トップバッターであることを忘れるほどのウケ方だったし、地上波のゴールデンとは考えにくいようなライブ感だった。「思想強っ」の場面であったり、一つ一つのボケからこれだから堪らなく金属バットが好きだと十分すぎるほど感じさせてくれた。
結果は2点差で惜しくもマシンガンズに敗退してしまったが、トップバッターとは思えないほど面白い漫才だったし最高の大会の幕開けを感じさせるようなネタだった。この大会は凄いものになるだろうなと、そう予感させてくれた。来年もTHE SECONDがあるのかはまだ不明だが、再び決勝で見る事ができたら死ぬほど嬉しい。本当に出場してくれてありがとうという気持ちでいっぱいである。

②マシンガンズ

今回のファイナリストで最も衝撃を受け、頭から離れなくなったのがマシンガンズである。子どもの頃、エンタやレッドカーペットで彼らを見ていた記憶はある。10年以上の時を経てお笑いオタクになった自分はTHE SECONDの決勝でマシンガンズを見て、雷に打たれたような衝撃を受けた。
賞レースの決勝で、こんなことをやったコンビは今までいるだろうか?
ネタをほとんど決めていないまま舞台に立って、舞台裏で数十分前にしたエゴサーチの結果を話すというライブ感。THE SECONDの決勝でしかできない漫才である。自分達の境遇や現状の自虐から生み出されるWツッコミの漫才は、他のどのファイナリストとも色が全く違っていた。今までそれなりに賞レースというものを見てきて、これほどまでに胸を打たれたのは初めてかもしれない。1本目のネタ直後にすぐにライブのチケットを取ろうと思い、調べてみたら直近のライブ出演数はたった数件。信じられなかった。
特に2本目、三四郎との対決で見せたネタはもはや賞レースそのものの歴史に残ってしまうような衝撃的な漫才だった。まさにこの時、この瞬間しかできない漫才。M-1でこんな構成のネタをするコンビはまずいない。いないというか、ルールやシステム上の理由でやろうと思ってもできないだろう。決して正統派ではないのだが、漫才というものを原点に立って考えると、目の前の客をフリースタイルで笑わせるこれが一番の正統派なのか?という気持ちも生まれてくる。もし単独ライブでも開催されたら、どんな用事を犠牲にしてでも絶対に行きたい。
前述したがTHE SECONDの審査システムが完全なる観客審査であるからこそ、マシンガンズは輝きに輝きまくったのではないだろうか。アンバサダーとして松本人志は会場にいたが、審査権はない。もし彼が審査員であればマシンガンズのネタには高い評価をつけていなかっただろう。しかし観客審査であるからこそ、小道具を使おうがメタネタだろうがネタがほぼ決まっていなかろうが、単純に面白かった方に点数が入る。そこに漫才のセオリーや暗黙の了解というものはほぼ考慮されない。芸人がネタをやる上で、舞台とテレビ番組のギャップというものは確実にあると思う。舞台上では許されることがテレビでは許されなかったり、忠実に尺を守る必要があったりということが予想できる。しかし限りなく舞台とのギャップがないネタをテレビで、しかも賞レースで披露して高く評価されるというのは素晴らしいことである。マシンガンズは今、この瞬間しか二度と出来ない漫才をリアルタイムで披露していた唯一無二のコンビだった。

③スピードワゴン

最初に、スピードワゴンがこのキャリアとポジションながら賞レースに出場してくれたということに尊敬の念しかない。M-1決勝にも進出しているし、テレビでもお馴染みである。結成は1998年。私がこの世に生まれる前から二人は漫才をしているのである。自分が精子にも卵子にもなっていない頃から漫才をしていた彼らが、成長してお笑いファンになった自分を賞レース決勝で笑わせているという状況は物凄いことである。彼らは芸能界で一定のポジションを築いていながらも、お笑いライブにも定期的に出演してネタをやってきた。売れるとネタをやる必要はなくなることも多いのだが、それでもネタを大事にしてきた。またABEMAの「月曜 THE NIGHT」は若手芸人が出演する番組として非常に重要な役割を果たしていたし、賞レース後にはファイナリストを集めてトークやネタをするというのが当たり前となっていた。終了してしまったことが本当に悔やまれるが、そこで若手に寄り添うスピードワゴン2人の姿勢というものは芸人にとっても、そのファンにとっても非常に有難いものだった。
決勝で披露した漫才は、正にスピードワゴンにしかできないネタで非常に面白かった。彼らの漫才は単なるキャラ漫才とは全くもって異なるのである。また、しゃべくりとコントの融合というごく珍しいスタイルであり、全く同じようなことをやっているコンビは他にいないのではないだろうか。小沢さんのバラエティでもお馴染みのキザキャラは言うまでもなく独自のものである。スピードワゴンがしゃべくりとコントの融合というのは、小沢さんが小沢さんであるままコントインし、それを俯瞰で見ているはずの井戸田さんも最終的には本人設定のままにコントインしていくという点にある。このスタイルにすっかり慣れてしまっていたが、よくよく考えてみれば相当の独自性を持った世界観である。その実はかなり奇特なスタイルに2人が25年の芸歴で築き上げてきたニンが乗っかって、まさに芸歴16年以上の賞レースを象徴するようなネタだった。流石である。今回の大会を通して、スピードワゴンの二人への畏敬の念はより一層高まった。次のTHE SECONDもぜひ出場してほしいし、優勝する場面も見てみたい!あと、関係者各位は月曜 THE NIGHT的なものをYouTubeでもライブでもいいのでお願いします。

④三四郎

予選の時点でお笑いファンを騒がせていた三四郎。ブレイク前、ライブシーンで無双していた時代の彼らを知るファンはみな口を揃えて凄まじかったと語る。当時の若手芸人のライブシーンを牽引する存在だったことは間違いない。その後、テレビをきっかけに世に出てからも彼らはM-1を決して諦めなかった。当然ながら、M-1のネタはライブで磨かれる。舞台以外の仕事が多いコンビが忙しい合間を塗って賞レース用のネタを作り、ネタを叩いていくことは非常に難しい。それでも毎年ネタと向き合い、準決勝まで進出していた三四郎の凄さは記憶に新しい。「松ちゃん待っててね」と言いつつ、ついに決勝で松ちゃんと会うことは叶わなかった。出場資格を失ってからも三四郎はテレビ、ラジオ共に大衆的な人気を集めていたが、THE SECONDでは予選の時点から猛威を振るっていた。予選のレポートを見ていると多くの人が三四郎のネタについて語っていたし、そこからちょっとした騒動があったりもしたので余計にお笑いファンを楽しませてくれた。
私自身、三四郎のネタが以前から物凄く好きである。他のコンビにはない独特のワードセンスであったり、絶妙な目の付け所が堪らない。今回披露したネタは今まで見てきたネタの中でもえげつない面白さだった。予選で最高得点を出したのも納得のとんでもないネタだった。もとより彼らが持っている独自のセンスや視点に加え、笑わざるを得ない目の付け所の数々。「20年後のザ・サードの3位は佐久間亘行」「しゃしゃり出てくんな!」というくだりは腹抱えて笑ってしまった。全体を通して、これを生で見たら笑わないことは不可能だろうなと感じた。三四郎はお笑いファンをかなり信頼しているということが非常に読み取れるネタだった。
金属バットにも同じことがいえるが、M-1に挑み続けるも決勝の舞台には立てなかった彼らが新しい賞レースで大活躍する場面が見れたことがとても嬉しい。三四郎は本当に唯一無二の漫才師だと思っている。彼らと似たようなことを芸歴が浅いコンビがやっても、単なるインスパイアにしかならない。かつてライブシーンで大暴れしていた彼らがまた舞台で爆発するところは、死ぬほどカッコよかった。また次があるのなら間違いなく優勝候補である。
2試合目のマシンガンズVS三四郎は、個人的には今大会で最もハイレベルで甲乙つけがたいカードだった。

⑤ギャロップ

初代王者となったギャロップは、この日まさに神がかっていたように思えた。何というか「ゾーン」にでも入っているような、そういう凄味があった。2018年のM-1グランプリでは8位、審査員には「4分の尺には合わない」と評された。決勝前には関西の手堅い実力派として優勝候補と言われていたほど、予選での評判は非常に高かった。個人的には恥ずかしながら生でネタを見た経験がなく、今回3本もネタを見れて嬉しかった。「ハゲネタ」は擦られすぎているかもしれないが、舞台で磨いてきた圧倒的な漫才の腕が「単なるハゲネタ」と思わせない。最高峰のしゃべくり漫才である。
特に衝撃的だったのは「フレンチ」のネタである。あれを賞レースで、しかも優勝を懸けた場面でやる行為は恐ろしささえ感じる。私は全くの素人なのでこんなことを言うのはおこがましいが、もし自分が芸人の立場だったら絶対できないしやりたくない。話術、スキル、今まで舞台で培ってきた経験があったとしてもあれほど勇気の要るネタは賞レースで出来ないと思う。舞台裏のマシンガンズは3本目のネタをやり終えた後、ギャロップについて「笑い声が聞こえないから自分達の優勝あるな」と思っていたらしい。大きな賞レースの決勝のネタで長時間笑いを「待つ」ことができるのは今までのキャリアと場数があるからだろう。普段はダイアンやスーパーマラドーナなどの仲のいい芸人仲間からいじられている林さんだが、あの日の彼はゾーンに入っているようにさえ見えた。1度も噛まない、一寸の狂いもない漫才だった。近年のM-1において大阪勢の優勝はここ数年見られていない。ミルクボーイの優勝以来、関東芸人の台頭が続いている。そのような中でギャロップの優勝は大阪勢をより一層奮起させるきっかけとなるのではないだろうか。毛利さんは「最近、舞台の数も減ってきて悲しかった」と優勝時にコメントしていた。松本人志の言うように、こんなにも面白い人達が埋もれているのは悔やまれるし、それを発掘するという意味でも大会が開催されて良かった。今後、舞台でのさらなる活躍がとても楽しみである。

⑥テンダラー

テンダラーは「磐石」としか言いようがなく、素人目にもこういう漫才が上手い漫才なのかと感じるようなネタだった。賞レースのTHE MANZAIが開催されていた頃から、ネタの精度はさることながら滑っているところを見たことがない。今回のネタで衝撃的だったのが、ギャロップの1本目のように「カツラ」といったテーマを固定するのではなくネタのテーマがコロコロ変わるにも関わらず視聴者側が全く疲労しない点である。通常であれば「今、何してるのか分からない」的な状況に陥りがちなネタ構成だが、テーマの移り変わりが非常に滑らかで流れるような漫才だった。浜本さんの身体を使った表現力と演技力は唯一無二のものであり、ディズニー映画のキャラの動きの滑らかさを連想した。2人が将来、NGKの看板を背負ってトリを飾る姿を思わず想像してしまうような漫才だった。私はテンダラーの漫才を生で見た経験がまだ無かったのだが、すごく生で見たいと感じた。惜しくも敗退してしまったが、今回のどのファイナリストよりも舞台で培ってきた圧倒的な漫才の技術というものを感じ、圧倒されてしまった。ギャロップにも同じことを言えるが、大阪で舞台に立ち続けてきたコンビというのは肩の強さが違う。
テンダラーに関しても、彼らほどの実績とキャリアがあるコンビが新設の賞レースに出ようと考えること自体がとんでもないことだと思う。20年以上の芸歴を重ねても漫才への情熱が途切れず、ネタを作り続けられるコンビがどれほどいるだろうか。今回は惜しくもギャロップに敗退してしまったが、次があるとしたら間違いなく優勝候補だろうと思う。

⑦超新塾

他のコンビのネタ中にも度々言われていたように、今大会で一番の異色のファイナリストである。小学生の頃、毎週見ていたレッドカーペットに超新塾が出てくると嬉しかった。幼かった自分はレッドカーペットで誰がどんなネタをしていたかはそこまで正確に覚えていないのだが、超新塾はハッキリと記憶している。エンタの神様では、「禅」の空想ショートコントが大好きだった。
超新塾に関しては、4月に西新宿ナルゲキでネタを見た。決勝で披露したネタと同じものである。そのライブはストレッチーズ、ひつじねいり、ザ・ギースなどライブシーンで人気の芸人が多く出演していたにも関わらず、超新塾は会場が揺れるほどの爆発的な笑いを取っていた。子供の頃に大好きだった彼らを初めて生で見た自分にとっては感動さえ覚えるライブだった。だいたい10年後、お笑いライブで超新塾を見れるよと当時の自分に言ったら大喜びするだろう。生で見る彼らは迫力が桁違いだし、自分のように幼い頃にファンだった人は感動さえ覚えるのは間違いない。
10年以上前と全くテイストが違うネタを現在もやり続けてくれていることが非常に嬉しかった。予選ではKOC王者であるジャルジャルに勝利するというジャイアントキリングから始まり、関東の劇場番長・COWCOWにも勝利した。前述の通り、生で見る超新塾というものは本当に一味違うのである。目の前であのパワーで来られたら、笑わない訳にはいかないしそりゃあ点数を入れるだろうなとひしひし思う。生で超新塾を見たことがない人は、ぜひライブに足を運んで欲しい。今回の大会を受けてライブ本数も増えるだろうし。超新塾がジャルジャルに勝ったと聞いて、予選行けばよかった!と後悔したほどである。
言うまでもなく、3人以上の漫才というものはかなり難しい。旧M-1ではザ・プラン9が決勝進出したが、新M-1では3人以上の漫才は一度も決勝で見れていない。決勝に行くのではと期待されたトリオはいたが、未だに決勝進出は実現していない。超新塾は3人どころか5人もメンバーがいるが、彼らがTHE SECONDの初代ファイナリストとなったことは大会の多様性を象徴していたように思える。決勝で披露したネタもとんでもなくパワーがあり、他のファイナリストとは全く色が違うものだった。個人的には、生でネタを見た時からイーグル溝神さんのツッコミが非常に好きだ。4人を1人で捌く手腕は言うまでもないが、何というかツッコミにグルーヴがある。
超新塾はライブで見るとまた一段違った感覚がある芸人なので、今後ますますライブ出番が増えて欲しい。特に私のように幼い頃に彼らのファンだった人は、小さい頃にテレビで見ていた人たちが大人になった自分を笑わせているという状況に一種のエモーショナルを感じるかもしれない。来年もぜひ出て欲しい!

⑧囲碁将棋

かつてのM-1準決勝常連であり、お笑いファンからも同業者からも絶大な支持と評価を誇る囲碁将棋。THE SECONDへの参加が表明されてからすぐに優勝候補だと言われていた。私自身、意外にも彼らを見る機会がなく、今年初めに開催された囲碁将棋×金属バットのライブで初めて拝見したのだが、びっくりするほど面白かった。その時は「サッカー」のネタをやっていた。彼らは吉本でも有数のステージ数を誇る。賞レース卒業後も舞台で漫才を磨いてきた彼らが、THE SECONDの決勝に行かないはずがなかった。
1本目、2本目ともにめちゃくちゃ面白く衝撃的だった。センスとパワーを兼ね備え、お笑い好きにもお茶の間の視聴者にもウケる完璧なネタだった。「生意気」というワードの絶妙さが堪らなく、本当に面白い漫才だった。私の中での囲碁将棋の代表ネタといえば、過去のM-1敗者復活で見た「カバンなら置きっぱなしにしてきた高校に」である。今回THE SECONDで披露したネタと比べれば、評価は分かれるネタだったかもしれない。確かラストイヤーだった。その印象が強いためか、囲碁将棋のネタというのはこんなにも完成度が高いのかと衝撃を受けた。囲碁将棋はM-1ラストイヤー終了後も愚直に漫才をやってきたのだということが、6分で全て伝わるようなネタだった。
1戦目、超新塾が囲碁将棋に捧げたあのギャグは「囲碁将棋のやってきたことは正しい」という文言に図らずもドラマ性が生まれてしまっていた。囲碁将棋は常に他とは変わったネタをやっている印象があったし、評価は高いにも関わらずM-1決勝には行けなかった。しかしその後も舞台で腕を磨き続けた結果、THE SECONDという新たな賞レースで大きく爪痕を残した。そうした背景を考えると、超新塾のあのギャグは意図せずともかなり大きな意味を持ってしまっていた。そうだよな、囲碁将棋のやってきたことは正しかったんだよなと、多くのファンの方がツイートしてきた。2戦目のギャロップとの対戦も、''事実上の決勝''と表現されるほど甲乙つけがたいカードだった。会場の人もどちらに票を入れるか相当悩んだだろうなと感じた。囲碁将棋ってこんなに面白いのかと、今回の漫才2本を通して大きく衝撃を受けた。次があるとしたら、彼らはきっとまた出場してくれるだろう。優勝する画が鮮明に思い浮かぶほど、2代目王者の第一候補であると思う。

まとめ

本当に長々書いてしまい、気付いたら1万字を超えていた。自分でも驚くほどTHE SECONDという大会に心打たれた。新設の賞レースで前例もない中、特に大きな問題も起こらず大成功で幕を閉じたのは、参加する芸人を第一に考え大会づくりに尽力した運営の手腕だろう。どのファイナリストも損しない大会だったし、審査待ちの間のトークもお笑いライブのエンディングのような空気感があって良かった。参加した全ての芸人が輝いていて、賞レースを見てこんなにも心を動かされたのはいつぶりだろうかと考えるほどだった。全てのファイナリストが今後さらなる活躍を見せてくれるのが楽しみである。お願いだから、第2回も開催してください!予選も決勝も、どんな予定を蹴ってでも行きたい!
まとまりのない文章でしたが、ここまで読んでくださった方ありがとうございました。

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ちくわポメラニアン
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