ハンサムウーマンへの道
箱入りおばさんの自立日記
エピソード1 命日①
それは突然やって来ました。
52歳にして初めての一人暮らし
大好きな夫は52歳で早々と天国に召喚され
25年家族で暮らした貸家に
ぽつんと一人取り残された妻
沢山のお花とお線香に囲まれ
思考停止しながら
迷走する未亡人は、お葬式の施主を努める事になりました。
[夫が息を引き取った]と訪問診療の看護師さんから連絡を受けた時
妻は職場にいました。
[明日は休んで欲しい]と死を予知していた夫の依頼よりも辞令交付を優先した罪深い妻
まさかこんなに早く逝くなんて
人生最大のうっかりのしくじり
後悔の連鎖に突入します。
職場の後輩に夫の他界を告げると
[タクシーを呼びましょうか]と言われ、電車で帰ろうとしていた自分を発見
[駅で拾うからよいよ]と答えながらやはりこういう時はタクシーかと改めて自覚
タクシーの中で職場の何人かに連絡し忌引の間の職場をよろしくと依頼し夫との対面に備えます。
自宅に戻り夫のベッドルームに行き目を開いたままの夫と再会
周りにはモルヒネシロップが散乱し春の日差しを浴びながら、穏やかな表情の夫の頬を触り
[ごめんね]と声をかけました。
その表情は、
怒った顔でもなく
悲しい顔でもなく
苦しい顔でもなく
天使のような穏やかな表情だった気がします。
私を待ちわびていたのかもしれないけれど
死ぬ時に抱きしめて欲しいと言っていたけれど
一人ぼっちで逝かせてしまったけれど
あなたが選んだ奥さんは
あなたが死ぬまで詰めの甘さは直りませんでした。
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