地獄まで1週間
頭痛。
そして覚醒。
俺は、ふらつきながら立ち上がった。
体の奥底に残る、鈍い怒り。
辺りを見回す。
廃倉庫らしき建物の中にいる。
右手には、大量の武器が掛けられたボード。
拳銃、ナイフ、SMG、ライフル。
およそ考え得る限りの武器が並んでいる。
そして、目の前には縛られ、ズダ袋をかぶせられた男が転がっていた。
ズダ袋の中からは、くぐもった声が漏れている。
俺は自分の右手が小さな紙片を握っている事に気付いた。
紙には、こう書かれていた。
『これは、私のできるせめてもの罪滅ぼしだ。後は君の好きにしろ。君を生かしている賦活剤は1週間が限度だ。急ぐように。』
その下に「M.K」というイニシャル。
何かの予感を感じ、俺は男に歩み寄った。
男の頭からズタ袋を乱暴に取り払う。
頬に傷跡のある、いかつい顔が現れた。
カタギでないと一目でわかる。
俺はかがみ込んで、男の顔をよく見た。
突然のフラッシュバック。
銃を構える男達。
一斉に銃が火を噴く。
俺の体に、銃弾の雨が降り注ぐ。
俺をハチの巣にした連中の中に、こいつはいた。
「おい!」
俺は、男の上体を起こすと、その顔を思い切り張り飛ばした。
そして、男の猿ぐつわを外した。
「お前!おい、お前」
そこまで言って、何を聞けばいいのかわからないと気付く。
俺は何者か、何故ここに居るのか。
分からない。
頭に浮かぶのは記憶の断片だけ。
突然、男が悲鳴を上げた。
顔は驚愕に歪み、目には恐怖の色がある。
「あ、あ、あ、う、嘘だ、あ、あんた……あんた……」
男は、パクパクと金魚のように口を開け閉めした。
俺の心に凶暴でサディスティックな衝動が湧き上がった。
本能的に、俺は着ていたシャツをめくり上げた。
俺の体には、いくつものどす黒い銃創が、乾いた血に彩られて花開いていた。
男が再び悲鳴を上げた。
恐怖に圧倒された者の上げる、長い、長い悲鳴を。
【続く】
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