俺は如何にしてマッド・ジョーンズから生還したか
椅子に縛りつけられた手足、こめかみに突きつけられた拳銃。
絶体絶命だ。
しかし、そんなことは屁でもない。
なにしろ、とびきりのブロンド女が、俺の前にひざまずいて、ムスコをくわえ込んでいるんだ。
その快感ときたら!
掃除機……いや、もっと優しくて……とにかく、たまらない。
射精すれば、銃の引き金が引かれて俺は死ぬ。
しかし……それもいいんじゃないか?
クソみたいな人生の幕引きとしちゃ、これは最高の1つかもしれない。
どうせ、俺が死んでも悲しむ奴は1人も居ないだろうし……。
そんなことを考えながら、俺はファット・ジョーの方を見た。
腹のぜい肉をプルプルさせて、楽しそうに笑っている。
無様な俺の姿が、面白くて仕方が無いらしい。
とんだサディストだ。
奴の笑い顔がムカつくので、俺は別の方を見た。
スリム・クラークは無表情に俺の方を眺めていた。
多分、俺の事はどうでも良くて、俺が無くした金をどう埋め合わせようか考えている。
相変わらずの冷血漢め。
俺達がいる倉庫の中には、他にファット・ジョーの手下が6人ほどいた。
どいつも、こんな茶番はさっさと終わってくれという顔だ。
こいつらの顔を見ていたら、俺は死ぬのが嫌になってきた。
とはいえ、俺には何もできない。
ムスコのほうも、もう限界だ。
俺は天を仰いだ。
その時だ。
倉庫の扉がバン!と音を立てて開いた。
そして、筋骨隆々の大男が上半身裸で、機関銃を手に現れた。
そいつの筋肉ときたらシュワルツェネッガーが普通の公認会計士に見えるほどで、ステロイドをガロン単位で注射したんじゃないかと思えるほどの代物だった。
「出てこい!スマイリー・チャールトン!」
男はそう叫ぶと、機関銃を横なぎに乱射した。
ダダダダダダッ!!
俺に拳銃を突きつけていた男の頭が、ビルから落ちたカボチャのようにはじけた。
血と脳漿が、俺とブロンド女に降り注いだ。
【続く】