養子縁組無効確認訴訟と相続財産管理人選任と保全手続

 相続財産管理人は、通常、相続人がいない場合に選任できる。民法918条1項。
 しかし、養子縁組無効確認訴訟が係属中に、養親が死亡した場合、民法918条2項に基づき,被相続人の相続財産の管理人を選任可能。相続財産管理のために「必要な処分」として選任が可能。

相続財産管理人選任申立書
申立の趣旨記載例 「民法918条2項に基づき,被相続人の相続財産の管理人を選任するとの審判を求める。」

Q 民法918条2項に基づく被相続人の相続財産の管理人は、相続財産管理法人名義に遺産の登記が可能か。
A 不可。相続人がいるので相続財産管理法人が発生しない。相続財産管理法人は例外的に被相続人からの権利移転なしに登記が可能だが、相続財産管理人個人としては、登記ができない。権利移転がないため登記原因がない。
・・・したがって、養子が相続登記をして売却しようと思えば出来てしまう。

 もし、養子による売却を防ぎたければ、不動産処分禁止の仮処分をする。
その際、養子が相続登記をしていれば、オーソドックスな保全手続になる。
 他方で、養子が相続登記をしていない場合、被相続人名義のままでの保全が可能かという争点がある。
 相続登記を代位して、その上で不動産処分禁止の仮処分をするという方法もあるがこれだと、養子縁組無効確認訴訟で養子縁組無効が認容された場合、相続登記を抹消しなければならず、養子が非協力的だと訴訟をしなければならなくなる。
 従って、被相続人名義のまま不動産処分禁止の仮処分をするというのがベストの解決。法務局は、被相続人名義のままの保全の登記嘱託は基本的に却下するが、養子縁組無効確認訴訟係属中の場合は、例外的に認める運用をしている。

【処分禁止の仮処分命令申立書 記載例】
仮処分により保全すべき権利 不動産共有持分権確認請求権または不動産共有持分権に基づく抹消登記請求権(※保全申立後、債務者がいつ相続登記を完了するかがわからないため、このような選択的な記載となる。相続登記未了であれば前者、完了であれば後者の請求権。)
 
関連事件の表示 養子縁組無効確認請求事件 

申立の趣旨記載
債務者は,別紙物件目録記載の不動産について,譲渡並びに質権,抵当権及び賃借権の設定その他一切の処分をしてはならない
との裁判を求める。

立担保をボンドでやる場合の、担保目録記載例
債権者●が、令和●年●月●日を保証期間の始期として、損害保険ジャパン株式会社との間に債務者のため金●万円を限度とする支払保証委託契約を締結する方法による担保

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