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やりすぎ暴力的ミャンマーフットボール家族 第二節 ラグビーがオギャァと産声を上げた夜 あなたは新年を迎える

強敵ワゴFC襲来。村リーグの過酷すぎる日程が明らかに。2人の男がぶつかるとき、それは名誉の問題だ。炸裂する肘打ち。荒れるワゴFCサポーター陣。啀み合う大人たちを見る子供たち。一つのラグビーボールは奇跡を起こすことができるのか。



2度目の訪問取材


また私はこの土地へやってきた。この村には犬も子供も、大人もただそこに存在しているといった感じで歩いている。特に犬は明確な自我を持って自由に村中を闊歩している様子なので、すごく面白い。二回目の訪問であるというのにも関わらず、帰ってきた、という気持ちにさせられる。

そこらを自由に動き回る犬

子供達へプレゼントを配りたい

多くの貴重な出会いと仏教によって、人生の生きる意味とは、"主体的に人を愛し信じるためにあること"に気づいた筆者。いざ実行に移すべく、サンタクロースとして、子供達へ日本で買った駄菓子をプレゼントすることにした。子供たちは純粋で、駄菓子を受け取るとすぐに封を開けて食べ始める。駄菓子を貰ったからといって、ありがとうと無理に言う必要はない。彼らはありのまま受け取り食べる。気に入らなければ捨てる。すごく単純な選択肢が与えられた。駄菓子を獲得して喜び笑っている子供たちの笑顔を見ることができた時に、世界は愛で出来ていて、愛するという技術を高めたい、ジョン・レノンやエーリヒ・フロムが言ってたことは正しかったのだなと答え合わせをしているような気分になる。


駄菓子を手渡す喜びを噛みしめる筆者


VIP席 報道者対応

グラウンドに着くと、村長格らしき男に呼び止められた。私は僧侶の隣のVIP席が用意されていたのである。これは前回私が執筆した取材記録が認められたためであるのだろうか。VIP席に座る人は試合観戦する前に、しっかりと僧侶に手を合わせてお辞儀することがここのルールみたいだ。やはり僧侶というものは神聖なものであるのだろう。しかし、試合観戦中に、カーーッペッッとタンを吐き出したり、ため息をついたりと、人間味あふれる一面も持ち合わせていた。周囲には子供たちも群がり、試合に興味を示したり、飽きると友達同士で遊んだりしている様子であった。

僧侶と並んで座ったVIP席

ナシダFC(白)VSワゴFC(黄)

私は僧侶や子供たちとの話に夢中になりすぎて、あろうことか前半の方の試合内容をあんまり把握していなかった。サッカーの取材は本当に難しい。誰が点を決めたのか把握することも困難であった。気がついたときには2-1でナシダFCが1点優勢な状態であった。ナシダFCは少ないチャンスを確実にモノにして2点を奪取した。
対するワゴFCは、多くのチャンスに恵まれてもなお、決めるに決めきれていなかった。試合を見ている感じ、ワゴFCが高いボール支配率をみせ、優勢にみえた。前半の終盤にはワゴFCがゴールを決め、同点に並ぶ。ワゴFCサポーターは一同大喜びだ。

肩をぶつけながら激しく競り合う両チーム選手


キーパー肘打ち炸裂

後半2-2緊迫する場面、ワゴFCのFWが猛スピードでゴール前へ駆け抜ける。場面で、キーパーと選手が衝突した。倒れたワゴFCの選手に対して、ナシダFCのキーパーが怒り、あろうことか肘打ちを炸裂させた。前代未聞の出来事にワゴFCサポーターは激昂して、グラウンドへ徒党を組んで雪崩込んで来た。会場は大混乱であった。こんなにもエキサイティングな出来事に遭遇するとは思わなかった。張り詰めた空気の中でも子供たちは走り回る。プレー中にも、
子供たちはショートカット目的にグラウンドへ進入する姿がゆるい雰囲気を感じられて面白かった。

衝突のどさくさに紛れて肘打ち
頚椎に激しい痛みを感じるも、プレー続行


不満爆発のワゴFCサポーター

同点で試合が終わると、ワゴFCのサポーターは換気に湧いた。ナシダFCの方が格上とされてきたのだろうか。お互いの誇りをかけて戦うミェイク村民リーグでは、ありとあらゆる不正は許されない。村の威信をかけた闘いであるため、大人たちは過激に抗議し続ける。かたや一方でサッカーボールをラグビーボールに持ち替える子供たちがいた。そう。試合が終わるとグラウンドは子供たちのものだ。

キックキャッチの練習をする子供たち

魅惑のラグビーボールを村に設置する

牛か豚かの内臓をパンパンに膨らませたものが起源だといわれるラグビーボール。なぜここまでラグビーが愛されるか、その理由は楕円形のボールにある。愛される形をしている。卵型のボールは、どこへ転がるか誰にも分からない。子供たちはそのボールを一目見るとで心を奪われ、追いかけ回さずには居られないといった様子だ。サッカーのとりかごのようなルールでラグビーボールで遊んでいたが、またいつかこの村を訪れたときに、しっかりとしたラグビーの試合が見ることができたらものすごく面白いだろうなと夢を見ている。

とりかごラグビーを楽しむ子供たち

水浴びの掟


村にはいくつか井戸がある。子供たちは遊び終わるとその水を浴びる。私も彼らに習って実践してみた。外で全裸になるわけにはいかないので、ロンジーという伝統的なロングスカートのような服装に着替えて、水を浴びることが一般的だ。しかし、局部を丸出しにして水浴びをすることも可能である。運動をして汗をかいたあとにすぐに水浴びできる環境はすごく良いと思う。

村の水浴び場(手ブレしててすみません)

相互扶助の村民

私は子供たちのスタミナに圧倒されて、かなり疲れてしまったため、村にある井戸で水浴びを行っていた。そこへ水を汲みに苦戦しているおばあさんがいた。その姿を一目した子供たちは目を輝かせて水運びを手伝った。水の入った容器をたくさん載せた手押し車を子供たちは2人がかりで押した。その姿が、オトモアイルーが、倒れたハンターをベースキャンプへ手押し車で運搬しているようで面白かった。裸足で坂道を重い荷物を押す動き、これはまさにスクラムの際に必要な筋肉を日常の中で鍛え上げていたのだ。彼らは潜在的にラグビーと物凄い近い場所にいることが発覚した。

手押し車を押す子供たち(画面中央)

ミャンマー出身ラガーマンの可能性

2度目の滞在でもまた違った村の顔を見ることができた。筆者が講演をあとにしようとしていたときもなお、子供たちはラグビーボールで遊び続けていた姿を見た。この国から留学生としてラグビーをプレーしに来る子供たちが現れる本当に少ない可能性を生み出してしまった。私は会社の休暇中に何をしているんだ。またもやとんでもないことをしてしまったと一人、寝る前に大笑いしてしまう。


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