GLOBIS男性育休経験者座談会vol.1 嬉しい「家庭第一」のSlackスタンプ
あなたの周囲に、男性で育休を取った人はどれくらいいるでしょうか? 子どもを授かる、ということは母親だけのライフイベントではありません。とはいえ、まだ現実には……という方も少なくないでしょう。今年度はグロービスでも男性育休取得者が増加しています。また男性育休の取得促進に向け、2022年4月から企業側が対象従業員へ周知することが義務化されます。今回は、それに向き合う材料として、グロービスで働く3人の男性が自身の育休取得経験をオープンに語ります。(全3回)
【進行】
齋藤麻理子/GMS(グロービス・マネジメント・スクール)にて学生募集、個人営業を担当する。2018年10月に第一子出産、2019年春より復職。グロービス経営大学院の受講生相談にのる中で、復職で悩むのが未だ女性に偏っていることに課題意識を持ち、業務の傍ら男性育休に関する書評やインタビュー記事執筆などを行う。
【参加者】
スベン・バン・スチケル/ベルギー出身。2010年5月グロービス入社。POE(社長直轄部門)所属、グローバルハブづくりに携わるとともに、講師も務める。3人の子どもがおり、第一子(2015年誕生)から計3回の育休を取得。
佐々木健太/2017年9月グロービス入社、FGO(教員育成・教材開発部門)所属。 GAiMERi (ガイメリ、AIの学習支援サービス)でAIの開発を行う。2018年に1ヵ月の育休を取得。
黒木俊太郎/2020年7月グロービス入社。GDP(デジタルプラットフォーム部門)に所属し、海外向け動画学習サービスUnlimited(アンリミテッド)の開発を行う。前職で育休を9カ月取得。さらに1カ月の時短勤務後、グロービスに転職。入社時は、時短勤務からスタートした。
※いずれも座談会当時。
「男性育休」は静かに伝播する!?
齋藤:みなさん、育休はどれくらい取りましたか?
スベン:第一子・第二子でともに2週間ずつ。去年のコロナ禍中に第三子が生まれた時はサバティカルが使えたので、それを育休にしました。(グロービスでは、勤続5年毎に2~4週間のサバティカル休暇を付与)
佐々木: 私は、第二子が生まれた時に1ヵ月。第一子は当時、小学一年生でした。その頃の育休体験は、ワイガヤ(グロービス全社で情報共有するメール)やブログで発信しました。
黒木:前職で取った育休は9ヵ月。もとは7ヵ月の予定でしたが、育休中にコロナ禍に入り、保育園が開園しなくて延びました。グロービスに入社した7月初日から、時短勤務を約1ヵ月。妻の復職が8月だったので、それまで1時間の時短にさせていただきました。
齋藤:みなさん、なぜ育休を取ろうと思われたのですか?
佐々木:上司の勧めですね。「2人目だし、取ってもいいな」とは思っていたけれど、金銭面でデメリットもあるので迷っていました。上司は4人お子さんがいて身をもって大変さが分かっているからか、「ぜひ取りなよ」と。
「上の子のために」もありました。小学校入学の年だったのですが、幼稚園から小学校へと環境が変わるタイミングで、2人目も生まれると、家庭の環境も大きく変わる。それこそ「お母さんを下の子に取られる」となるのであれば、ちゃんとフォローしてあげたいと考えていました。
齋藤:私の周りでも、「第一子の育児でその大変さを実感したので、第二子の時は上の子をみるために取った」という男性は結構います。
スベン:妻も私も親が海外にいるので頼れないのもありますが、そもそもベルギーでは育休を取るのは普通で「取らないと恥ずかしい」くらいです。ほとんどの男性が半年や数ヵ月取りますから、それに比べると2週間はとても短いです。
妻は3回とも緊急帝王切開で毎回1週間以上入院しましたし、上の子のお迎えや家事は会社を休まないとやれません。グロービスで育休を取った男性は、外国人では私が初です。実は第一子は有給を使って休み、第二子で育休制度を使いました。グロービスは前向きな会社ですから、当然誰か取っていると思っていましたが、2018年時点でもあまり利用されていない制度と聞いて、ちょっとショックでしたね。
齋藤:黒木さんは、9ヵ月と長い取得ですよね。男性育休が珍しかった中で、かなりの決断だったのではないですか?
黒木:前職の直属の上司が男性で、5ヵ月の育休を取られたんです。それが大きな後押しでした。また育休制度を調べていくと、給付金が雇用保険から出ているとか、週に1回ぐらい出社して、給与が一定以内だったら育休給付金をもらいながら仕事ができるという選択肢があるなどを知り、業務のこと以外は会社への負担もそんなにないかな、と気持ちが軽くなりました。期間に関しては、なるべく長い方が良かったので、子どもが保育園に入るまでの9月から4月にしました。
齋藤:前の会社は、育休を取る方が比較的多い環境だったのですか?
黒木:いえ、多分、5ヵ月取った上司が初めてです。最初にそうやって取る方がいると、後に続く方が出て来るからいいですよね。
齋藤:山口慎太郎さんという経済学者の方が「男性育休は、伝播する・伝染する」と書かれていました。佐々木さんがワイガヤで全社向けに書いてくださったのも、ポジティブな影響がありそうですよね。
佐々木:確かに。実はその後、社内で4~5人男性育休が出たとのことで、人事から感謝のフィードバックをいただきました。
気がかりは「収入減」と「仕事のスケジュール」
齋藤:育休取得の際、どんな不安がありましたか?
佐々木:お金の面です。黒木さんも仰っていたように給付金が出ますが、例えば半年とか1年だと満額給与との差は百万単位になってきます。でも1ヵ月なら、たかだか10万円と微々たる額。その金額で仕事を離れ、家庭のことや自分のことだけを考えられる時間を持てるなら、10万円以上の価値があると判断しました。
齋藤:佐々木さんは社内で「育休の相談を受け付けます」とオープンにされていますが、相談はありますか?
佐々木:少しありましたよ。やはり、お金の話はしましたね。結構皆さん制度の内容を知らないですよね。
スベン:私の場合、不安としては2つ。まずは佐々木さん同様、お金です。HRの方に相談したら、2週間と短いですし影響は少ないというので安心しました。2点目は期間。緊急帝王切開だと早生まれの傾向にあるので、どんなプランを立てても予定日の1ヵ月前に生まれたりする。「育児休暇のプランはどうすればいいの?」という不安もありました。
そこで承認を得るための提案書を作って、リーダーの前で発表しました。当時は海外出張が多かったので、「この週は育児休暇、この週はワークアットホーム、この週は9時出社・5時退社…」と組み合わせながら、3つのシミュレーション計画を提出。結局、一番育児休暇の長い提案書が通ったので、それにしました。
齋藤:すごい!会社側の反応はどうでしたか?
スベン:所属部長も人事も、「ぜひぜひ!」と。嬉しかったですね。そもそも外国人なので、長い夏休みは前から取得していましたし、こちらの文化を尊重してもらった面もあるかな、と。ただ、私は他人の目は気にしないタイプですが、同じ外国人でも東南アジアの文化の人は気になるみたいで、「本当に取っていいの?」という反応はありました。
その後、私も相談にのったりするうちに「取っていいんだ」と思えたようで、今ではみんな、どんどん取得しています。
齋藤:育休を取得されたのはもちろんお三方だけではないのですが、外国人比率が高いというのは人事からも聞いています。もっと日本人でも取ってほしい、と思いますが。
佐々木:ちなみに、ベルギーでは育休が当たり前、ということですが、ここ数十年で増えてきたのか、それともその前の世代から一般的なのですか?
スベン:祖父世代の働き方は、多分日本に似ています。女性は専業主婦が多かったですし。ただ、それで過労が問題になりました。なので、1970~80年代のお父さん世代は普通に育休を取っています。政治家もみんな取るので、リーダーが取るなら、と一般の人も普通に取る。日本の社会はまだそこまでではないですよね。
黒木:諸外国と比べると、日本の男性育休取得率の低さがダントツというのは気になるところですね。私の場合は、子どもが生まれてくるのがすごく楽しみだったので、何とかして一緒にいる時間を長く取れたらいいなとずっと思っていました。
それが叶う形になったので、不安は大きくはなかったです。ただ、グロービスに転職する際、「入社していきなり時短ってどうだろう」とは思いました。実際は、早く帰る文化があったり、エンジニアは業務が属人的にならないようにするので、そこにうまく乗れた気はします。
今もチーム作りをする時は、「仕事を誰かに依存しないように」を意識していますね。そもそも休みやすくしておくように仕事をもっていかないと。
齋藤:仕事を止めないという意味でも、広げていきたい働き方ですね。転職面接の際は、不安の解消はできましたか?
黒木:「Slackに『家庭第一』というスタンプがあるよ」と聞きまして。休むことに関してどういう反応かを知れた時に「いいな」と思いました。内定を頂いてからも、何回かZoomなどでお話して、入社後の流れとかを綿密に確認できたので、不安は解消できました。
齋藤:「家庭第一」のスタンプ、いいですよね。「体が大切」もよく使います。
次回、実際に育休をとってみてどのように過ごしたのかを聞いていきます。