熱が恋しいお正月

当たり前だけど、年末年始は毎年やってくる。12月もクリスマスを超えたあたりから、日々忙しく働く人たちも少しずつスイッチをオフにして世の中には年末感が高まってくる。(反対に仕事柄スイッチをオンにしていく人もいるわけだけど)

この年末感は好きだ。
今年も色々あったけれど、一年を終えれる安心感からなのか、美味しいものをたくさん食べて贅沢しても許される空気感からなのか。年の暮れとは良いものだ。

反対に、お正月は元旦を境にたった一日しか変わらないのに空気感は一変してオフにしていたスイッチは新年の抱負や目標という形でオンにされていく。

今年は元旦の夜から鼻の奥に違和感を感じて、『これは風邪をこじらせるな』という感覚で幕を開けた。インフルエンザが脅威的に流行していて、街ゆく人々、電車やバスやスーパーなどでも咳き込んでいる音が蔓延していたので、これは近いうちに僕のところにもくるかもな、と思っていた矢先だった。
まさか元旦に感染するとは思っていなかったが罹ってしまったものは仕方ない。

いつもの流れだと、鼻や喉に違和感を感じた後、炎症し、寒気、悪寒、発熱、発汗、解熱、回復という流れとなり、その一連を終える頃には、体力は落ちているのだけど、強制的なデトックス効果のせいか、気持ちは新たに清々しい気分になっていることが多い。

風邪は引きたくないけど、嫌いではない。
その理由は終わって終えば清々しい気分になるからなのかもしれない。
あとはどんなに忙しくても、強制的にスケジュールを止めざる得ないところ、発熱から発汗を経たあたりに飲むポカリの美味しさや、着替える気持ちよさ、そして何よりも布団に包まりながら聞くラジオや、見る映画は普段とは違う届き方がする気がして、とても心地よい。
風邪なのに心地よいっていうのも不思議なんだけど、発汗が始まったあたりからはとても心地よいものなのだ。
つまり、僕は風邪が好きなのです。

少し食欲が戻ってきた時のお粥も美味しいし、悪寒に震えている間、しばらくは携帯も見たくないので、デジタルデトックスにもなる、そして解熱した後のお風呂たるや。これは必ず朝風呂と決めている。

小学生の頃を思い返してみても、うちの家はお金はないけど、愛情はあるという恵まれた家に育ったので風邪をひいた時には、氷枕を用意してくれたり、着替えを寝床の横に置いてくれたりお粥を作ってくれたりした。小さなオレンジ色の豆電球の中で、熱くなった身体に当てる氷枕は冷たいのに少し温かく感じるような不思議な心地よさがあったのを覚えている。
そして何といっても学校を休んで平日の昼間に家に居る非日常を味わえる。いつもと違う時間、いつものと違うテレビ、いつもと違う家。
放課後になると今頃、みんなは遊んでるのかな?と気になり始め、その効果は学校が終わる時間までなのだけれど。

引きたくなけど風邪は好き。というのが子供の頃からの感覚だったように思う。
今回は元旦から風邪をひいたので、数日間は堂々と休める。少し楽しみにしているほどの自分がいた。

だが、いつもなら違和感、炎症、寒気、悪寒、発熱、とみるみる悪くなっていくが、今回は寒気が少しある程度、ほんの少し微熱がある、咳と鼻水があるが、急降下で悪くならずに、ダラダラした違和感が続いている。
熱はないのに熱があるような、食欲はあるのかないのか分からない、ご飯はあまり食べていない、汗をかくほどまで熱くなることもなく、数日間この違和感だけが続いている。
正月ムードもなくなり、明日からは通常モードという日になっても、熱のない風邪のような症状が続いている。

すっきりしない。
実にすっきりしない。
どーんと熱が出て、汗をかいてすっきり下がる。
最高の朝風呂で終えるのが風邪の美学なのに。
発熱はしたくはないが、今はただ熱が恋しい。
体調はこのままではいつ治ったのかも不明瞭になりそうだ。おそらくこの風邪は、ほんの少しの微熱以上は出ないだろう。
やはり風邪には熱が出て欲しい。
汗をかいて身体と気持ちをリセットさせる大切な役目があるとつくづく思う。

このままだと、あまりに不毛なので、この小さな随筆に残してみた。
今年も良い年になりますように。

いいなと思ったら応援しよう!