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【ちか旅プレイベント】色眼鏡を、あえて選ぶこと。栗原大輔さん
毎回のテーマごとにゲストのお話を伺いつつ、参加者全員でトークセッションをおこなうイベントプロジェクト、ちか旅。そのプレイベント、第0回が9月28日(土)に開催されました。
東京で流行っているタピオカミルクティー店の情報、コスパがいいと話題の化粧品、行ったことのないラーメン屋の評価。知りたいと思ったタイミングで〈はやく〉、どんな情報でも〈遠く〉手に入る時代になりました。
でも、はやく遠くでは手に入らないものもあります(それが何かは人それぞれ)。ちか旅を実際に開催してみて、旅はここにヒントを与えてくれるのかもしれない、と感じました。
誰かの人生を旅する週末イベント、ちか旅
旅が「新しいものと出会うこと」だとすれば、必ずしも遠くに行く必要はありません。目に入るものを何でも触ってしまう子どものような好奇心をもっていれば、たとえオフィスで仕事をしていても旅しているように自由でいられる。そのために重要なのが、「旅する心」です。
ちか旅で果たしたいことは、この「旅する心」を育てること、そして「旅する仲間」をつくること。同じ景色を見て、違う学びを得て、それをシェアする旅仲間をつくっていきたい。
そして私たちがご案内するのは、観光地ではなく「だれかの人生」。スピーカーとしてお呼びした方にライフストーリーを語っていただき、参加者はその中を旅するのです。
会場は、「その人が居るところ」
今回の旅先は、赤城山麓で「IRORI場」というゲストハウスを運営する栗原大輔さんの物語。
群馬県道4号・前橋赤城線沿いに佇む大きな古民家──130年の間、この場所でずっと赤城山の南嶺を見守ってきた建築。それをリノベーションし、ゲストハウス、起業家・移住者・サイクリストなどの活動拠点として活用しているのがIRORI場です。
ちか旅は、群馬県内の様々な場所で開催されます。スピーカーの物語を空気感ごと旅するため…という理由もありますが、わざわざ「行ったことのない場所」に赴くことが旅する心を連れてくる、と考えているからでもあります。
「意図を持って話を聞く」旅に出よう
13:30ごろ、IRORI場の看板猫・ムギちゃんも加わってゆるやかにスタート。
いよいよ旅の始まりです。
ちか旅では、スピーカーのお話を「色眼鏡」をかけて聞きます。森の中に咲く花を探すように、車窓から山を数えるように、ただ聞くのではなく意図を持って聞くということ。
今回用意したのは、感情・意味・挑戦・転機・適用の5つの色眼鏡。たとえば、「お話の中で自分の暮らしに適用できるような部分はどこですか?また、そこから得た学びは何ですか?」。
この中からひとつ選ぶことで、お話の中から意味を生み出します。
ここで語られるのは、ストーリーです。プレゼンテーションではありません。
団体旅行のように、予め決められたルートや答えはないのです。誰かが楽しみ方を教えてくれて、言われた通りに座って待っていれば、目的地にたどり着くこともありません。
それぞれが自分の心のコンパスを読み、どこへ行きたいかを決め、自分の足で歩みを進めます。
そこにどんな意味があるかは、他の誰でもないあなた自身がつくります。その実践は、旅や冒険そのものと言えるかもしれません。
探し物をしながらライフストーリーを聞いてみる:栗原さんの話
栗原さんは3人兄弟の長男として生まれ、幼少時代から親の言うことをすんなり受け入れるタイプだったそうです。
中学2年生のときまで実家が牛舎を営んでおり、農業の高校からそのまま実家を継ぐことになると思っていたら、宮崎県で口蹄疫ウイルスが流行。栗原家にも宮崎から仕入れていた種牛がおり、検査したところ感染が発覚。全ての牛を殺処分することになりました。
実家を支えていた事業がなくなり、お金がかからない国立大学へ進学。このときにも、変わりたい、自分を変えたいなどとは全く思っていなかったそうです。
まわりの仲間たちが就職活動をする中、ぼんやりと過ごしていた栗原さん。あるときにYouTubeで「人が世界を旅している動画」を発見します。ここで初めて、「道を逸れてみよう」と考え始めました。
そこから大学在学中に日本一周、卒業後に世界一周、その直後にママチャリで沖縄へ。これまでに一度も海外に出たことのない栗原さんでしたが、「世界一周なんてお金さえ用意すれば本当に誰でもできる」と語ります。
そして旅を終え、今度は料理の界隈へ入ってゆきます。周囲のご縁から前橋市の居酒屋の店長になり、またまた世界が変わって、現在は古民家のオーナーに。
「旅を始めるまでは普通の少年だった、おかしな経歴がついてきただけで根はそのまま。特別じゃない。」
「エントリーシートに嘘が書けない。自分を高く見積もることができなくて、就活ができなかった。」
ちか旅という場で、悩みながら編み出した言葉たち。
ストーリーは20分という制約の中で語られ、参加者は各々が選んだ色眼鏡を持ってじっくりと耳を澄ませました。
お土産をつくる。学びを紡ぎ出してシェア
栗原さんのお話を聞いて、まずは10分間を、自分の学びを紡ぎ出す時間に使います。いまの話が自分の心にどう写ったか、どのように聞こえたか……。このとき、誰かと話すのも、1人で考え込むのもOK。自由な方法で知恵を生み出します。
学びを生み出すことができたら、「場」に対してシェアします。スピーカーの気持ちを当てに行くのではなく、自分が得た学びを共有する。
今回は、こんな学びが生まれました。
・挑戦にブレーキをかけないこと。
・チャンスを逃さない、すぐ手を伸ばすこと。
・自分に寄ってきたものを引き寄せる力。深い選択をするときにはエネルギーが必要だから、選ぶことで引き寄せられるのでは。
・忙しい毎日の中でモヤモヤの根っこを探し続けること。
・小さな違和感に意識的であること。
・勇気を持ってすぐに行動すること。
これらは、誰かから与えられたのではなく、参加者がみずから紡ぎ出した、内側から生まれた学びです。はじめはその正解のなさに戸惑うかもしれませんが、その戸惑いごとお土産にしてしまいましょう。
プレイベントを終えて
ちか旅は、現在2名のメンバーで手づくりしています。ローカルで旅する心を育むために、また、自分たちの仕事を作るために。
私たちは「ちか旅」に大きな価値、可能性を感じています。
ちか旅を続けると、ローカルのおもしろい人と、次々につながっていくことになります。それはただの顔見知りではなく、立場や役割でもなく、それぞれの人生という旅に好奇心を持って、学び合う仲間です。
そんなつながりが近所にあるとしたら、私たちの毎日の仕事や暮らしはどのように変わるでしょうか。
私たちは、あなたと一緒に、そんなかけがえのない日常をつくりたい。
この旅路のどこかで、きっとあなたと出会えますように。
次回開催、第1回ちか旅は10月12日(土)。場所は富岡市です。
詳細はこちら→【申込受付中】近所のおもしろい人に会いにいく。ローカルを旅する週末イベント「ちか旅」@富岡市
どんな旅になるか、私たちも楽しみにしています。
一緒にちか旅しませんか。