【彼になった彼女】9話 合鍵の行方

いつもの夢を見ている途中で扉が開く音で目が覚めた
彼女が帰ってきたのだと思い急いで向かう

そこにいたのはアヤメの弟のユウだった
ユウはアヤメの荷物を段ボールに詰めていた
俺はその様子を無表情で見ていた
ユ「!!」
俺に気づき驚いたユウ

ユ「お、おはよう」少しおびえ気味に目をそらしながら言う
主「おはよう、どうした? 俺、また鍵かけ忘れてた?」
ユウがポケットから恐る恐る、合鍵を出す

アヤメの・・・
俺はそれを奪い取る
ユ「ヒロキ君・・・」ビクつきながら、無表情の俺に顔を向ける
主「ねぇ、何でアヤメの荷物を整理してんの? アヤメどこ?」
ユ「・・・・・・」
主「・・・質問に答えてくれないかなぁ?」
ユ「・・・え、ないで・・・」
主「なんて?」
ユ「甘えないで! 姉ちゃんはいない! 葬式だってした!!
 それより、この部屋・・・」
主「なに言っ・・・・ うっ・・・・・」
頭に激痛が走る

「姉ちゃん、死んだよ」というユウからの電話がフラッシュバックする
どっちが現実なのか、どっちが夢なのか、わからなくなりそうになった
頭を抱えながらその場に座り込む俺にユウが
ユ「ヒロキ君!!」と俺の背中に手を当てて、心配そうに覗き込む

ユウのその手を掴み
ふらつく足で必死に立ち、定まらない目で玄関までユウを引っ張っていく

ユ「ヒロキ君?」
主「アヤメ、帰って、くるから・・・
 荷物、さすがに、ユウでも、勝手に触ったら、怒られるよ」
と、乱れた呼吸で精一杯の愛想笑いをして玄関の外へとユウを押し出した

ユ「ヒロキ君!」
主「そんな目で見るなよ・・・」

そう、そんな驚くような、悲しそうな、訳が分からないような目で見ないでくれ
それじゃぁ、まるでアヤメを待っている俺がおかしいみたいじゃないか

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