インデックス投資の最高のアクションは「何もしないこと」 そのために投資信託の中身をしっかりと理解する。
投資家に人気の投資信託と言えば、全世界株式(オール・カントリー)とS&Pで、大抵どの証券会社でも、この二つが常に圧倒的な人気を誇っています。
S&Pは米国市場に集中して投資するのに対して、全世界株式はS&Pよりも世界中により広く分散されているため、多くの投資家に人気があります。
2024年1月からの新NISAで、この制度の対象となる公募株式投資信託への1月の資金流入額は約1兆3700億円でした。この中で、全世界株価指数に連動する投資信託、いわえるオールカントリーと呼ばれる投資信託への流入額は、9,900億円と流入額の7割を占めているのだと言う。
ただ、全世界株式の中身を深く理解している人はあまり多くありません。この記事では、全世界株式の中身についてじっくり掘り下げていきます。
どの証券会社でも人気の投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」はMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスに連動する投資成果をめざすインデックスファンドで、このファンド1本で、全世界の株式に国際分散投資をすることができます。
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスとは、米国のMSCI(モルガンスタンレー・キャピタル・インターナショナル)社が公表している世界の株式を対象とした浮動株調整後時価総額加重平均の株価指数です。
つまり、これは市場に流通している取引可能な株で、時価総額の高い企業により多く投資していくということになります。
全世界株式の国別の投資先を見てみると、米国62%、日本5.6、イギリス3.5%、フランス2.8、カナダ2.8%、スイス2.3%、ドイツ2.0%、オーストラリア1.7%、インド1.7%、台湾1.5%と、米国が半分以上の割合を占めています。
構成銘柄上位を見てみても、アップル(4.26%)、マイクロソフト(4.15%)、エヌビディア(2.25%)、アマゾン(2.13%)、メタ(1.28%)、アルファベットClass A(1.23%)、アルファベットClass C(1.09%)、テスラ(0.79%)と米国企業の存在感が圧倒的に大きいのが分かります。
全世界株式の1999年~2022年の24年間の年率平均リターンは5.9%で、S&Pとのリターンを比較したデータがSBI証券のサイトに載っていました。
上記の表を見ると、全世界株式は最大で年率49%のリターン、最悪の場合は年間53.1%の損失があることが分かります。S&Pは最大60.9%のリターン、最悪48.8%の損失と、過去のデータを見る限りはS&Pの方が、リターンが高いようです。
また、別のサイトの情報では、過去10年くらいのデータで見ると、一番良い時で年間40%の利益が出て、最悪の場合で年間30%の損失、リスクは大体15%~20%程度になり、95%の確率でこのような運用成績になるというデータもあります。
MSCIに連動している「eMAXIS Slim 全世界株式」は、世界情勢や業績の変動などによって、定期的に銘柄が入れ替えられています。MSCIの株価指数は3000銘柄で構成されていますが、その時の状況によって、ダメな会社は除外され、良い会社されるという入れ替えてが行われているのです。
例えば、直近の入れ替えでは、中国企業の66社が除外され、インド企業の5社が追加されました。こういった流れを見ても、お金が中国からインドに流れていることが分かります。日本企業も1社が追加され、8社が除外されています。
全世界株式には小型株は含まれず、上場企業の時価総額で、「上位70%に入る大型株」と「中位15%に入る中型株」の2つが投資対象になっています。
また、全世界株式は全世界に手広く分散投資されているように見えますが、実際は、先進国23カ国、新興国24カ国の合計47カ国で、これから成長していくであろうフロンティア市場や世界的に孤立している国などは含まれていません。
例えば、もともとロシアは全世界株式に含まれていましたが、現在では除外されており、アルゼンチン、ジャマイカ、ボツワナ、ジンバブエ、レバノン、パレスチナなどのカントリー・リスクがある国々も除外されています。
投資信託の中身をしっかりと理解しておかないと、暴落が起こった時に、不安になってすぐに売却してしまう恐れがあります。
インデックス投資における最高のアクションは「何もしないこと」であり、握力を高めて、投資信託をホールドし続けるためには、まずは深く、その投資信託を理解することから始めなければならないのでしょう。