20年先を見越したバフェットは、中国ではなく「グローバル・サウス」を買っていく。
近年、国際政治や国際経済の分野で、「グローバル・サウス」という言葉が注目を集めています。
「グローバル・サウス」とは米中対立など、世界の分断が進んでいく中で、アメリカなどの大国に依存せず、また西側にも東側にも依存しない形で、独自の路線で経済成長が期待されている国々を指します。
具体的には、インド、インドネシア、ブラジル、タイ、サウジアラビア、南アフリカなど南半球に位置するアジア、中東、アフリカ、中南米地域の国々を指し、大国や先進国の利害から独立した価値観を持ちながら、独自の経済発展を模索している国々です。
例えば、インドは米中対立からも一定の距離を保っていますし、ウクライナ戦争やロシアの経済制裁に対して、先進国の国々が横並びの政策を取る中で、グローバル・サウスの国々は中立的な立場を保っています。
脱中国の流れが加速する中で、IMFによれば、2050年のグローバル・サウスの経済規模は米国、中国を超え、2050年には全人口の2/3がグローバル・サウスになると予想されている。(人口はインドの割合が大きい。)
また、グローバル・サウスには資源国が多いのも特徴の一つです。現在、進行中のウクライナ情勢や将来懸念される中国の台湾侵攻など、戦争が起こると資源国は優位に立ちます。
株式ストラテジストの宮島秀直さんは、2023年4月にウォーレン・バフェットが来日して総合商社の幹部と面会した際に、中国の株はすべて売って、これからはグローバル・サウスの株を買うと言っていたと言うことを、自身のお客を通じて、聞いたのだそうです。
欧米の国々は、過去に資源国の国々から搾取した歴史があり、資源国とはあまり良い関係を構築することができていません。それに対して、日本の商社は資源国の鉱山の権利を多く持っているため、バフェットは総合商社の株を買い続けているのでしょう。
加えて、グローバル・サウスはインドのモディ首相、トルコのエルドアン大統領、そして、ブラジルのルーラ大統領など、面白い考えを持ったリーダーがいるというのも特徴の一つです。
特に、グローバル・サウスの中でもリーダー的な存在であるインドは、これから人口がどんどん伸びていき、2020年代の後半には日本とドイツを抜いて、世界第3位の経済大国になることが予想されています。
インドは、2023年8月に無人探査機を月の南極に世界で初めて着地させたり、太陽観測衛星などの打ち上げにも成功しており、非常に高い技術力を持っていることも特徴の一つです。
いまだに米国がイノベーションの中心であり、経済の覇権国であるのは間違いないのですが、世界の資源と高い技術力を持っているという意味では、長期的に見ればグローバル・サウスは大きく成長していく可能性が高いと言えるでしょう。
1960年から現在までサイクルを見ると、米国以外の世界株と米国の株は陰と陽の関係にあり、10年間米国の株が米国以外の世界株に勝つと、次の4〜5年は、米国株が世界株に負けるというサイクルを繰り返してきました。
そして、2024年からは、米国株よりも米国以外の世界株が優位に立つサイクルになり、その牽引役は中国ではなくグローバル・サウスの国々になっていくのではないかという見方が強くなっていきます。
もちろん、グローバル・サウスの国々のGDPが伸びるからと言って、必ずしも株のリターンが高くなるとは限りませんし、グローバル・サウスの国々の人口が伸びることくらいは誰もが知っていることなので、こう言ったことは既に株価に織り込まれている可能性が高いです。
当然、グローバル・サウスは高いリターンが期待される分、リスクも高いわけですが、リスクを承知の上で、世界最後のフロンティアとも呼ばれるグローバル・サウスをポートフォリオの一部に組み込んでも良いのかもしれません。