9. 小説MCH - フレアと父「ヒーローの役割」(修正ver.3 2024/1/1)
「あ、でた!またいつものヤツだ」
フレアはその視線を父に戻すと、少し茶化し気味に反応した。
「おいおいフレア...。これは冗談で言ってるわけじゃあないんだぞ」
そんな息子に、父は少し苦笑いを浮かべながらそう返す。
「でもそうは言ったってさぁ、"ヴィランズ" は悪いことばっかりしているヤツらなんでしょ?村を襲ってきたり、みんなをケガさせたりしてさ。
そんなヤツらは、やっぱりみんなの敵で間違いないし、それをやっつけるのが "ヒーロー" の役割なんでしょ〜?
それに、村長さんもいつも言ってるよ。
"フレアくんのお父さんは、そのためにこの村で唯一選ばれたヒーローなんだよ〜"ってさ」
フレアは、村での自慢の父の話題を、目の前の本人を見上げながら、少し興奮気味にそう告げた。
実際に昔から、この世の中が "ヴィランズ" の脅威にさらされた時、それぞれの村から1人ずつ、その危機を救うべく選ばれる "ヒーロー" と呼ばれる特別な存在がいた。
そしてフレアの父は、この "炎の村" で、今の時代に唯一選ばれた "炎のヒーロー" だったというわけだ。
将来のヒーローを夢見るフレアが、そんな父に尊敬と憧れの念を強く抱いていたのは、当然だったと言えるだろう。
「たしかにそれも "ヒーロー" の大事な役割の一つなのは間違いないんだけどなぁ、フレア。
決してそれは "ヴィランズ" を倒すことばかりじゃないんだぞ」
父はあごヒゲをクルクルしながらも、真剣な表情で言葉を進めていく。
「この村では、どこでも見かける "炎" だが、これはここの住人だけの特別な "属性術" だってことは、お前も知っているだろう?」
「うん!知ってるよ!
ただ、ボクはまだうまく使えないんだけどね...」
今度はフレアが少し苦笑いをしながら、そう答えた。
「まぁ、幼な毛のチビ助が "属性術"を使いこなすには、まだちょっと早いかもしれねぇよなぁ」
父はニッコリ笑って冗談をまじえながらも、フレアをまっすぐ見つめて言葉を進める。
「だが、そんな "属性術" も、ヒーローにもなれば、とてつもなく大きな力になるものさ。
そんな超大な力は、自分のためや、ヴィランズに向けるばかりじゃなくて、少しでも周りに分け与えながら、みんなが安心して暮らせるように手助けしていくべきだ。
これも、その時代に選ばれた "ヒーロー" が果たすべき大切な使命の一つだろう。
実際に今回、水の村にあの姉妹を見に行ってきたのだって、元々はあそこに置いてある "炎の種火" の様子を確認するついでだったわけだしな」
フレアは真剣な面持ちで、じっと父の言葉に耳を傾けている。
「それになフレア。
そもそもヴィランズのことだって、もしも闘わないで済むとしたら、やっぱり俺はそれが一番いいと思うんだ」
古傷だらけの大きな手で、フレアの頭をポンっとなでながら話す父の言葉には、彼の実体験からの重厚感がたっぷりと刻み込まれている。
「もしかしたら、いつかお前も "炎のヒーロー" として、村を守る日が来るかもしれない。
その時には、きっとこのことを思い出してくれたらうれしいなぁ」
父はそこに、将来の我が子の成長した姿を思い浮かべつつ、今はまだ幼いフレアをじっと見つめながらそう言った。
憧れのヒーローである父の言葉を、真剣に聞いていたフレアの表情は、そんな父の期待を満面に受け止めて、少し照れくさくも、うれしい興奮を織り交ぜた、そんな笑顔を見せている。
「まぁ、チビ助のお前には、まだちょっと早いかもしれないけれどな。
実際にあの村長の "紙芝居" からだけじゃあ、わからないことも、まだまだあるっていうことさ」
真剣な想いとは裏はらに、少し照れくさくなったらしい父は、いつものように人差し指であごヒゲをくるくるやりながら、最後はにやりと笑って、冗談まじりにこう付け加えた。どうやらこれはこの父の性格からくるものらしい。
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※この小説My Cool HEROESは、ジェネラティブNFTコレクション「My Cool HEROES」の背景に流れるストーリーをまとめた中編小説です。
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