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アート界への金銭的支援、日本もちゃんとやるべき

新型コロナウィルスの件で、芸術文化界が、かなり大変なことになっていると思います。公演中止、劇場封鎖、払い戻しの要求…

そんなアーティストを支援する(民間の)サービスの話を以前も書いたのですが、今日は特に政府からの金銭的支援について、考えてみたいと思います。

結論から言うと、日本もアート界への具体的かつ迅速な金銭的支援を、すべき。何より、してほしいです。

今日、文化庁長官から『文化芸術に関わる全ての皆様へ』というメッセージが出されました。

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「日本の文化芸術の灯を消してはなりません。(中略)文化庁長官として、私が先頭に立って、これまで以上に文化芸術への支援を行っていきたいと考えています。」

だから、文化庁も、きっと長官を筆頭に、金銭的な支援を考えてくれるはず、です。まだ、具体的には何も、出ていないのですが。

ドイツの取り組み

海外で、すぐさまアート界への支援を表明したのは、ドイツ。3月11日には出ていたようです。

コロナウィルス ー ドイツ文化大臣、文化施設と芸術家に支援を約束
「自己責任のない困窮や困難に対応する」(グリュッタース文化相)

ドイツのモニカ・グリュッタース文化大臣は、2020年3月11日、上記のプレスリリースを通じて、「コロナウィルスの蔓延によって打撃を受けている文化事業者への大規模支援」を発表した。3月20日にもベルリンでドイツ通信社(DPA)の記者との会見を行った同文化相は「芸術・文化・メディア産業におけるフリーランスおよび中小の事業者に対する無制限の支援」を約束。(中略)ドイツ連邦政府の試算では、今年3月から5月にかけて約8万件の文化イベントが中止になり、文化産業界全体の損失は125億ユーロ(約1兆5000億円)と見込まれており、その影響はさらに続くと考えられている。グリュッタース文化相は、これに対応するために「速やかな、官僚的ではない救済策をとる」と明言した。「政府は、いかなるコストを払っても、芸術家を救済する。まずは数十億ユーロの救済プログラムが芸術・文化・メディアのフリーランス事業者のために立てられる。当面投入される具体的な金額は、今月中には発表する予定だ。

ということで、金額が詳細になる前に、先んじて無制限の支援をすることを発表しています。安心感と、アート界の尊重、その覚悟が本当に素晴らしいなと思います。

イギリスの取り組み

そして、イギリスも。3月24日に発表しています。

イングランド芸術評議会、アーティスト支援に1.6億ポンド 新型ウイルス対策

イギリスのイングランド芸術評議会(ACE)は24日、イングランドのアーティストや劇場、ギャラリー、美術館などに合わせて1億6000万ポンド(約210億円)を注入すると発表した。新型コロナウイルスの流行により、文化セクターが打撃を受けているため。また、ストリーミング配信ネットフリックスは、イギリスの映画・テレビ業界の緊急支援基金に100万ポンドを寄付することを明らかにした。(中略)ACEの支援プログラムの内訳は、個人向けが2000万ポンド(1人当たり最大2500ポンド)、ACEの助成スキームに所属する団体向けに9000万ポンド、このスキームに所属していない団体に5000万ポンド。資金は宝くじ基金や開発基金からの助成金を流用するほか、緊急時の準備金でまかなうという。最初の支払いは6週間以内に行われる見通しだ。(中略)ACEの会長を務めるサー・ニコラス・セロタは、「COVID-19(新型ウイルスによる感染症)は文化セクターを越え、世界中に影響を与えている。しかし我々には、アーティストや芸術団体が、この危機の最中や回復の時に、イギリス中の人々の想像力を育み続けられるよう、このセクターを可能な限り持続させる責任がある」と述べた。

一人当たりの金額も明確に示され、最初の支払いも6週間と期間が明示されています。また、やはりなぜアートや芸術が必要なのか、ということについてもきちんと表明されているのが良いと思います。

オーストラリアの取り組み

オーストラリアも、芸術文化の資金配分等を担うAustralia Council for the Arts から、下記の表明が出ています。

(Covid-19への)対応パッケージには以下が含まれます。
ー報告および助成金の条件緩和 
ー2021年~2024年の4年間の資金調達の調整
ー現行の投資プログラムを停止し、即時の救済に焦点を当てた新たな投資プログラムの導入
ー危機支援のためのオンライン学習シリーズ
ー先住民のサポート
ー座談会(ラウンドテーブル)
ーデジタル対応
ーセクター開発の取り組み
ーCOVID-19がオーストラリアの文化セクターと一般市民に及ぼす直接的・長期的な影響を明らかにするための調査・分析。

報告および助成金の条件緩和について。現在、オーストラリア・カウンシルの助成等を受ける組織や個人に対しては、下記のとおり柔軟なアプローチを採用しています。
ー観客のKPIの要件削除
支払いの前倒し
ー報告の延期または簡素化
ー資金調達の目的と成果の多様化
ープロジェクトタイムラインの延長
賃金、家賃、光熱費などの必要経費の支払に、提供された資金を組織が使用できるようにすること
(著者訳)

助成金条件の緩和というのは助成を受ける芸術文化団体にとってかなりありがたいことだと思います。特に前払い、必要経費に支払えるようにするなど、通常ではできないことをできるようにする、ということに大きな意味があると考えます。

フィンランドの取り組み

さらに、フィンランド

フィンランドの多くの大手財団、教育文化省、フィンランド芸術振興センター(Taike)は協力し、コロナウイルスの流行で大きな打撃を受けた芸術文化関係者に迅速な支援を提供します。4月中に総額約150万ユーロの資金が、芸術振興センター(Taike)を通じて配分される予定です。また、財団も独自のルートで多額の支援を行います。(中略)まずはコロナウイルスの流行により仕事に大きな支障をきたしているフリーランスのアーティストを対象に、短期的な助成金を提供することを目的とします。詳細な申請基準は後日発表される予定です。今回の助成金で、少なくとも500件の助成金を予定しています。(著者訳)

フィンランドの特徴は、教育文化省と、いわゆるアーツカウンシル的な役割を担うTaikeと、各民間の大手財団が複数(4財団)が協力して迅速に資金を拠出したことです。官民連携がうまくいっている素晴らしい事例だと言えます。新型コロナウィルスから直接的に被害を受けたアーティストにまず支援をしていくというところ、他の部分についても戦略性があり、よく考えられていると思います。

日本、文化庁へのお願い

日本は中小企業支援への無利子・無担保融資の支援、個人への小口貸付等がありますが、芸術文化界への支援という形では、まだ出ていません。

文化庁長官の言葉にもあったとおり、日本の文化芸術の灯を消してはなりません。行政による新しい資金の拠出は時間がかかり、難しいのかもしれません。でも、海外の事例に学ぶように、今の資金を柔軟に使えるようにする、民間の財団と協力をするなど、やり方は多様に考えられます。文化庁、その他芸術文化関連の財団、民間の財団等が連携し、単なる意見表明だけではなく、具体的な金銭的支援が行われることを、願っています。

(追記:その他、海外事例等ご存知の方がいらっしゃったら、ぜひ、コメントにて教えて頂けるとありがたいです。よろしくお願いいたします。)






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Chika Kochi Ochiai
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