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義母のケース7 コロナ禍での看取り

 役所に葬祭費を申請するついでに、同じ建物の中に入っている郵○局に行きました。もう伏せ字意味なし。

 朝早いおかげか客はおらず、保険の窓口で、「義母の口座からか○ぽらしい引き落としがある」と相談したところ、通帳を拝見してもいいですかとのこと。

「これは、違うようですよ。か○ぽは『か○ぽ』と表示があるので」

 念のために、再度義母の関わる契約がないか調べてくれましたが、やはり契約者にも被保険者にもヒットせず。

 一体この引き落としはなに……

葬祭費は意外と楽

 義兄の時は会社の組合健康保険だったので、申請する用紙を書くところから難儀したものでした。

 書類上に矛盾を出さないために、葬儀代(火葬だけだけど)は喪主の夫のクレジットカードで精算。念のために取得した夫の戸籍謄本も持って、いざ役所の受付へ。

 こちらは、義母の生年月日と死亡日の申告、そして葬儀の領収書だけであっさりOK。そもそも葬祭費は親族が払うとは限らないものなので、領収書と明細さえあれば大丈夫のよう。これは、夫の口座に振り込むよう手配。

 わりと楽だなーと思ってたら、

「すみません、一件お話がありますので、担当が変わりますね」

 と、なぜか窓口の人がチェンジ。なんだろうと思ってたら、

高額介護合算療養費のご申請のことなんですが……」

 そうそれ! 聞きたかったの!

 実は、火葬の前日の忙しい最中、義父が、「これお金がもらえるから出してきて」としきりに催促してきたものがありました。それが、高額介護合算療養費の支給申請用紙。

 どういう仕組みかは未だに定かではないのですが、介護費の自己負担分が一定額を超えると、市だか国だかが支援してくれる精度があるそうで。その申請をしてください、という用紙が来ていたのです。前年度分なので、これは支給されて然るべきものです。

 でも、義母はもう亡くなってるのに、書類を送っちゃっていいのかなと思いつつも、まだ申請に必要な保険証などが手元にあるため、コピーをとって郵送したのです。

 もちろん私たちが行った3/30時点では届いていないか、まだ手続きには入っていないようで、未申請状態のまま。それを、窓口の方が気づいて、担当者を呼びに行ってくれたのです。

「もうお亡くなりになってますし、今後口座が凍結される可能性もございますよね? 相続人様の口座に変更するように手続きをとれますが、義父様で大丈夫ですか?」

 もちろん、

 ここで早速、持ってきた夫の戸籍が活躍です。夫と義父は割合が対等な相続人。代表者ということで、夫の口座に変更手続き完了。

 ただ、四月中の変更は間に合わないかも知れない、万一義母の口座が凍結されていた場合、再度夫の口座に振り込むのには時間がかかるかも知れません、とのこと。OK、OK。

 二月三月分の年金が(これは生存中なので権利がある)四月に振り込まれるため、義母の口座はしばらく凍結しないことにしています。常にからっぽにして、引き落としできなかった相手から督促状を出させる作戦です。

 持っててよかった戸籍謄本。ここではもうすることがない、とのことで、次は介護保険課に移動。

 持っている介護保険証の返還ですが、実は今の窓口で、手元にあるのが前年度分なのが発覚。そういや最新版は介護施設だ……

 しかし問題は無いとのことで、手元にあるものをお渡しして終了。最後にするのは年金の手続きですが、これは庁舎に窓口がないため、他県在住であれば書類を郵送して貰った方がいいでしょうとのことで、連絡先をいただきました。

 返還に付随して何か書類を書いたのですが、なんのためのものかは実は記憶が無い。戸籍を使った気はするけど……疲れてるのだろうか……

朝はガスト、昼はサイゼが最強(個人の意見です)

 おかげさまで、11時にかかった頃合いに、役所で今できる申請は終わりました。しかし、今義実家に行くと、お昼のヘルパーさんがいるので、書類の没収とかがやりづらい。

 先にお昼にしようと、近くのショッピングモールにあるガストに行きました。

 ガストには、作業の席代と思って、モーニングの時間帯にお世話になってます。逆に、サイゼは夜に行くことが多かったので、ランチは新鮮。

 サイゼのランチって、プラス100円でドリンクバーがつくのですね。100円ならコーヒー代と思えば安い。ガストでは逆に、ランチの時間はドリンクバーは使わないのですが、サイゼなら抵抗なくて済みますね。

 食後にコーヒーを飲みながら、義母の介護施設の請求内訳や、介護計画を読み返してました。どこで何が必要になるかわからないので、義実家に行くときは義母関係の書類はなるべく持ち歩くようにしています。

 いわゆる特養ではないのですが、手頃なお値段で手厚く面倒を見てくださったいい施設でした。

 義父も早めにここに入ってくんねーかな、と、身も蓋もないことを考えていたら、なんだか混み始めてきました。ヘルパーさんもお帰りであろう時刻なので、では、いざ戦場へ。

義父、抵抗

 義父の部屋には、先日まで二つの箪笥がありました。一つは、ベッドの足元で、謎の段ボールに塞がれて、既に二年以上の開かずの箪笥になっていたもの。こちらは先日中身を一斉処分し、箪笥自体を部屋から運び出しました。

 もうひとつは、ベッドに腰掛けると正面に来る位置にある、衣装ダンス。

 ちょっと変わった作りで、一番下が大きな引き出し、その上の左側に更に小さな引き出しが二段ついています。L字型に引き出しがあるのだと思ってくれれば当たりです。

 私は、当然、その計三段の引き出しを、書類入れとして使っているのだと思ってました。だって、小さな引き出し、つねにパンパンだったので。

 きっと捨てられない過去の郵便物が、仕分けもされずにそこに入っているのだろう。古くても、請求書や引き落とし明細があれば、それが手がかりになります。

 で、「義父さん、書類見るから全部寄越してね~」と有無を言わせず引き出しを開けたら、

 開けてびっくり、一番下は乱雑に突っ込まれた義兄の服でした。

 新しくどこかを開ける度に義兄の服が出る。なんかの呪いなのかこの家。捨てる判断が出来ないにもほどがあるだろう。

 速攻でゴミ袋にインです。消え去れ義兄。

 そして、下から二段目。

「そこにはなにもないよ」と抵抗する素振りの義父を制し、ざっくりと引っこ抜く。

 パンパンに詰まっていたように見えていた引き出しには、下半分、使っていないフェイスタオルが乱雑に詰まってました。

 バカなのか。もう歯に衣どころじゃない。

 とりあえず、たおるごと引っ張り出して、画像をとって別室に移動。あまりにも配置を換えると、あとで義父が混乱するだろうと思って、不要品を抜くのは最大限に留めるつもりでの作業です。

 同じように三段目を引っこ抜き、あとは、衣装ダンスの扉の内側に入っている、大小のバッグやポーチも押収。

 ここには貴重品、現金があるらしく、さっきよりも抵抗が激しい。別にお前の金が欲しいわけじゃねぇよ。

「これにはないから」

「いいから全部出しなさい!」

 抱え込もうとするポーチも全部奪い取り(ちゃんと事前に配置確認用の画像は撮った)、隣の居間で仕分け作業。先に全部押収したのは、別の所をチェックしている間に、義父が隠蔽を図らないようにする予防線です。

 ほぼ歩けない義父は、別室には出てきません。視線は感じますが。

「なんだこれ、平成のがあるよ」とわざと大声で言いながら、下から二番目だった引き出しをまずチェック。

 ここは「なにもないよの」言葉通り、明細などは出てきませんでしたが、義母が生前、ふたりで書いた「葬式はしないで下さい、焼いてお墓に入れて下さい」の署名つきのメモが出てきたので、押収しました。義父、お前も望み通り直葬だ!(鬼か)

 謎に底上げしていたタオルを、空っぽの一番下の引き出しに放り込んだら、かさも半分になりました。

見知らぬ、明細

 一番上の引き出しは、小分けにして支払ったあとと思われる、小銭入りの封筒がたくさん出てきました。今は買っていないようですが、前に、近所の酒屋に届け物をして貰っていた分の、支払いのお釣りのようです。

 それとは別に、大量に一円玉、五円玉が詰まった封筒が出てきたので、趣味で集めているのかと聞いたら、「集まっちゃうんだよ」と。

 今はねぇ……大量の小銭を銀行に持ち込むと手数料とられるのだよ、義父。害はないので、死ぬまで引き出しに収めて貰うことにして、これも戻す。

 しかし、本当にないな、役所以外の支払い明細。これは逆に、意図的に処分してるんじゃないか?

 そして、扉の中に入っているバック類をチェックし始めたあたりから、義父が目に見えてそわそわしだす。しかし居間まで来られない。構わずあけて中身チェック。

 ……義兄の時に終わってるはずの生命保険関連の郵送物が出てきた……

 速攻で捨てようかと思ったら、よく見ると宛先が義母。そういえば、義兄関連の保険は、義母が支払ってたはず。50過ぎてどうしようもねぇな義兄。

 念のために、掲載されているフリーダイヤルで、別の契約が残っていないかを夫に確認させる。話し下手で、オロオロしながらも、なんとかA○○○C
には義母の関係するものはないのを確認。

 その間に、これも終わっているはずの三○○友が出てきたので、夫に電話させる。これもシロ。

 じゃあ、残る二件の、正体不明の引き落としは一体何なのか……

 結局ここまで捜索し、出てきたお知らせっぽいものは、NHKのと、三○○○銀行の移転のお知らせはがき。これはこのあと、義父が三○○友にも口座を持っているのが判ったため落着。NHKはちゃんと引き落とし明細に記載されるので、これもシロ。

 やはり、義母の口座を可能な限り空にして、督促状を出させる方向で行くか……。と、やれることはやった気分でいた所に、

 ふと、か○ぽからの「保険料払い込み明細書」が目につきました。

静止した空気の中で 

 ほら、年末調整の時に使う、切れ込みが入った明細です。それが、過去三年分。年末調整なんかしない義父は、封筒に入れたまま保管しておいたのですね。

 三年前、義兄がまだ生きていた頃の明細には、契約者義母のが一件と、義父のが二件。

 それが、二年前のには、義父名義の二件だけになっています。そういえば、義兄の借金(リボの残金)を支払うために、保険を一つ解約したような話を叔母がしていたので、それかなと。

 で、残りの義父名義の二件。義兄が生きていた頃は、当然、受取人も指定代理人も義兄名になっていました。

 そういえば、義兄名義(被保険者)のも義母が支払っていました。それの受取人が私の息子であるT某になっていたことが発端で、私にシメられたわけです。

 そのあと、か○ぽの営業の人が、義兄が受取人になっているから生きている人に変更を、とやってきたのですが。

 孫に「金もってこい」と怒鳴るような人に、保険金の受取人にするから面倒見ろとか言われるのも正直腹立つし、こいつらの払う金を誰が受け取ろうがどうでもよくなってて、

「(夫婦で)お互いにしておけばいいからね、私たちのことはいいからね」と優しく放り投げたので、その後のことは知りませんでした。

 で、変更後の受取人。

 二件とも叔母。指定代理人は死んだ義兄のまま。

 どこからどう突っ込めばいいのか。

 これが、ひとつが義母名義で、その受取人が叔母だったというなら、まだ判る。

 叔母を頼るだけ頼って、別の親戚が来たらないがしろ、ありがとうもいわない義母。折角家の手伝いに来てくれる叔母に文句ばっかり言ってたけれど、それなりに人の心はあったんだなぁ。で、話は終わってたと思います。夫も納得したと思う。叔母の抗がん剤投与も始まるし、安心してすごせるだろう。義母、最後の最後にやったね、と。

 だって、叔母は長年、頭のおk……害悪……いやどうにも取り繕いようがないけど、なんにしろ、どうしようもなかった義実家の三人を、根気よく面倒見てお付き合いしてきた人なのです。叔母がいなければ(そして義兄が先に死ななければ)、義父母のご近所付き合いは壊滅していたはずです。

 義父は、叔母の義母への愛情の、恩恵を受けていただけに過ぎない人です。その叔母の大事な姉である義母を、家から追い払ったのは義父なのです。それでも、義母の夫だからと、時折気にかけて様子を見に来てくれていた人なのです。

 けして、義父、お前の家政婦をしに来てたんじゃない。そもそもお前、世話されるのが当然と思って、なんの感謝もしてなかったろ。

 その義父が、二件の自分名義の生命保険の受け取り先を、義母でも息子でもなく、叔母にしていた。

 気持ち悪い。

 ひたっすら、気持ち悪い。

 その年で再婚でもする気なのか。施設に入れた義母の代わりに、死ぬまで面倒でも見てもらう気だったのか。抗がん剤も始まる高齢の叔母に、まだ何かを課す気なのか。

 それに、自分が死ぬ前に叔母が亡くなったりしても、あんた受取人が叔母なのを忘れてるそのままにしてるんじゃないのか。そのあとどうすんだ。叔母に変わって受け取る誰かに葬式あげて貰うのか。

 ていうか、か○ぽの人さ。義兄が死んだから受取人を変えろって言いに来ておいて、なんで指定代理人が義兄のままなのか。これ、疾病や傷害も入ってるから、生きた人間が指定代理人じゃないとだめだろ。

 で、義父に聞いたわけです。

「これ、受取人が叔母さんになってるけど、叔母さんに葬式でも出して貰うつもりなの?」

「俺知らねぇよ、L子(叔母)に聞けよ」

 即答。

 知らねぇわけがあるか、自分しか変更できないんだよ!

 ていうか、叔母がそんなことを了承するわけがない。常に控えめで、義兄が死んでから付き合いの深くなった私たちに、「本物のお母さんがあれだから、せめて私が母親らしくしなくちゃね」と言ってくれた人です。

 とにかく、受取人は誰にしろ、指定代理人は変更は必要です。書かれている問い合わせ先に電話して、「前の担当の人が死んだ人の名前をそのままにしてる」と報告。

 義父だけでは手続きは難しいので、私たちが都合のいいときに日にちを合わせてくれるとのこと。その最後に、

「証券、なければ再発行しますけど、できれば探しておいて下さい」

 と念を押されました。

 そういえば、さっきさらったバッグの中に、か○ぽの証券はなかったな。見つけたのは「払込証明書」だけです。

 どうせ義父のことだから、どこにやったかも忘れてるのだろう。再発行でいいや。

 ていうか、疲れた。

 義兄の時の保険金受けとり人はT某、義母のは解約、義父の二件の受取人は叔母。

 義兄の葬式の時は、家から出ない義父の代わりに喪主の代理として立ち、義母のなくなった日からもそれなりに動いて、喪主まで(名前だけ)勤めたのは夫です。

 今回のことで、改めて義実家から存在が無視された形になって、さすがに夫もがっかりしているようでした。

(このあと、「じゃらんのポイントが切れるから今月中にどっか予約しないと」とスマホをいじり始めたので、もう忘れていると思いますが)

 私もさすがに、少し進める気でいた押し入れの整理もやる気になりません。義父をシメるどころか、呆れて喋りたくもない。

 もう不要のはずの、義母関係の通知をまとめて、ゴミ袋に突っ込んだ義兄じゃないゴミを持って帰りました。義兄が死んだときもこうやって、ゴミ屋敷状態の義兄の部屋を片付け、地元の指定ゴミ袋に入れて、持ち帰って捨てたのです。何度も、何度も。

 こういう私たちの苦労も、部屋で引きこもっている義父には見えないのだろうな。

初七日にして、おしまい

 にするつもりでいたのです。このお話。

 謎の支払先は、義母の通帳を空にして、引き落としを妨害し、督促状を待って洗い出す。

 保険の受取人の変更はどうなるか知らないけど、叔母が元気だった二年前とは状況が違うのだから、相談はすることになるでしょう。でもそれも、こちらの都合で、二週間は先になりそうだし。

 なんで義父より先に義母が死んだのか、と思ってたくらいですが、こうなってくると、義母が先になくなったのは意味のあることだったのだなぁ。と、帰りの車の中で夫と話してました。今はとりあえず、今月中は生かしておいてもいい気分です(上から目線)。

 気分的にも、作業的にも、これでなんとなく一区切りかな。

 と思っていたのですが。

 帰りついて、車を駐車場に入れようとしていたところに、ラインの通知音が鳴りました。

 叔母でした。

『簡易保険のことで話し合いたいです。都合のいいとき電話下さい』

 ははぁ。

 私に、「叔母さんに葬式あげて貰うの?」なんて言われて、義父が焦って電話したんだろうなぁ。「知らない」って言った手間、叔母一人を悪者にしようとしたのは既に見え見えです。私が怒って、もう面倒見に来なくなるかも知れないとか、最悪、「自分たちを名義人にしろとかいっている」とか脚色して、いかにも自分が、状況判断が出来ない非力な老人のように訴えたんだろうな。叔母さんもいい迷惑だろうなぁ。

 でも、今は、おなかもすいてるし、疲れちゃったし。

 こういうときはご飯食べて一晩寝た方が、頭の回転もよくなって今後のことも考えやすいもの。

「たぶん義父が、私が怒ってるとか脚色して伝えてるんですよね? (叔母さんに対して)気分を悪くしてるとかはないのですが、さすがに朝から出かけて疲れちゃいました。おなかもすいてるし、詳しくは明日でいいですか」

 と返信したら。

「私は義兄(義父)に相談して、受取人をH(夫)に変えて貰おうと思ってたの。証書を渡すので、都合のいいときに取りに来て下さい……」

 つまり。

 義父が紛失したと思っていた保険証券は叔母が持っていて、しかも、自分が受け取り人になることを承知していた……?!

 To be continued……

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