見出し画像

傭兵さんと神官くん<2>

2014/06/20

あの方が言うに、『職業恋愛喜劇』を主題にした物語があるそうですよ」
「主題って、その言葉だけで既に三つ単語が入ってるぞ? なにが『主』なんだ?」
「あちらの世界では、『おしごとらぶこめ』と呼ばれるんだそうです。要は、職場を舞台にした恋愛を喜劇的に描いた物語ということではないかと」
「ふうん……」
「露骨にどうでも良さそうな顔をしましたね」

「ものすごくどうでもいい」
「どうでもいいのは判ってますから、どうしてそんな言葉が今出てきたかくらい聞いてあげましょうよ」
「知り合いがその主題の創作競技会に参加してるとかじゃねぇの?」
「……よく判りましたね」
「で、それと俺たちが呼ばれたのとどう関係あるんだ?」
「僕らに、なにか話のネタを提供しろとことではないかと……」
「俺たちに?」
「はぁ」
「俺が仕事場で恋愛とか喜劇とか無理だろ」
「まぁそういわずになにか」
「だって俺、傭兵だぞ? 仕事場は戦場で、仕事は××を××して××××とか、×××の××××を××した××の××が×××で」
「全部伏せ字になってますよ」
「その辺は想像力で埋めろ」
「想像したくないですよ……。まぁ恋愛は無理でも、喜劇的なことはたまにはあるんじゃないですか?」
「うーん……」
「またなにか引き出し探ってますね……」
「そういや、こないだこの辺りにこういう走り書きが」


<攻城戦シーン
敵砦から投擲された生首を、近くにあった杭でとっさにグランが打ち返す。生首は砦壁の上の衛兵にあたって衛兵ごと中に落ちていく。悲鳴が上がって騒ぎになっている。

「まったく、死者をなんだと思ってるんだ」
「打ち返しておいてなに言ってるんですか!」
「いいんじゃね? もう死んでるし」
「死して敵に一矢報いたと思えば、故人も本望かも知れぬ」
「エスツファさんもまじめな顔してなんてこと言うんです!」


「……僕も参加してないです?」
「なんかの本読んでたら空から降って来たらしいぞ。『ちゅうせい』って時代じゃ、攻城戦で、見せしめに殺した捕虜の首を相手方に放り込むとか、割とあったらしいな」
「どこで使うんですかこんなネタ……」
「こういう笑いなら割とある気がするが」
「笑えないですって!」
「じゃあお前はどうなんだよ?」
「僕ですか?」
「神官って、男だけじゃないんだろ? 教会は町の中に立ってるんだし、住人が通ってきたりすれば出会いもあるんじゃねぇ?」
「自慢じゃないですけど、僕、神官学校では優等生だったんですよ」
「ほう?」
「レマイナ教会っていうのは、神官にも医学の知識が求められるんです。治療術もそうだし、薬草の知識も必要になりますし、それに絡んだ言語も学ばなきゃいけないし」
「……勉強に必死で、出会いもなにも縁がなかったとか言いたいのか?」
「そ、そうは言わないですけど」
「まぁ、よく考えなくても、俺たちに『おしごとらぶこめ』は無理だろ」
「そうですよね。僕らにこだわらず、別の方を呼び出して考えればいいと思うんですが」
「そういえば、職場ネタ看板に背負ってる主人公で『でんししょせき』とか出してるんじゃなかったのか」
「あ……」
「……今『すっかり忘れてた』って声が聞こえてきたな」
「『職場』と『喜劇』はあったけど、『恋愛』が欠落してるお話みたいですよね」
「もともとそういう感性が備わってないんだな、あきらめろ」
「ぜひ磨いてくれないと、僕らも困りますけどねぇ……」

※ この頃はネタに詰まるとよく、この二人を呼び出して会話させたのを文章に起こしながらネタを作ってました。そういや最近やらなくなったな。

※ 宣伝で申し訳ありませんがこの二人が活躍する 「ラグランジュ ~漆黒の傭兵と古代の太陽」は小説家になろうで絶賛連載中です。一章プラス番外だけならカクヨムでも読めます。応援よろしく!

 

電子書籍の製作作業がんばります。応援よろしくお願いします。