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義母のケース9 コロナ禍での看取り

 だんだんコロナ関係なくなってる的な。

「あなたたちに任せます」

 今日は叔母の顔を見にいってきました。

 三度結婚し、三度離婚した叔母は、今は娘さん夫婦の家に同居しています。私の家から、車で30分ほどの場所です。

 叔母は玄関から真反対の南向きの部屋。最近は、家の脇を通って直接部屋の窓を叩くようになりました。

 天気も良く、裏にまわったら、叔母は庭先で洗濯物を干していました。大腸ガンの切開手術のあとは動くのも大変そうだったのに、だいぶ回復している様子。

 すぐ終わるから上がって、といわれ、部屋にお邪魔すると、娘さんのEさんが顔を出しました。

 Eさんも今、先日なくなったご主人のお母さん、つまり義母さんの残した不動産やらと格闘中。奇しくも、Eさんも次男の嫁。ただし、長男は存命中なので苦労もひとしお。

 同じ境遇同士でしばらく盛り上がる。ほんと、どこも男はなんもしないのね(個人の意見です)。

 洗濯物を終えてさっぱりした顔で入ってきた叔母と、少しの間いつものように茶飲み話をしていました。

 義母の施設から請求書と一緒に送られてきた居室担当者のお手紙を渡し、先日の義実家訪問で再び見つけた義兄の服などを報告し、義兄が存命中の片付けの苦労話などでこれも盛り上がる。いかに義実家一家が常軌を逸した家庭(構成するのは50超えの長男と80越えの両親だけどさ)だったかを再認識したあと、

 叔母が、義父の生命保険の受取人になったいきさつを聞きました。

 まぁ、予想していたとおり、発端は、義兄名義の生命保険が全部私の長男、T某に渡ったことから始まります。

 いろいろ言われた気がしますが、要約すると、「自分たちが掛け金をはらったのだから、死亡保険金も自分たちのものなのに、あの嫁のせいで”金がもらえなかった”。次もこんな目にあうのはいやだから、L子(叔母)が受取人になってくれ」

 と、義父に、泣いて頼まれた、というのです。

 単純に金が欲しいならお互いに受取人にすればいいのに(実際、私はそうお薦めして放り投げた)、なぜ叔母を巻きこむのかがまず判らない。いや、頭のおk……あの義父母の考えることなんか、理解できなくて当然なんだけど。

 そんなことに巻きこまれるのはいやだ、と、最初は保険の解約も視野に入れていたらしく、委任状を書かせて叔母は二度ほど窓口に行ったそうなのですが、

「とても利率のいい保険なので、お金に困っているのでもなければ、そのままのほうがいい」と止められたとこと。

「もし本当に時分が死んだら、保険金の半分はH(私の夫)に渡してくれればいい。もう半分は、今まで世話になったしもらってくれ」

『世話になったと思うなら、今義父の通帳から払ってくれ』とも言ったそうなのですが、

 私が義父をシメた経緯も、きちんと聞いていなかった叔母は、結局承諾したとのこと。

「俺知らないよ」と即答しておいて、このオチか義父。

(そういえば、T某に「金もってこい」と怒鳴って私にシメられた時も、真っ先に出てきたのは「俺そんなこと言ってない」だったっけ)

 ていうか、今こうして文章に起こしてても、つっこみどころしかない。

 半分夫に渡してもいいなら、契約はふたくちあるんだから、それぞれ受取人を別にすればいいだけの話なんだけど。私が絡むと金をせびりにくくなるから、叔母だけに渡そうとでも思ったのか。

 私には理解できない、こすい打算があったのだろうなぁ。

 一通り終わって、私も簡単に、当時のことを説明。

「義兄が死んだあと、T某は顔を出す度に、金の話しかされずに困惑していた。色々気にかけて助ける気でいたのに、『貰った金全部もってこい』と怒鳴られ、さすがにおかしいと思って私に話した」

 と経緯を説明すると、やはりその流れは聞いていなかった、とのことで。

「それに、あなたがか○ぽの人に電話したとき、私(叔母)のことを『もう長くない』から名義をかえてくれって言ってた、って言うのよ」

 あー、報告時にはそう変換されるのか。

 かえなければいけないのは、まず死人の名前になってる指定代理人なんだけど。ここが死人だと、義父が入院したときとか保険の申請の判断をするひとがいないんだけど。

 確かに、受取人の叔母についても「ガン治療を受けるので、今後どういうことになる判らない」とは言ったし、義父に対しても、「叔母さんの葬式出して貰うつもりなの、叔母さんガン治療始めるから、もう頼れないんだよ」とは言ったけど。

(指定代理人に関しては、当時の営業の人にはなにも言われなかったらしい。もう別営業所に異動したらしいけど、大丈夫なのかあの営業さん)

 義兄が死んだときもそうだけど、自分はなにもしないで人任せの癖に、自分に都合良く話を改変するのは上手なんだよな。ストレス溜まらなそうだな義父。長生きするだろうな。

 叔母は、話の最後に、

「やはり、今後を考えて受取人はH(夫)がいいと思う」

「結局、(義父の頼みを聞いて受取人になって)いやな思いしかなかった」

「それに、自分が受取人のまま、万一(叔母が)先に死んでも、娘は受け取らないから、お金はあなたたちのものだった」

と言う一方で、

「でも、今まであの夫婦に対して、それなりのお金は使ってきたし、自分がやりたくてやったことではあったけど、嫌な思いも苦労もしてきた。(死亡保険金の)半分を自分に渡すというのは確かに口約束だけど、そういう約束が姉(義母)と義兄(義父)からあったことも忘れないで欲しい。あとはあなたたちの判断に任せます」

 と、義父の保険証券を私に渡してくれました。

「私に、義兄(義父)の葬式は出せないしね」と。

 正直、証券がなければ紛失扱いで再発行だし、仮に証券だけ叔母が持っていても効力はないのでしょうが。これは、区切りとして大事なことでしょう。

 つーか、こうなってくると、あの害悪義父が叔母より長生きしそうな予感しかしないので、あれが死ぬのを待ってても叔母にお金は入らないだろうと思う。

 それなら、今回の件が一区切りした時に、微々たる額でも義母のお金が残るなら、そこからお礼を先に叔母に渡した方が良さそうです。

 ただ、「受取人が叔母になっていた」ことは、T某には話さないでくれ、とは念を押しておきました。

 この義母の死をきっかけに、ずっと疎遠だったT某と義父が、顔を合わせる機会が増えてるのに、やっぱり未だにあの「義兄の保険金もってこい」事件が尾を引いてるとはとても言えないし、

 逆に、叔母が義父義母を献身的に世話して、自分たちとも親しくしてきたのは、「保険金がもらえるからだった」なんて思って欲しくもない。

 お金が解決するならそれはそれでいいことも世の中にはあるのだけど、叔母は義実家関係でやっと現れた「まともな親戚」なので、できれば余計な先入観のない今のまま、いいお付き合いをさせていただきたいものです。

法定相続人でもないのに

 帰り際になって、挨拶に顔を出した叔母の娘さんを、「そちらもまだ大変でしょう」とねぎらったら、スイッチが入ってしまったらしく、今あちらが処理中の「(故)義母所有不動産」のことで詳しい話が聞けました。

 あちらはあちらで、権利ばかり主張する義兄相手に、気の弱い夫の前に立って戦っているらしい。別になにも要らないけれど、逆に将来的に負債を背負わされないために対処するのが大変らしく、「弁護士」「公正証書」とかいう話も出てきました。

「田舎の葬式も大変だけど、田舎の不動産処理も大変だなぁ」と同情を深めてしまった。「なんの権利もないけど動かなくてはいけない」人たちに、社会はもうちょっと、なんらかの形で報いて欲しい。

 あ、叔母から貰ったタケノコの煮物美味しかった。なんだかんだで、こういうのを持たせてくれるのだよなぁ。

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