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ゆきちか日々の書簡 01 * チルテレ
コンポーザー二人の毎日のやり取りを切り取ったもの。きほん何気ない話です。今回はわたなべさんがはまってるチルテレと、音楽構造の話。
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わたなべゆきこ
作曲家、ケルン在住、四歳児の母。カイロの音楽祭に行ってきました。
森下周子
作曲家、ベルリン在住、博士号やっと取りました。
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わたなべ:最近お笑いのゆりやんにはまってる、そしてチルテレ!
森下:チルテレってなあに?
わたなべ:友近とゆりやん [レトリバー] が喋ってるだけの5分だけトーク番組。
森下:あー友近とのやつか、youtubeの [*厳密にはBS日テレの番組の追っかけ配信]。
わたなべ:話がどんどん飛んでいって回収しない感じが好きなの。わたしが作る音楽の構成と似てて。今はまってる。おばちゃんのくっちゃべりって、凄い話題飛んでいっても女性だと内容追えるじゃない?
森下:んーゆきこちゃん(の音楽)はなかでもその傾向強いと思うけどねー。
わたなべ:面白いのよ~。同じ動画ずっと見て笑ってる。この女子中学生のノリ最高!って私の思考回路そこで止まってるかな(笑)もうね、すごいテーマ飛んじゃってて、もはや当初の意味成してないけど、寧ろ飛んでることも楽しい、みたいな!
森下:ふふ。
わたなべ:そういえば私、作曲で構成を諦めてから凄い楽になったんだよね。構成諦めてっていうか、非難覚悟で言わせてもらえば、男性思考的なロジックを諦めてから。
森下:わたし逆だわ。構成の単純化が身についてから一気に楽になった。いまさーチルテレ朝ドラの回見てるよ!砂時計からロシアは遠いっていうところに...うーむ。
わたなべ:もう感動すら覚えるんだよチルテレ!自然なんだけど、言葉は選んでるんだよ、二人とも。ゆりやんが急に別の話題投入するじゃない、でも友近が繊細にそこに乗っかって、しかもそこから発展していくの。友近の勇気を感じるんだよね。それがもう感動の域で!
森下:これ即興?
わたなべ:そうそう。
森下:おお、発想力がすげーな。
わたなべ:にけつの千原ジュニアとかはやっぱり自分の話題を話そうとするじゃん、絶対着地しようとするわけ。それがないの、チルテレはふわっとして着地しないで許されるの。
森下:ちょっとわかる気はします。
わたなべ:いきなりミュージカルになったり、演劇が入ったり、コントしたり。この、チルテレ愛誰か共有してくれるかしら(笑)
森下:うん、、、良いと思うよ(笑)
わたなべ:笑わそうとしないじゃんこの二人は。普通笑いを貪欲に取りに行くでしょ、そのために構成してからコントロールしていくじゃん、トークを。それがもうダメなの。ルールはあってないようなもん。
森下:あってるんだろうねゆきこちゃんの感性に。覚えてるのがさ、2013年の8月かなAkademie Schloss Solitudeいったとき。わたしはスティーブ [タカスギ] のレッスンで、ゆきこちゃんは確かヨハネス [シェルホルン] に会いにきてて。
そのとき「ゆきこちゃんは根本的に雑よね〜そしてそれが良さとなって音楽に現れてるよね〜」っていう話をしたの覚えてる、夕焼けの時間にあの気持ち良い中庭のところで。セクションごとに完結させようとする意思がないぶん、ふわっと立ち現れて消えるっていうのが面白いの。
誇張じゃなく「雑」って単語使ったのに「そうなのよー!」って言ってて、わあこの人ぜんぜん怒らないんだなあって思った(笑)
わたなべ:ヨハネスで思い出したけど彼がこう言っていたの。「みんな深層心理が非論理的だと思ってるかもしれないけど、逆。深層心理は案外論理的なんだ」って。私たちの自然は、案外論理的にできてると思うんだよね。だって自然にやっていると普通は終結させたくなるじゃない、何事も。それをどう、ふわっと、させるかって、結構案外と難しいと思うんだ。話してても「これ、どこに着地させよう」って思っちゃうじゃない。
チルテレでは多分物凄く大きな流れを二人が感覚的に掴んで、意図的にそれを着地させないようにしてると思うの、それが巧の技術!そういうのって、多分培われたものだと思う。もう小さい頃からね。
そういえば私も実は中学生の時にめっちゃお笑い好きで、お笑い芸人目指してたんだよなー。
森下:まじで言ってる?
わたなべ:なぜに?友達とコントしたりして、面白かったわ。チルテレみたいなノリだよ。
森下:まじかー!そういうカルチャーは通ってきてないなあ!!
わたなべ:えー!そうなの?だってお笑いブームだったじゃん。わたしがっつりテレビっ子だったし、お笑い番組とか見て、次の日に友達とコントしたりしてたよー。
森下:えーないよう。高校の時はブリティッシュポップとか、あとビースティーのsave the tibet格好良いよねーみたいな。Björk見たくて友達とフジロックいってなぜかシーナ&ロケッツにびっくりしたり。
わたなべ:うち女家族で家が女の子文化だったんだよ。可愛いもの好きで、りぼんとかなかよしとか読んで、Mステ見て、ダウンタウン見てって感じ。
森下:お笑いじたい私ほとんど通ってきてないかも。
わたなべ:ピアノ弾いてても、似たような思考回路で理解してた気がする、バッハとか。解決を先に先に引き延ばして、着地させないでおいたり。私、小さい頃クラスで一番勉強できなくてね。小学校って、結構論理的に教わるじゃん、あれが全然理解できなくて。
森下:えーーまじで言ってるの???でもさ、そういう思考の特殊さが活かせるのはクリエイティブ業の良いところではあるよね。私はじぶんが思っている以上にロジック寄りではあると気づいた、あと合理的なものを愛しております。
わたなべ:そういえば、山根さんのインタビューで彼女が言ってたんだけど、彼女は小さい頃から「良い子でいよう」としてて、そこからの反発が凄いあったんだって。私はそういう意味では優等生からはほぼ遠く、誰からも期待されずに、その分自由にはやってきたかなと。
森下:あーそういうところ面白いね、優等生や頭が良い人が良いクリエイターになれるわけじゃないっていう。もちろん山根氏がどうこうじゃなくってさ。
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ふたりが講師をつとめるProject PPPの三日間のコンポジションアカデミーは2019年は9月2〜4日に開催予定。オンナ作曲家の部屋vol.2、稲森安太己によるゲストレクチャー、Vln&Vcコンサート、グループディスカッションなど。
ふたりが運営するさっきょく塾(オンラインゼミ)についてはこちら。第二期受講生の募集は2019年秋を予定しています。
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