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ゆきちか日々の書簡 02 * カイロの音楽祭
コンポーザー二人の毎日のやり取りを切り取ったもの。きほん何気ない話です。今回はわたなべさんが先日訪れたエジプトの音楽祭のお話。
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わたなべゆきこ
作曲家、ケルン在住、四歳児の母。次は6月デンマーク!
森下周子
作曲家、ベルリン在住。5月はひたすら作曲月間!
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森下:カイロどうだった〜?どれくらい行ってたの?
わたなべ:5日間だけど移動があったから実質3日かな。Cairo Contemporary Music Days(カイロ・コンテンポラリー・ミュージック・デイズ) っていうイベントで、3年前に招待されて行ったのが初めてで。
その時はリサーチ目的だったんだけど、今回は初演を含むコンサートがあったんだよね。デンマークの現代音楽アンサンブルAthelas Sinfonietta Copenhagen(アテラス・シンフォニエッタ・コペンハーゲン)が演奏してくれたの。今年はテーマがデンマークだったみたい。
森下:暑いの?
わたなべ:今回は肌寒いくらいだったけど、前回はあっつくて、もう空港降りたとたん空気がもわっと!サウナの中に住んでる感覚。
森下:でもテーマはデンマークだったんでしょ?ゆきこちゃん関係なくない(笑)なんで呼ばれたの??
わたなべ:なんでだろ、あんまり考えてなかった(笑)感覚的には無国籍なんだよね、わたし。Yukiko Watanabe(Japan/Austria)って書かれることがあったり、日本生まれのドイツ作曲家って言われることもあったり、ほんと色々 [※ わたなべは日本、オーストリア、ドイツの三ヶ国で大学に通った]。もしかしたら、こっちも書きたい編成でプッシュしてたから、単に機会くれたのかも。
森下:ここ数年エジプトの話聞くよね、周りの演奏家たちがよく行ってる。
わたなべ:以前ドイツのアンサンブル・モデルンでクラリネットを吹いていた人がオーガナイズしてるんだよね。シーンをつくろうと頑張ってるみたい。
森下:ああ、だからなのか!
わたなべ:プログラムは主にデンマークとエジプトの作曲家でね、そのなかでもエジプトの作曲家の作品が強烈だったんだよ。メロディーはイスラムの香りをまとってるんだけど、凄く西洋的なハーモニーと形式で書かれてたの。ずっとリハで聞いてたら楽しくなってきて、今もループしてる。
森下:アラブのスケール使って、曲の構成は西欧っぽいみたいな?マカーム音階とかだっけ。
わたなべ:YouTube にあるかな。うーん出てない!そうね、アラブっぽいメロディーが平均率化された感じって言ったらいいのかな。編成にはカーヌーンていう楽器が入っていてね。
森下:へえ、おもしろい楽器。音もインティメイト。
わたなべ:伝統的なものを好む観客なのかなって心配してたんだけど、意外にも私の書いたしずかーな作品にも耳を傾けてくれて、凄くピリッとした良い空間での初演になったの。全体としてとても良いコンサートだったんだよ。
森下:カイロかあ!わたし異文化圏の音楽祭で演奏されたのは上海くらいだなあ。しかも行けなかったんだよねえそのとき (´Д` )
わたなべ:カイロは前に行った時も衝撃だったんだよね、ハイウェイみたいに車がビュンビュン飛ばしてるのに、信号がなくて、そこを死に物狂いで横断したりとか。予算が足りないから建設がストップしてる骨組みだけの建物がわんさかあったりね。そこから「朝もやジャンクション」に繋がったんだよ。
森下:ああ、あの芥川作曲賞のオケ。
わたなべ:今回発表した「アクアの団地」もその骨組みだけの建設途中の建物の中に人が住み着いてるのを見て、昭和の団地を思い出してね、そこからインスピレーションをもらって書いたんだよ。
森下:あんまり想像できないわあ、そういうところ住んだこともないし。しかもエジプトって団地のイメージないから。やっぱりピラミッドとかスフィンクスとかさ、そういうの想像しちゃうじゃん。
わたなべ:私もそれ期待してたけど、なんていうか、それ以上だったんだよ。エジプトっていったら、ちかこが言ったようにまず「ピラミッド」じゃん?砂漠が広がってて、そこにラクダとスフィンクスみたいな。実際はその真横にマクドナルドがあってさ、街は思った以上に近代化してるんだよね。部分的には欧米化しているんだけど、決まった時間にはやっぱりコーランが大音量で流れるわけ。
森下:え〜!おもしろそう〜!!そっかイスラム圏か!
わたなべ:訪れた人それぞれ違う角度から見たカイロがあると思うんだけど、ステレオタイプなイメージってやっぱり強いよね。でも思うけど、西洋人がアジア人の私たちに期待しているのって、そういうことなんじゃない?
森下:どういうこと?
わたなべ:私たちがエジプトという国に期待してしまうもの、つまりステレオタイプの踏襲。深く知らないからこそ、なんだと思うけど。
森下:うーん、とりあえずそのジャンルって存在するよね。エキゾチズムとかそういうことでしょ、言ってるのって。文化交流名義は助成を申請しやすいこととも関係があるんだと思うけど。
わたなべ:そうかもね。
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ふたりが講師をつとめるProject PPPの三日間のコンポジションアカデミーは2019年は9月2〜4日に開催予定。オンナ作曲家の部屋vol.2、稲森安太己によるゲストレクチャー、Vln&Vcコンサート、グループディスカッションなど。
ふたりが運営するさっきょく塾(オンラインゼミ)についてはこちら。第二期受講生の募集は2019年秋を予定しています。これまでのエッセイ投稿はここのほか下記にも。
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