【ルポ】「残ってきたものは その都度NEOだったんだよ」

*この記事は池田親生が見たこと聞いたこと体験したことを、第三者の視点でルポルタージュとして紹介するものです。


高野山。弘法大師 空海が1,200年前に開創し、以来、日本仏教における聖地としてあり続けている。この地に世界各国から300名もの僧侶が集い世界平和を祈るイベント「WORLD PEACE GATHERING 2019(以下、WPG)」が、10月18日(金)~20日(日)の3日間開催された。

池田親生はメインイベントである2日目の「PEACE MANDALA」にあわせて、エントランスの階段を竹あかりで装飾する依頼を受け、竹40本を積んだバンで熊本から向かったのだった。途中休憩を挟みながら九州は熊本から走ること15時間。曲がりくねった山道を登っていくと、次第に秋の気配が濃くなってくる。高野山は本格的な秋を迎えつつあった。立ち並ぶ木々たちの間を凜とした澄み切った空気が流れていた。

この「PEACE MANDALA」とは、図像ではなく人でマンダラを描く三次元の立体的マンダラ。中心に光る仏像が鎮座し、その周囲に300人の僧侶たちがマンダラ状に入り、坐り、礼拝し、真言(マントラ)を唱和し、瞑想する。そのさまは圧巻の一言。僧侶たちの奏でるマントラに音楽家 渋谷慶一郎氏のつくり上げたエレクトロニクスが重なり合い、新たな世界観を創出していた。
ラストを飾ったのは、伝統的な仏教音楽「声明」と渋谷氏による最先端のエレクトロニクスのコラボレーション。伝統と最新の融合は、仏教の、音楽の新たな地平を切り開き、来場者に驚きと興奮、そして感動という爪痕を、からだの奥底にしっかりと残していた。

今回、WPGを中心的に運営していたのが別格本山 三宝院の副住職 飛鷹全法氏。親生は全法氏と2日目終了後の懇親会で酒を酌み交わした。そのとき、特に印象的だったのが「高野山は開創して1,200年。でも今も残っているということは、その都度NEOだったんだよ。時代ごとに、常にアップデートし続けて来たということでしょう。」という氏の言葉だった。
親生は全法氏に「革命的」なイメージをいつも抱いていた。例えば「ネオ精進料理」という取り組みがある。この日の懇親会にも、とても精進料理とは思えないほど華やかな「ネオ精進料理」の数々が食卓を彩っていた。これは「仏教では山、川、草、木もすべて命があるとしている。精進を、『野菜は殺生ではなく、動物は殺生』という食材としてではなく、私たちの態度の問題としてとらえ直す」取り組みだという。
そんな全法氏が苦心し、実現にこぎ着けたのが、今回のWPGの開催だった。「PEACE MANDALA」はアメリカに本部が置かれ、世界各地で開催されてきたが日本では初の開催。歴史や伝統のある地であればあるほど、何か新しいことをはじめるときには大きな障壁がつきまとうが、高野山にとってもそれは例外ではなかった。
全法氏は言う。「世界ではスティーブ・ジョブスがヤバいって言うでしょう。世界を変えたとか、革命を起こしたって。確かにその通りなんだけど、空海もヤバいんだよね。書や仏教、美術とかだけじゃなく土木技術やほんとうにいろんなことを日本に持ち帰り、革命的にはじめた人。今の人たちも、ジョブスを尊敬するように『空海ヤベー』って言うようになったら面白いと思うし、高野山も変わってくると思うんだよね」。

話を聞きながら親生は「これって『ちかけん』の経営理念と一緒だ!」と気付いた。ちかけんの経営理念に「ちかけん発明:『さらに豊かな今』をつくることに貢献します」とあり、「発明」を「従来見られなかった新規な物や方法を考え出すこと。社会の風習や慣習の革新も一種の発明であり、ある分野での考え方や手法や道具立てを、想像もしていなかった分野に適用すること」と定義している。まさに空海であり、アップデートし続ける高野山であり、全法氏の取り組みと重なることだった。この「ちかけん発明」はあまりこれまで表に出てくることはなかったが、親生にとっては常に心の中に「理念」として大切に残り続けていたものだった。そのことを説明しながら「三城くんももう忘れてると思うけどね」と親生は笑う。

今回、高野山に招かれたことは、革命のはじまりに立ち会うためだったのだと痛感した。その中で竹あかりを演出することができたことは幸せだった。美味しいネオ精進料理とお酒に身を委ねながら夜は更けていった。NEOという言葉の甘美な響きと、僧侶たちのマントラ、そして声明と渋谷氏の音楽のコラボとが絡み合いながら耳の奥に流れ続けていった。(2019/10/24 橋口博幸 記)

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