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日本100本指に入る育メンが政治の世界に足を踏み入れるまで②

せ、せ、せ、政治?!

正直「うっそーーーーー!!!」という感じでした。40歳を眼の前にして、やりたいことをやってみたらいいと言ったのは私だけど、まさかそんな明後日の方角から爆弾が飛んでくるとは、思ってもいませんでした。

100本の指に入る育メン夫が「政治の世界をみてみたい」と言ったところで終わった前回の続きです。前回を読んでいない方は、こちらからどうぞ。

彼の言い分としてはこうでした。

「僕は、そもそも法政の政治学科を出ているし、学生時代は議員事務所のインターンをやっていたこともあった。311があって、より身近になった政治。チャレンジするならコレだと思ったんだよね」

正論でした。勝手に「それはないだろう」と思っていたのは私だけ。彼の中にその芽はちゃんとあったのです。

選挙の度にテレビに噛り付き、毎日チェックするニュースは社会情勢。歴史が大好きで、歴史と政治について私が浅はかな知識で物言うとまんまと噛み付かれます(笑)黒田官兵衛、真田丸、武将モノの大河ドラマは外したことがなく、先週始まった「麒麟がくる」も指折り数えて心待ちにしていました。

「歴史は、政治の勝者側の物語りだ」と豪語する彼。
私が意識していなかっただけで、日本100本の指に入る育メン像とは違った「政治色」はいつも日常に存在していたのでした。

夫婦と言えども、知らないこと、わからないことの方が多いのだと思い知らされました。


覚悟したら、道が自然と拓けてていった

そうとは言ってもね。
やってみたいと言ったところで、おいそれとやれる職業でもなしにね。
どうするつもり?と私は未だCEO顔でした。

それでも彼は真剣でした。

「聞いてみようと思う。議員の他には、職種があるのか?とにかく見てやってみたいんだ。自分がその世界でやれるのかどうかも含めて」業界に詳しい友人に連絡をするとのことでした。

それでも政治の世界に興味があることを誰かに吐露することは、それなりに抵抗があると見え、慎重にメールを作り送っていました。

やりたい!と言ったからってそう簡単にはいかないよ。

まだ、どこかで手放したくない私が見え隠れしていました。


でも、次の瞬間


「政治に関わる仕事って、政治家か、秘書か、あとは団体職員とかかな?それぐらいしか思いつかない!何?興味あるの?うち来る?ちょうど組織再編成してるところでさ、北海道離れることになっちゃうけど、それでもよければ考えてみて〜」


いとも簡単にオファーを頂いてしまったのです。

今まで幾度どなく巡ってきていたチャンス

元はと言えば、前述の友人との関係も含めて政治家と呼ばれる人との繋がりが深いのは私の方でした。「原発事故子ども被災者支援法」という法律を作る過程で、お世話になった、仲良くなった方々が何人かいたのでした。

「慈ちゃん立候補しない?」と言ってもらうことも一度や二度ではなく、5年ほど前に夫が仕事に悩んでいた際「秘書どうかな?」と声をかけてくださった方もいました。今思えば、その方は本人よりも先に彼の未来を見ていたということにもなりますが、当時の我が家にその提案を受け入れるキャパはありませんでした。

前記事を読んでいただけばわかるように「子どもが小さいうちはできるだけ家族で一緒にいたい」が私たちのベースにありましたし、秘書って休みなさそうだし、とてもブラックなイメージ。目指したいライフスタイルにもっとも逆行している仕事ではないか?と思っていました。

「政治と野球チームの話はするな」というくらい、日本において「政治」はどこかタブー感のある空気が漂っています。311を体験し、政治が大切なことは頭で重々わかってるし、選挙にもいく。でも、そこに自分たちの身を投じるか?と言われたら別の話です。体が動かないのが現実でした。

でも、今回は違いました。
夫の頭に、しっかりと心も体もついてきていました。

選ぶべきは夫の将来か?家族の幸せか?

「北海道ではなく友人のところへ行きたい。家族にもついてきてほしい」

当然、彼は言いました。
またとないオファーです。彼らの下で働けるならこれ以上のことはないと私も思いました。

しかし、私たちの生活はどうなるのだろう?
せっかく築いてきた一緒に子育てができるコミュニティは?DIYで直し続けてきた海沿い(2拠点居住地)の家は?娘と息子が信頼し慕っている人たちとの時間は?

急にワンオペになるだけで私にとっても子どもたちにとっても、とてつもなく大きなチャレンジです。それが、見知らぬ土地で、全くゼロからのスタートとなるのです。では、単身赴任ができるか?といったら2竃を賄えるだけの給与でもありません。もし仮に賄えたとしても、きっと職業柄、1ヶ月に何度も帰ってくることは難しいでしょう。

そうなった時、それは家族の幸せなんだろうか?

彼の思いを叶えてあげたい気持ちはあります。

私が覚悟すればいいだけの話なのだろうか?
それは本当に私が望んでいることなのだろうか?

それで、彼は、子どもたちは、私は、本当に幸せなんだろうか?

毎夜、泣きながら考えました。

悩みに悩み抜いた末

娘に聞いてみたのです。
あなたはどちらがいい?と。

「パパとはなればなれになるのもいやだし、お引越しするのもぜったいにいや!あたらしいばしょでおともだちもいないし、ぜったいにいやだよーーーーー!エーーーーーーーーん!!!!どうしてお友だちかパパかどちらかとさよならしなくちゃいけないの?そんなのぜったいにいやだよーーーーーーー!エーーーーーーーン!」

!!!
あまりの素直さにわたしも釣られて泣きました。

そうだよね。

どっちかじゃないよね。

どっちもいやだよね。

それでいいんだよね。

ごめんね、そんなことにも気づけなくてごめん。

大丈夫、慈がなんとかするから。

大丈夫、安心して。大丈夫だから。

まるで自分にいうように、娘を慰めました。

そして、勇気を持って彼に伝えました。


「申し訳ないけど、やっぱり無理だよ。今回の件は見送ってほしい」と。

すると、

どうしたことでしょう?

なんということでしょう。

「それは無理だ」
というのです。

「何がなんでもいく」
と。


あんなに論理的で冷静なはずに夫が、頑なに聴く耳を持たない。戸惑いました。

100本の指に入るほどのイクメンと言われようが、やはり「男」という生き物である彼は、社会的な地位や、分かりやすい肩書き、実績に飢えていたのかも知れないと思いました。

「せっかく目の前に現れた大きなチャンスを逃したくない」という気持ちが働いたのも理解できました。

でも、ここで家族を振り切ってやる挑戦は彼にとっても、オファーをくれた友人にとっても良き道にはどうしても思えませんでした。


独身ならわかるけれど、あなたには妻も子どももいるのだよ?

ちゃんと考え直して?

どうしてわかってくれないの?


どんなに伝えても頑なな夫。

悲しい

苦しい

不安

怒り

泣き尽くしすべての感情を吐き出した後に訪れた、静寂。




私に残された言葉はこれだけでした。



「そっか。どうしても行くというなら、夫も、父もこの場で辞めてから行って」


※次回に続く

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