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日本科学未来館の「インターネット物理モデル」が廃棄されようとしている背景とその理由

日本科学未来館の「インターネット物理モデル」が廃棄をとめるために署名を集めていますが、なぜ廃棄されるかの背景と理由の説明となります。

1. 展示物の性質と特化性

展示物は特定のテーマや期間限定の企画に合わせて設計・制作されることが多く、他の用途に転用しづらいです。特に、以下の特徴が再利用を難しくしています:

  • カスタムデザイン: 展示ごとに独自性の高いデザインや形状を持つ什器や構造物が多く、他の展示でそのまま利用できない。

  • テーマ特化: 特定の展示コンセプトに合わせた内容(グラフィック、映像、模型)が汎用性を欠く。


2. 保管スペースの制約

  • 展示物を保管するためには膨大なスペースが必要ですが、多くの科学館や博物館では保管用倉庫のスペースが限られています。

  • 特に大規模な什器や機材は解体や分解しても十分な保管場所を確保できず、結果的に廃棄せざるを得ない状況が生まれます。


3. 運搬・維持コスト

  • 展示物の運搬や保管には追加の費用がかかります。また、時間が経つにつれて、保管中に劣化する可能性が高く、修繕や再利用のコストが増大します。

  • 科学技術系の展示では、電子機器や特殊な素材を使用しているケースも多く、これらの劣化や安全性の維持が困難です。


4. 展示内容のアップデート

  • 科学技術分野では情報や知識が急速に進歩するため、展示内容が陳腐化しやすいです。古い内容をそのまま再利用するのではなく、新しい情報に基づく展示が求められます。

  • 古い展示物を再利用するより、新規製作の方が効果的である場合があります。


5. 環境意識や持続可能性への関心の低さ(過去の状況)

  • 持続可能性やリサイクルへの意識が近年高まる前は、廃棄に対する懸念が少なく、展示終了後に廃棄することが標準的なプロセスとされていました。

  • 資源の有効活用や廃棄物削減に関する法規制も現在ほど整備されていなかったため、廃棄が合理的な選択肢とされていた時期があります。


6. 制作時に再利用を考慮していない設計

  • 従来は、展示物の設計段階で「終了後の再利用」や「素材の分解・再利用」について考慮されることが少なく、一度作られた展示物は役目を終えれば廃棄される流れが一般的でした。


現在の変化

近年では、持続可能性への意識が高まり、以下のような取り組みが進められています:

  • アップサイクルやリユースを考慮した設計: 展示什器を別の用途に転用できるよう、モジュール化や素材選びを工夫する。

  • 製作プロセスの見直し: 廃棄物を減らすため、端材の利用やリサイクル可能な素材の選定が行われている。

  • 環境配慮型展示の普及: 環境問題をテーマとする展示が増え、それ自体が持続可能なプロセスで作られることが求められている。

こうした変化により、展示終了後の廃棄量を減らし、資源を有効活用する方向へとシフトしており、下記のような事例もあります。

展示終了後の廃棄に関しては、従来、多くの展示物が廃棄されてきましたが、近年では環境負荷の低減や持続可能性の観点から、廃棄を避ける取り組みが注目されています。例えば、2023年11月にリニューアルされた常設展示「プラネタリー・クライシス-これからもこの地球でくらすために」では、展示什器を将来的にアップサイクルやリユースできるよう計画されています。このような取り組みは、展示物の再利用を促進し、廃棄物の削減や資源の有効活用を目指すものです


繰り返しとなりますが、今回の廃棄の事情や、それでもインターネット物理モデルを、廃棄をとめる事への意義に賛同していただける方は、下記リンクより署名や、シェアのお力を借りれられたらと思います。


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