砂時計
サラサラと砂が落ちていく。
ぼんやりとした心地の中、夢を見ていることだけはわかった。
白い空間。
その中にひとつ置かれた紅い砂の小さな砂時計。
不思議な夢だと、ただそれだけ思った。
また同じ夢を見た。
前日に見たものより少し砂が落ちている。
僕も少し砂時計に近付いている。
なにか書いてある。
よく見ようとしたところで夢は途切れた。
また同じ夢を見た。
また前日よりも砂は落ちていた。
下に落ちた紅い砂が、少しずつ色を失っていくのが見えた。
文字はまだよく見えない。
僕はこの不可解な夢に少しずつ苛立ちを覚え始めた。
また同じ夢を見た。
砂は半分ほど落ちていた。
よく見ると、砂時計に「4DAYS」と文字が刻まれていた。
4日後に何かあるのだろうか。
考えてみたがわからなかった。
また同じ夢を見た。
砂は変わらず落ち続けている。
しかし下に溜まったはずの砂はすっかり消えてしまっていた。
文字はだいぶ見やすくなった。
砂時計の文字は「3DAYS」へと変わっていた。
また同じ夢を見た。
砂はずいぶんと少なくなっていた。
砂時計には小さなひびが幾分にも重なって入っていた。
思わず手を伸ばすと夢は途切れた。
砂時計の文字は「2DAYS」へと変わっていた。
また同じ夢を見た。
僕の手には砂時計が載っていた。
砂時計の砂はついに落ち切った。
その瞬間、文字は「1DAYS」から「0DAYS」へと変わって
粉々に割れた。
僕が目を覚ますと、ちょうど0時を回ったところだった。
僕の脳裏にはなぜか半年前に別れた彼女の顔が浮かんでいて、
僕の頬には大粒の涙が流れていた。
「好きな人ができたの」
半年前、彼女はLINEでそれだけ言った。
何を聞いても、何も答えてはくれなかった。
まだ忘れられないのかと僕は自分の女々しさを嗤った。
そのまま朝になった。
腫れた目を擦る僕のもとには一通のメールが届いていた。
僕はあの日の彼女の言葉が嘘であったことを知った。