プラチナデータ※2次創作 ネタバレ注意
それは天才数学者の遺した大きな罪。
プラチナの名のように価値あるものではなかった。
いや、とある者にとっては何より価値あるものであっただろう。
しかし、けして美しくはなかった。
国家に管理されるDNA。
それに基づいた事件捜査。
隠される重役の罪。
それは本当に正しいのか。
いいや、正しくはない。
スズラン。…リュウ。
君たちもそう思うだろう?
鍵はもう失った。僕はもう、あの社会では生きたくなどない。
僕は自転車を走らせた。僕を救ったあの村へと。
父を思い出させてくれたあの影にまた会うために。
何日経っただろうか。
古くなっていた自転車はタイヤが擦れ空気が抜けていた。
錆びついた籠は壊れかけていた。
それでも。
また、出会うことができた。
やっぱり、また会うと思っていたよ。
僕を救ったその人はニヤリと笑う。
影はその仏頂面をひとつも変えずにまた来たのか、とだけ言った。
僕はその隣へと座る。
美を形作るその手はやはり、どこか父に似ている気がした。
人の想いはきっと、プラチナなんかよりもずっと価値あるものだと気付かせてくれた君に言わせてほしい。
リュウ、申し訳なかった。
あともう一つ。
ありがとう。
神楽
※東野圭吾さん作「プラチナデータ」の二次創作です
登場人物の想いや描かれなかった場面を想像して書いてみました