🔷key of あとがき

公募102　あとがきから始まる旅もある

いかすライムをよろしく
2022／12／31〆　100万リラ　近田秋生
【作品】
書かなくても生きていけることに気がついたのはいつの頃だろう。猫か。
大人になるとなったで毎日が屋根を走る仔猫のように忙しい。
目覚まし猫に起こされ、猫を撫でたり、冬の朝日を浴びたり、シャワーを浴びたり、掃除をしたり、甘い紅茶を飲んだり、猫を撫でたり、ジャズをかけたり、お茶漬けを食べたり、ゴロゴロをしたり、世直ししたり、猫を撫でたり、公園に行ったり、空の青さを知ったり、キュンとしたり、ぐっと握りしめたり、猫を撫でたり、手を振ったり、手紙を書いたり、子どもと話したり、花火を見たり、猫を吸ったり、月を抱いたり、お風呂に入ったり、誘われたり、あんなことをしたり、猫を撫でたり、寝息を聞いたりしているうちに、月日は行き交う旅人たちのようにまたとおり過ぎていく。
でも別れは哀しみではない。
半醒半睡の間に現れた言葉たちを書き留めているうちにさし出された幸福の扉を開く鍵が見つかることもあるだろう。つまり、君がこの言葉を読んでいる今このすべてを、旅立つ猫は決して忘れない。そうそう、空になってこちらを見つめている猫へのご飯も忘れてはいけない。
Last but not least, this series is mainly inspired by 『風雅の虎の巻』.
Thank you,Hashimoto Osamu, one of the greatest Japanese writers in our days, and
ほら、こんなところにもまた
【解説】
「屋根を走る仔猫のように」「全てを開く鍵が見つかる」は小沢健二『強い気持ち、強い愛』「ホラこんなトコロにもまた」はスチャダラパー『The Late Show』
【追記】
それでは見事102連敗を喫して連載を終えた近田秋生さんへのインタビューです。
──お疲れ。
近田：ありがとうございます。
──今の気持ちは？
近田：ただただ嬉しいです。
──そのぬか喜びを誰に伝えたい？
近田：まずはここまで読んでくださった方に。
──102連敗か。最後せっかくチャンスをあげたのに。
近田：ねこはよんでもきませんね。
──はい。でもよく途中でやめようと思わなかったな。
近田：不随意筋の運動なので私の意思は関係ありません。
──そうは言っても、焦りや不安はあっただろうに。
近田：生まれてきてよかったなという瞬間はあったしいつでも幸せになれるので。
──ラッキーだったな。ところで、青空頭さん、ごく狭い界隈でささやに読まれつつある理由は？
近田：時代が追いついてきました。
──すぐに抜かれて、忘却の彼方か。
近田：忘れ去られることは存在したことの証です。
──詐欺師の口ぶりだな。
近田：存在しないものへの手触りは詩人の領分です。
──いったい何をめざされているのです？
近田：スイープトウショウ
──ウマ娘？
近田：メンチカツ
──つまらん。あ、そうそう、で、暗雲立ち込める今後の予定は？
近田：え〜、なんだかその、あの、もふぁっとしたものが、こう、さらさら〜と、
──悪かった。でも、才能ないのによくやるよね。
近田：才能はやらない為の言い訳ではなく、やることで生まれてくることもあるものだと師匠に教わりました。
──それって本当？　今度会わせて。
亡くなりましたが、私の言葉の中に生きています。
──じゃあ最後にその言葉で、数少ないファンに一言。
近田：あんた誰？