ステイシーくん、警戒する(後半)
「ピィ!ピィ!ピィ!」
ステイシーくんは部屋んぽスペースの隅っこで、ずっと警戒鳴き?を続けている。
「大丈夫だよ。何もないよ。大丈夫だよ」
私は軽くパニックに陥って、オロオロとステイシーくんに声を掛け続けたが、効果はなかった。
こういうときは、そっとしておいた方がいいのかもしれない。
心配で仕方がなかったけれど、ステイシーくんが落ち着くまで、私はじっと待つことにした。
やがて20分くらい経っただろうか。
ステイシーくんはようやく鳴くのをやめ、カクカクとした動きで隅っこから出てきたかと思うと、ダダダーッとケージの中に自分から入っていった。
私はケージの出入り口をそっと閉め、しばらくステイシーくんの様子をうかがったが、ステイシーくんは、鳴きこそしないものの、ケージの外をじっと見つめて固まっている。
私がそばにいない方がいいかもしれないな。できるだけ、自然な感じで、けれど驚かせないように気を付けながら過ごそう。そう思った。
その日以降、2週間くらい、ステイシーくんはケージの出入口を開けても、外に出ようとしなかった(2週間くらいすると、何事もなかったように、部屋んぽに出るようになった)。
当時も今も、何が原因だったのか分からない。
私が今住んでいるところは、よく鳥が飛んでいるので、鳥の鳴き声や羽音にびっくりしたのかもしれない。
近所の人の車の音に驚いたのかもしれない。
ただ、鳥の音や車の音は、それまでの部屋んぽ中にもよく聞こえていた。ステイシーくんが警戒するようなことはなかった。
現在も、同じように鳥の音、車の音、人の話し声なんかはよく聞こえてくるけれど、ステイシーくんは平気な様子で部屋んぽできている。
あのとき、ステイシーくんは何に警戒していたんだろう。
時々思い出しては、ちょっと怖くなる。