ステイシーくん、警戒する(前半)
さて、ステイシーくんが撫でさせてくれてから少し経ってからのこと。
そろそろよかろう、と思い、私が仕事から帰ってケージのお掃除を済ませてから、部屋んぽに出すことにした。
高さ75センチメートルあるペットサークルを結束バンドでつないでケージ周りを囲み、だいたい2畳半くらいだろうか。狭くて悪いけど、そのエリアを部屋んぽスペースにすることにした。
初めて部屋んぽに出したときのステイシーくんは、ぎこちなく、まるでロボットのようにカクカクと動いていた。
「緊張してるんだろうなあ」
と思い、私はじっと動かず、ステイシーくんが慣れるまで置物に徹っしていた。
部屋んぽの時間はだいたい30分くらい。ケージに戻ってくれなかったらどうしよう、と思っていたけれど、30分くらい経つとステイシーくんは飽きるのか満足するのか、自分からケージの中に戻っていく。
ケージに戻ったら、ウマウマ(あっぺん大麦)を2、3粒あげるようにした。「ケージに戻ったらウマウマをもらえる」と覚えてもらうためだ。
2、3日経って、ステイシーくんのカクカクした動きはなくなり、ケージから外に出たら、「バビューン!!!」とばかりにサークル内を走り回る。その後置物(私のことである)のあちこちをぴょんぴょんと跳ね回り、またサークル内を走り回る。
その姿ときたら、可愛い。可愛くてたまらんのである。
それが日課になった。
時々膝の上に乗るステイシーくんをそっと撫でたりするようになった。
(ステイシーくんは、2、3秒くらい撫でさせてくれたけれど、すぐに走り去っていく)
ああ、順調に慣れていってくれてるなあ。
私は調子に乗りつつあった。
だが。
ある日突然、部屋んぽの途中でステイシーくんは隅っこに行ったかと思うと、「ピィ!ピィ!ピィ!」と高い声で鳴き出したのだ。
え、え、え。
ど、どうしたの?!
この鳴き方は「警戒鳴き」というやつじゃなかろうか。
え、なんで?なんで?何も起きてないよね。なんか驚かせるようなことしたっけ?
「どうしたの? 大丈夫だよ、何も怖いことないよ、ほら、こっちにおいで」
テトを落ち着かせたナウシカになりきって優しく声を掛けたものの、ステイシーくんはひたすら「ピィ!ピィ!ピィ!」と鳴き続け、固まり続けた。
どうしよう・・・・・・
(後半に続く)