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品のある人

品のある人が好きだ。

話が一見飛ぶようだけど、ちょっと辛抱強く聞いてくれたら嬉しい。

最近、とある人の書いた文章を読んだ。中身は、私があまり考えことのない内容だったけど、わかりやすく整理され、とても読みやすい文章だった。そうかー、こういうことも考えていかなきゃいけないよな、うん。と納得して、ずいぶん品のある文章を書く人だ、作者は誰だろう、と思って、作者を見に行った。作者の写真を見て、かなり驚き、まじまじともう一度見直して、もう一回、文章を読み直した。

もう一度文章を読んで落ち着き、まあ、納得はしたのだけど、この気持ちを誰かと分かち合いたくてたまらなくなった。しかし、私にはその分かち合いが気軽にできるような友人は、残念ながらいないのだった。

作者は、元恋人だった。

まあ、顔はわからないようになってたけど、前にもらったうんと若い頃の写真だった。間違いない。

いや、まあ、確かに、その記事は元恋人のSNSでシェアされていた。なんのコメントもなく。彼の興味のある内容ではあったから、それでシェアしたのだろうと思ったのだ。

どちらの名誉の為かわからないが、そもそも名誉のためなのかもわからないが、言っておくと、彼の書いた長い文章は読んだことはある。仕事用に書かれた小難しい論文と、新聞に寄稿した記事だ(もちろんラブレターは別だ)。こんな文章を書くんだ、と、感動しながら読んだのを覚えている。覚えては、いるし、件の文章を読みながら、彼が好きそうな書き方だなとは思いはしたが…

まさか、ねぇ…と思わず独り言をもらす。

何はともあれ、わかったのは、彼は品のある文章を書く人なのだ。それは、恋というフィルターを取っ払ったとしても、感じたものだから、間違いない。少なくとも、私には品のある文章に思われたのだ。

で、ようやく冒頭の一文に戻る。

品のある人が好きだ。

一つだけ、恋人にしたい条件を挙げるとするならば、品のある人がいい。

では、品のあるひと、とは具体的にどういう人なんだろう。

もう新たな恋をする気はあまりないのだが、ただ一つ神さまに条件をつけて恋人を連れてきてもらうとしたら、どんな風に指定すれば良いのだろう。

訪問リハビリに向かう途中、つらつらと考えていた。昔の恋人を思い出し(と言っても、片手で数えるほどしかいない)、共通点を探ってみた。全員に共通するのはなかったが、確かにここは好きだったな、というポイントは、あった。

さて。

私の出した結論はこうだ。

品のある人、とは、食べ方がきれいな人だ。

ここで、その文章を書いた元恋人のことを書くのが流れとしては自然だろうが、あえて、一番初めに付き合った人のことを語りたい。もちろん、文章を書いた元恋人は、それはきれいにご飯を食べるひとだった。だけど、今は、初カレ(書いてて微妙な気分になる表現だが)のことを語りたい。

ので聞いてほしい。

わかっている、話が飛んでる上、長い。

ので、別に聞かなくてもいい。勝手に語るから。

その時、私は二十歳だった。カレは一つ上だったが、同学年で、所属していたサークルの仲間だった。

工学部にいて、いつも全体的に格好はヨレヨレで、あまり外見は気にしないタイプのように見えた。言葉遣いはとても丁寧だったけど、どことなく落ちつかない印象で、よく爪をいじっていた。

下の名前で呼び合うことが多い地域だったが、本人は、自己紹介は名字だけしか言わなかったし、周りも名字で呼んでいた。

なんだか変なひと。というのが私の第一印象だった。宗教系のサークルだったので、割にきちんとした人が多いなか、なんとなくだらしなく見えた。よくふざけて変なことを言ったり、して見せたりして、硬くて真面目だった私(ほんとにそうだった)からしたら、実はちょっと苦手なタイプだった。

印象が、変わったのは、サークルの皆で北部の方へドライブに行ったときだった。

そこ出身のメンバーがいて、なんと実家に招待してくれたのだ。総勢十人はいたと思う。大きな長テーブルに、ずらりと並べられたお膳。ご飯、味噌汁、おかずが2品、小皿に入ったお漬物のお膳。壮観だった。

おかずのうちの一品は、私の大好きなお魚の姿揚げだった(ちなみに、グルグンの天ぷらである。沖縄料理ではよく出てくる)。大好きだが、人前では非常に食べにくい。食べた人はわかると思うが、小骨が多いし、ヒレだの頭など食べないとこは外さなくてはいけない。悪戦苦闘しながらどうにか食べ終えた。美味しかったが、お皿の上はまあ綺麗とは言い難い状態だった。

ふと、斜め横に座っていたカレをみて驚いた。思わず口に出して話しかけていたほどだ。

「すごい、○○さん、魚の食べ方とても綺麗だね!」

「そうですか?まあ、食べ慣れてるし…父さんがこういうのうるさい人だったから」

みたいな会話をしたような気がする。

ふぅん、と私は思った。こんなきれいな食べ方をする人見たことない。見た目とちょっと違うのかも。そこでちょっと興味が湧いたのだ。

追加で話すと、そのあとみんなで海を見ていたら、カレがメンバーに向かって、

「白鳥は哀しからずや、ですね」

と言ったので、思わず二度見してしまった。

「白鳥は 哀しからずや 海のあお 空のあおにも 染まずただよう 北原白秋?意外ー!理系だからそういうの、興味ないと思ったー」

と私が横から言うと、カレは笑って、

「口から出まかせを言っただけですよ」

と答えた。

意外、意外すぎる。なんだこの人は。謎だ、話してみたい、となって、色々あって付き合うことになった。

その色々は、聴きたければいくらでも話せるけど、今はやめておこう。ながくなったし。

続きはまた今度。聴いてくれてありがとう。







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春日井透子
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