
【1】がーん!・・告知日
画面には、2日前に撮影したCTが黒と白で表示されていた。
「1人で来たの?ご家族は?」
医師は私の目を見て穏やかに尋ねた。
「1人で来ました。」
私はストンと答えた。
脊椎らしき骨、目を凝らして矢印があるのを確認。
理解ができない私に、医師はA4用紙を手元に置くと手書きでサラサラと描きはじめた。
1.隆起
2.潰瘍
3.浸潤
4.びまん
絵の横に文字が書かれた。
四つの種類があると説明し、3番目「浸潤」に丸がつけられた。
「直腸を輪切りの状態にすると、ここが腫瘍。空いているのはここ。」
赤鉛筆でブツブツ点々が描かれた8割。オカリナ型に囲った範囲は2割弱が青鉛筆で薄く塗られた。中心近い堺辺りは囲われ赤く濃く塗られた。
こんな狭いところをウンチが通過・・そりゃ盛大に血もつくわと納得した。
直腸全体が明らかに占拠されている。
進行直腸癌、領域リンパ節転移3か所
多発肝嚢胞、左腎臓嚢胞、胆嚢底部腺筋腫疑い
がんを化学療法で小さくして手術で取る。
人口肛門で一生過ごす。
説明を聞き、一瞬遠くなった。
気づくと胸の上あたりにポートと呼ばれるものを埋め込む日程話に進んでいた。
質問してゆくうちに抗がん剤なのだと理解して、待って欲しいと伝えた。
進行性の癌、腸閉塞寸前、優しく最速が最善だと伝えられ、週明けの4日後に日時が決まった。
そのまま内視鏡検査。
鼻の奥ががツンとしたまま、甥っ子作「御守クラゲ」を握る。
履いているのは、穴が開いてお尻がスースーする長い紙ズホン。
痛い!痛い!痛い!
あまりに狭くなっていて進まないという。
怖い。痛い。情けない。痛い。
痛いですと言いながら涙が出た。
病院を出て歩きながら気持ちが湧いてきた。
入院して手術は予想していたけど・・・ステージ3って
抗がん剤、手術、人工肛門って・・・・どれも嫌だ・・
なるべく深刻にならないよう夫に報告した。
どうやって家に帰ったのか記憶が曖昧。
肛門管がんと診断されるのは、もう少し先のことでした。