【4】トイレ掃除しながら猫に嫉妬
家出したがん患者は県境を越えた。
そして、とある場所に到着。
車に積んだ荷物の半分以上はヒーリングに特化したライアー(ソウルサウンドライアー)たち。私の選択を受け入れ両腕を広げて迎えてくれた天使のような2人、そして私と距離を取る猫2匹の穏やかな犬との共同生活。
初日
勇気を振り絞り胸を押さえてキャンセル電話。
CVポート埋め込み予定日に受診できないと伝え、県外に居るからと受付の方と話を終えようとした。コロナ禍の県境越え接触者有とあれば病院に入れないのは正当な理由と思えた。
ところが担当科へ繋がり、同じように伝えたところ担当医に替わると言われ慌てた私は電話を切り、その後スマートフォンに病院の番号が表示されるも怖くて出れず仕舞い。
ごめんなさいと手を合わせ息を吐いた。
水音が聴こえる庭で日向ぼっこをして、静かに安心して過ごす。
私ではない誰かの願いや意志から離れて、望むだけ自分の内側を見つめる時を持てた私はとても幸運だったと思う。
朝に洗濯物を干し午後3時を過ぎると取り込み、お日様の匂いを感じながら洗濯物を畳む幸せ。縁側でイトオテルミー三昧。夜中や朝に私の傍に来る猫たちの愛らしいこと。
この場所に身を置いてからは早寝早起き、規則正しい生活を送りライアーを奏で、語らう日々。
それでも夜に目が覚めると切なくなった。
告知前、私は楽観視していた。
がんがあっても手術で取れるくらいだろうと、入院に連れてゆく小さなライアーを急ぎ作っていた。
大きすぎるがん細胞が、まさか肛門をあきらめなくてはならない程に育っているとは。
人工肛門で生涯過ごす自分が想像できない。
カーテンの隙間から入る月明りの中で、入院のお供にと機織り作家さんに頼んだショールで自分を抱きしめた。私に合った方法はいろいろある。必ず治る。奇跡が起きちゃった!と笑う自分を想像して目を閉じる。
猫たちのトイレを掃除する毎にウンチを見て「いいなぁ」と嫉妬していた。
しばらく前から、私のウンチは猫トイレ砂の中からつまんで捨てている猫ウンチの細さ。
便意はあるのに私のウンチはなかなか出てこなかった。
↓↓ 機織り作家さんは、この方 ↓↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?