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音楽が空間の雰囲気を創り出す~サンパウロ・Guarulhos空港の音の思い出

カフェやレストランでボサノヴァが聞こえるようになって久しいですが、その音を聞くと不思議とその空間を「なんかオシャレ」だと感じます。それほどまでに音(音楽)が空間に与える影響は大きいものです。それが国の玄関口となる空港や主要都市のターミナルであれば尚更。

先日、東京駅のカフェで一息ついていると、フランク・シナトラが朗々と歌い上げる「ニューヨーク・ニューヨーク」が流れ出し、少々面喰いました。日本の首都・東京のターミナル駅でこんなにハッキリと “New York, New York~” と言われては・・・。その瞬間によみがえったのが、ブラジル・サンパウロのGuarulhos空港で体験した、音の思い出です。

私は2019年に、長年の夢であったブラジル旅行をしました。2019年のゴールデンウィークは平成から令和に変わったタイミングで、最大10連休であったことをご記憶でしょうか?東京からブラジルまでは約35時間(!)。往復の移動だけで3日費やすのですから、まさに「いつ行くの?今でしょ!」だったわけです。しかも、有給休暇をくっつけて、社会人生活史上最長となる休暇を取得し、ブラジル旅行を決行しました。

35時間かけてやっと降り立った憧れの地、ブラジル。嬉しいのに身体はグッタリ。早朝だったせいもあり、空港の通路は人影もまばらでシンとしています。荷物を受け取って、眠い目をこすりながら歩いていたのですが、ある瞬間、私は今までに感じたことのないトキメキで目が覚めました。私の全細胞に「ブラジルに来た!」と感じさせた、その正体は――。

GRU Airport Sound Branding
~サンパウロ・Garulhos 空港 サウンドブランディング

無機質な空港の通路を歩く私の耳に、どこからともなく洗練されたアコースティック音楽が飛び込んできた瞬間、私の疲れは地球の裏側へと飛び立って行きました。一瞬で旅人に「ブラジルに来た」と感じさせたこの曲は、サンパウロ・Guarulhos 空港サウンドブランディングのために作られたオリジナル曲。Guarulhos空港の通路やゲート近辺で耳にすることができますし、空港内アナウンスのBGMとしても採用されていますので、アナウンスと一緒に聞こえてくることもあります。

この曲ですっかり目が覚めた私の隣を一人の男性が、♪トゥットゥルー と、メインテーマのフレーズを口ずさみながら通り過ぎて行きました。シンプル且つ記憶に残るメロディー。

「重々しく、冷たい印象のGuarulhos空港に、明るさと人間味のある優しい雰囲気を与えるサウンド」
このようなコンセプトのもとに作られたのは、インストゥルメンタルのアコースティック曲。バート・バカラックの流麗さとセルジオ・メンデスのスウィングのエッセンスを取り入れたことにより、モダンでありながらレトロな風合いを感じさせるサウンドに仕上がったのです。

日本も徐々に再び海外からの観光客を受け入れる流れになっており、国内旅行をする人も増えてきています。

そこで、日本の玄関口や主要都市の駅などで「この曲、日本的!」「この音、東京だなぁ」と感じさせるような音(音楽)、特に「イマの日本」をイメージさせるような音楽を流すことを提案したいのです(誰に?)。音の印象というのは、意外と無意識のうちに人の記憶に残るものです。

「この音を聞いた瞬間、日本に来たと感じた!」「この曲、東京っぽい」という体験をする旅人が生まれるって素敵だな、と思うのです。そして、故郷に帰ってもそのメロディーを思い出す、或いは耳にする瞬間があったとしたら、それはきっとその旅で体験した感情や感動を蘇らすのではないでしょうか。

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