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山本健吉著 『定本 現代俳句』

最近読んだ小川軽舟著『俳句は魅了する詩型』に、「僕は角川文庫で読んだ山本健吉の『現代俳句』に触発されて俳句の道に入った。」と書かれていました。

おや。この本、たしか家にあった。

数ヶ月前のオンライン定例句会で主宰が、「未読なら是非読むべき」と会員に勧めていたので購入していました。家に届いた後、ぱらぱらと読み、角川春樹を扱ったページ数の圧倒的なことに驚いて、それからあまり開いていませんでした。

わたしは句歴6年になるのに、どうも俳句の知識、俳人の知識が希薄だなと感じていたので、いま一度きちんと読むことにしました。

ふたたび読んでみて、西島麦南の句によく惹かれました。

襟巻や畜類に似て人の耳   麦南
玉の緒のがくりと絶ゆる傀儡かな
市の塵傀儡の髪にかかりけり
菊活くる水絨毯にまろびけり
映画館出て春陰の影に遇ふ
汗の瞳に吾子溢れつつまろびくる
向日葵の秋日の蕊となりにけり

生活の中に根付いた景色でありながら、作者独自の詩情があり、無理なく俳句の形に馴染んでいるところがすごく良いです。好きな俳人を見つけました。

しかしこの本のなかで健吉は「麦南の句はやはり蛇笏と同じく格調の正しい句が多いが、殻を突き破ってもう一つ自由な世界へ出てほしいと思う。」と述べていました。

褒めるばかりではない、評論家の生の声を読むことはすごく面白いものだなあと思いました。

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