第11回俳句四季新人賞最終候補者競詠
正賞受賞記念作品「草氷柱」より好きな句を。
目貼して小さな家となりにけり 犬星星人
冬帽子鶯谷に用もなく 同
初夢のいつもと同じ汽車の中 同
眠たさの空より来たり草氷柱 同
犬星さんは受賞後かなりの寄稿依頼があったと思いますが、そのすべてに新作の句をクオリティを維持したまま出せているのがすごいです。
奨励賞受賞記念作品より好きな句を。
生ハムの原木の照り三鬼の忌 内野義悠
引潮に軋むあばらや神の旅 同
向日葵の画角に海は鳴り止まず 早田駒斗
みづうみにいつときの波碇星 同
最終候補者競詠からお一人より一句ずつ好きな句を。
若衆の祭囃子の前のめり 稲畑航平
輸送機の腹開き魚卵ほどに兵 奥村京水
この家に和室はひとつ冬りんご 加藤綾那
鰯焼く命の匂ひその臭み 加藤水玉
流星や人魚らの歌はたと止む 金谷ゆかり
寺院より医院の大き秋桜 日下部太河
エプロンにアイロン長し夜半の秋 黒岩徳将
シーサーの阿形秋雨垂らしつつ 小谷由果
鯛焼の視線揃えて包みけり 後藤麻衣子
盆波が身を砕きつつひきゆけり 木幡忠文
鳰の嘴ざりがに終のひと光り 齋藤満月
ふりむけば星増えてゐる枯木道 島田由加
立ち漕ぎの足の短く雲の峰 蒋草馬
歯磨きを嫌がらぬ犬あさき春 髙田祥聖
露草や先割れてゐる栞紐 小鳥遊五月
血管を貫く固さ天高し 田村明日香
老鹿の先のみぢかき匂ひかな 塚本櫻𩵋
返り血のごとく燈を浴び佞武多絵師 つしまいくこ
石蕗咲いて捩り出したる魚の腸 常原拓
椋鳥の群混沌へかへりゆく 露草うづら
木のかげに物置くことも冬支度 冨嶋桂晃
水引の花に外連のわけもなく 楢山孝明 (※楢の字は上がV)
手花火を両手に好きなやうにする 野名紅里
消えかけて止まれの文字や息白し 平林檸檬
番ふかと思へば離れ秋の蝶 福嶋すず菜
天窓のやうな日ざしが大根に 藤井万里
ありがたき抗生物質雲の峰 藤田鹿
塗りかけのぬり絵のやうな兎かな 松尾清隆
親として読み返す本クリスマス 三島ちとせ
夜という夜太刀魚は浮いている 水口集
亀虫やシンクに鈍く映る顔 水野結雅
りんどうを写して仮名のいたましい 未補
帰りたくないと踏ん張る刈田道 杢いう子
子に添ひ寝して妻大き夜の秋 吉田哲二
藤袴蝶よりはやく雲流れ 若林哲哉
自分も最終候補者となり競詠に載っています。
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