セクトポクリット【コンゲツノハイク】(2021年11月分)より好きな句
夏手袋最上階のボタン押す 高山絵美(「いには」)
最上階には高級フレンチが。繊細なレースの夏手袋なのでしょう。
昼寝覚め年相応という難問 宮崎斗士(「海原」)
年相応って本当に難しいなと年々思う機会が増えました。ファッションとか髪型とか。昼寝から覚めたときの振る舞いかたとか。
絵と違ふ鳥の出てくる巣箱かな 進藤沙世子(「かつらぎ」)
巣箱に描いてある鳥の絵とはまったく違う鳥がでてくるちょっとした「あれ?」という気持ち。春ののどかな気分を追体験できました。
五十年抜けぬ訛や盆帰省 中山桐里(「銀漢」)
故郷にいた期間よりも、いなかった期間のほうがずっと長いのに、いつまでも故郷の訛りが抜けない不思議。五十年に重みがあります。
るあんぱばーんるあんぱばーん遠花火 光本蕃茄(「澤」)
ルアンパバーンはラオスの都市。縦書きにすると、「るあんぱばーん」の字面はまるで花火のよう。濁音や半濁音は火花、伸ばし棒は揚花火の軌跡。わたしもかつてルアンパバーンを旅したことがありました。
内臓の冷めてくる夜や蛍籠 坂田晃一(「磁石」)
内蔵が冷めるというなんともいえない感覚、わかるなぁと思いました。まるで自分が蛍になったかのような。
出港を待たず去りけり秋日傘 西山純子(「鷹俳句会」)
出港という言葉だけで海と船と人々がみえてきます。秋のちょっとさみしい気分と響き合います。
帽子ごと遺品となりぬ赤い羽根 吉田千嘉子(「たかんな」)
赤い羽根をつけているような人物像ってあると思います。単純にお人好しというだけでなく、世間体を気にしがちという面も。ぐっとくる句です。
預かりし子を日焼子にして戻す 川手和枝(「天穹」)
夏休みにこどもを預かっていろいろ体験させる施設の主人目線なのかなと思いました。わずか17音でシチュエーションを説明できていて巧みです。
ゴーヤばかりもらつてくるなお父さん 鈴木大輔(「松の花」)
ゴーヤのチョイスが絶妙です。最初はゴーヤチャンプルにして喜んだけど、そんなに料理のバリエーションもないし飽きちゃったのでしょう。
完泳の五人にバナナ一本づつ 今井聖(「街」)
一房五本のバナナをもぎ取って一人づつ渡していく景色がみえます。水泳帽と水着の濡れた体のままバナナを食べるこどもたちの姿も。
人のあと夜の来てゐる花野かな 星出航太郎(「雪華」)
人と夜を同列に扱っているところが面白いです。夜の花野の美しい場面で終わるのがよいです。
こちらのサイトから句をお借りしました ↓
また「澤」の光本さんのるあんぱばーんの句についての句評をこちらに掲載してもらいまいした(「街」の西生ゆかりさんの評の洗練されていること‥‥!)。 ↓