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池田澄子句集 『此処』

池田澄子さんは、体感的に、自分のまわりにもっともファンが多い俳人です。

どんなにありふれていると思っていた言葉でも、池田澄子さんが句にするだけで一気に輝き出します。不思議です。すごいです。

池田澄子さんの第七句集『此処』より、とくに好きな句を。

百合の香とジャズを密封してB1

手首ほそきおとこ可愛や荻すすき

輪飾りの針金ぐいと藁に隠す

振って手の水をよくきる夏鶯

虹仰ぐ顎が昔のままですね

無花果や自愛せよとは何せよと

二礼二拍手手袋を買うつもり

雪国の雨の駅前商店街

冷蔵で供花着くメッセージも冷えて

海近き河の平らや揚花火

迎え火に気付いてますか消えますよ

この家も遺影は微笑ささめ雪

今夜あたり泣くかもしれぬ春の風邪

一月一日喪中の壜詰のイクラ

鴨帰る残った方がよいのでは

ショール掛けてくださるように死は多分

生き了るときに春ならこの口紅

池田澄子さんの句集を読んだ後に句作をすると、ここちよい(と自分が思っている)字余りの句をかなり作ることができます。それほどに影響力のある句集です。

作者のキュートな人柄が溢れ出ている句にキュンとしたり、自然体で死を見つめる句にズウンとしたり、読めば読むほど味わい深い句集です。

個人的には

雪国の雨の駅前商店街

が一番好きです。常に雪か雨かで濡れている雪国の雰囲気が端的に表現されていて、雪国育ちとしてはとても懐かしい気持ちになりました。




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