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西村麒麟句集 『鷗』

『鶉』『鴨』につづく西村麒麟さんの第三句集。『鶉 新装版』のときも思ったが、「港の人」の本は装丁がかっこよくて本の作りがしっかりしている。

結社「麒麟」を立ち上げる以前と以後で章がわかれている。

笑える句、おもしろい句が多いのが嬉しい。読んでいると心がリラックスして、俳句を作りたい気持ちが湧いてくる句集だ。

とくに好きな15句。

手で顔を触り蛙でありしこと
照明の暗きが優し春の家
桜餅そのまま昼の酒となり
箱寿司は箱の中より出たがらず
鯛焼をかたかた焼いて忙しき
書初や我より大き紙の中
鯉こくは骨又骨や春の月
草餅や眠たき時の涙が出
形代に確かな襟のありにけり
虫売やすぐ死ぬ虫の説明も
雛納め笛をするりと抜いてやり
花見客墓の方より来たりけり
蠅叩二本を巧く使ひ分け
秋の雲三頭身のよき仏
猿曳や猿の背中をそつと押し

西村麒麟 『鷗』


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