見出し画像

蒼海25号 好きな句

蒼海25号は2024年10月刊行。

会員作品から好きな句を挙げる。

ゆきゆきて鏡の間あり春の夢 福田健太
チューリップ散り切りしとき風に立つ つしまいくこ
蝶になりそこねて蝶を追うことに 加留かるか
老いし母平らに雛を並べけり 種田果歩
島削る那由多の波よ涅槃西風 坂本厚子

蒼海25号 巻頭

傘立てに傘は蕾や大試験 武田遼太郎
立子忌のどんどん伸びるつくしんぼ 牟苑濁布
 遺されしウイッグを焚く花のころ 鈴木トモオ
湯がかるる筍の香の日向めく 羽奈あかり
いくすじの汗は怒りへ祈りへと 浅見忠仁
白魚のかさなりあひて色なせり 河添美羽
 花冷えやポテトフライの端みどり 小谷由果
スナックの出窓に小さき鯉のぼり 白山土鳩
ひと粒の雨に花見を切り上ぐる 杉澤さやか
 飴も鞭も投げ捨て送る卒業子 浜堀晴子
充電器束ねられ韮立てかけられ 早田駒斗
梅に似たものを見てゐる梅見かな 福田小桃
餡に溺るる蟹玉や春灯 曲風彦
桜からすこし離れて話し出す 正山小種
花曇り皮のぶあつき水餃子 柴田美玲
つつかれて渋々座る花筵 霜田あゆ美
穴気分抜けず蛇穴出づれども 中島潤也
カレー粉の震へる書体春淡し さとう独楽
縁日で買ひし銭亀まだ鳴かぬ 国代鶏侍
御水取最後に星の燃ゆるなり 柘植麻子
天と地と等しく淋し雪間草 犬星星人
ポケットにちびた鉛筆野に遊ぶ 谷けい
新社員道の真中に立ちにけり 弦石マキ
口中を水となりゆくレタスかな 倉下碧女

蒼海25号

つづいて主宰句と招待作品より。

玉虫のぶつつかる窓煌めきぬ 堀本裕樹
孑孑は簀巻きのごとくもがきをり 堀本裕樹

主宰作品「簀巻き」

扇風機猫を離れて亀を向く 黒岩徳将

招待作品「祭」黒岩徳将

つづいて第5回蒼海賞。正賞は塚本櫻𩵋さんの「山の黙」。誰にも似ない格好いい30句。櫻𩵋さん、おめでとうございます。

山肌は神の肌なり草いきれ 塚本櫻𩵋
釈迦の手の肉ゆたかなる夕立かな 塚本櫻𩵋
猪肉の脂もて火を怒らしむ 塚本櫻𩵋

塚本櫻𩵋「山の黙」

準賞は杉澤さやかさん。奨励賞はつしまいくこさん、すずきなずなさん、種田果歩さん。奨励賞までは句の抜粋が掲載されている。(願わくば佳作までの作品は30句すべて載せてほしい…!)

中空のはち切れんほど囀れり 杉澤さやか
なはとびの引つかかりたる帽のつば 杉澤さやか
背泳ぎの顎引き寄せて泣いてゐる つしまいくこ
蛇の衣のごとく浴衣を脱ぎ捨てし すずきなずな
右足を斜面にかけて蕨採る 種田果歩


いいなと思ったら応援しよう!