セクトポクリット【コンゲツノハイク】(2021年12月)のすきな句
二科展やつぶして食ぶる目玉焼 村上瑠璃甫(「秋草」)
二科展をみてきたあとでは、目玉焼きをつぶして食べることにもアートを感じてしまいそうです。どこか前衛的な行為にも感じられてきます。
炎昼や指透くまでに手を洗ひ 本村美香子(「櫟」)
執拗に手を洗うというこの時代特有の行為を「指透くまでに」と表現したところが巧みです。力強い季語もよい取り合わせです。
焼酎を湯に割るWebカメラ死角 町田無鹿(「澤」)
オンライン飲み会で焼酎お湯割りを飲んでいることをメンバーに知られたくないのでしょうか。(まさか在宅ワーク中ということはないと思いますが‥‥。)自宅なのに「死角」と言っているところが好きです。
折つて折つて絞る軟膏みんみん蟬 篠崎央子(「磁石」)
顔を真っ赤にして指先にありったけの力をこめて軟膏を絞り出す。この煩わしさとみんみん蟬の声の暑苦しさとが響き合います。蛇足ですが軟膏絞り器という便利なものがあります。
色鳥やピアノ開けば紅き布 藤田直子(「秋麗」)
先日テレビでピアノの赤い布を見て、一句にしたいなと思っていたのですがわたしの技術ではうまくできず。こうしたらよかったのか!と思いました。「ピアノ開けば」の見事さ。
乗継のバスターミナル林檎買ふ 半田貴子(「鷹俳句会」)
特産品を売っているバスターミナルなのですね。旅の帰りと思いますが、林檎はそこそこ重さもあるのでバスの旅では存在感が強そうです。想像では作ることができないであろうリアリティーが見事。
アロハ着てしみじみ失せし力瘤 西川無行(「たかんな」)
陽気で若々しいアロハシャツによってひきたつ肉体の衰え。しかし「しみじみ」という表現におかしみがあり、飄々とした気持ちで老いと向き合う姿が素敵です。
完敗の日の完璧なマスカット 成田一子(「滝」)
一体何に完敗したのかのヒントが一切ないところが新鮮で面白いです。カの音のはきはきした響きから完敗のすがすがしさを感じます。
めいめいの皿にうつすら梨のみづ 大熊光汰(「南風」)
めいめいの取り皿に残る梨の水分。梨を食べたあとも話を続けている何人かが見えてきて、おだやかで清潔な空気を感じます。
ヨットゆく海のファスナーひらきつつ 進藤剛至(「ホトトギス」)
ヨットの軌跡を「海のファスナー」と表現するとはなんと大胆。一歩間違えばJPOPっぽい表現になりがちですが、端正な俳句の力によってバランスよく仕上がっていて見事と思いました。
デイサービスのバスより睨む母残暑 有村悠子(「街」)
なんと言っても「睨む」がすごいです。なかなかハードな場面ですが同時に「あぁ睨んでる睨んでる」と冷静に母をみている作者の姿が想像できて俳味もあります。
AIの俳句を盗む子規忌かな 石川夏山(「楽園」)
いや盗んではだめでしょう。しかしAIは盗まれたからといって怒ったり傷ついたりはしないか。でも子規忌だしやっぱりだめです(笑)
↓ こちらのサイトより句をお借りしました。
篠崎さんの句の鑑賞をこちらに掲載していただきました↓