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能村登四郎全句集⑩ 『菊塵』
能村登四郎の第10句集『寒九』は、平成元年、登四郎78歳のときに出版されました。収録句数は426句。第9句集『寒九』から2年での出版です。
あとがきには「俳句も自然な生理作用のように知らぬまに出来るようになった。」とあります。
俳句を続けて長生きしてこの境地までいってみたいものです。
好きな句を挙げます。
指名にただ手を振るのみの年忘れ
走り出して遠足の列伸びつぱなし
歯を抜きしといふ顔に逢ふ花の午後
今にある朝勃ちあはれ木槿咲く
肩ほぐされて十六夜になじみけり
贋の歯を口に棲はせ神の留守
あたたかき夜食の後の部屋覗く
ひと廻り顔を小さく風邪癒ゆる
火付役逃げ腰に野火放ちけり
泪もろくて鶯餅の粉こぼす
雛壇の緋にも疲るる齢かな
紐すこし貰ひに来たり雛納め
もの焚いてゐて花守と思はるる
夏掛けのみづいろといふ自愛かな
名を書いてより形代の威のうすれ