長嶋有句集 新装版『春のお辞儀』
句集を読んでいるうちに、つぎからつぎへと句ができることがあります。無意識レベルから俳句のネタがひっぱりだされて、それが575に近いリズムで頭のなかに浮かんでくるようなイメージです。句の出来は置いておいて、それはまるで句作ホイホイです。
わたしにとって句作ホイホイ状態を引き起こす句集のひとつが、長嶋有さんの『新装版 春のお辞儀』です。
句の背景にあるのは、現代のごくふつうの暮らし。かなり笑える句が多いのも特徴です。
とくに好きな句を。
見られれば歌うのやめる寒の明け
顕微鏡の中は明るし半夏生
雲の峰中古車売場の旗千本
エアコン大好き二人で部屋に飾るリボン
夏服で楽譜めくってあげる役
ブランコしか座るところのない冬日
かっこいいスポーツカーに顔映す
哀しい目にしか作れない雪達磨
大きなビルから一人でてきた春光
青嵐誘拐犯人のモシモシ
六月や美容師みんな痩せている
水筒の麦茶を家で飲んでおり
夏シャツや大きな本は置いて読む
大人になったらつかぬはずいのこづち
傷のないピアノ蛙の目借時
長嶋有さんは2019年度のNHK俳句の第2週の選者でいらっしゃったのですが、その放送回が全部面白くて、私的年間ベスト句をまとめました。こちらです↓
https://note.com/chika158cm/n/n481a501ee71a
NHK俳句の2020年度があと2ヶ月で終わろうとしているいまでも、長嶋有さんのNHK俳句は桁違いの面白さだったと思っています。(またいつかやってほしいです……!)