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第12回俳句四季新人賞最終候補者競詠

絵を外し湖央の舟の心細 関灯之介
蝶番つぎの蝶番へ開き 同
いのちみじかしと河口へ花束を 同

以上、新人賞受賞記念作品より。

以下、奨励賞受賞記念作品より。

桜貝海はふくらみつつ眠る 加藤幸龍
山蟻の泳ぎ疲れたやうな貌 同
源五郎あぶくと逆に進みけり 中西亮太
大福の粉のぶ厚き業平忌 同
箱庭の目のなき四人家族かな 同
男の子プールキャップに目の吊られ 同

最終候補者競詠より、おひとり一句ずつ。

くちぶえを追ふくちぶえや秋の昼 綾竹あんどれ
器からあふれてみどりいろは波 池田宏陸
寄居虫の脚開きつつ殻を出づ 稲畑航平
病床に常の天井雨の月 うっかり
猿酒振ると浮くこの成分は何 大熊光汰
青空を漉き込んでゐる秋の雲 小川たか子
小鳥来るレゴブロックの黄は余り 尾内甲太郎
絨毯を捲れば鍵のありさうな 加藤綾那
硝子戸に冬至界隈よく映ゆる 加藤右馬
ホチキスは冷ゆペン立てを浅く跨ぎ かむろ坂喜奈子
こんじきの車いす来よ馬肥ゆる 北口直敬
はつふゆの大きい鳥を見にいこう 小林鮎美
水は陸棄て嘴のつくり鳴き 斎藤秀雄
翻訳に草の実ほどの嘘があり 高橋真美
あやとりの固き結目石蕗の花 舘野まひろ
秋扇ゆつくりたたんでも軋む 田中一学
川の底突きて進める螢舟 塚本櫻𩵋
起きぬけの貌して蛙抱く蛙 露草うづら
乳白にのぼる満月シャーレめく 富田圭香
話すともなしに葡萄をつまみけり 中西恵
切株をのぼりつつある茸かな 野城知里
綿虫を呼び寄せかくも眠くなる 柊月子
秋夕焼ホースの水の暴れだす 姫野みさき
桔梗見て桔梗の部屋に戻りけり 藤井万里
山崩れたるかに糞りて馬肥ゆる 古田秀
海をしてきた尾羽からつばめつばめ 細村星一郎
教室の一灯失せし昼の虫 前田拓
朝焼や塩溶けきらぬ塩むすび 真帆
月酢ゆし雪の小面波打つも 未補
カーネーション今が家族の青春で 杢いう子
靴擦れを隠し踊り子は蟹になる 本村早紀
年の暮プラスチックは浮遊せる 森川雅美
草の花努力賞にも表彰状 山川太史
鷺ずつとゐる虫売もずつとゐる 山口遼也
ストーブに集ふ家族や最後は父 吉田哲二
おれ達のでつかい声が傷の秋 吉富快斗
木目濃き兜太の机大花野 渡部有紀子



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