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松本てふこ句集 『汗の果実』
2019年11月の文学フリマ東京で購入した、松本てふこさんの句集『汗の果実』。ご本人が販売されていて、リクエストした一句を書いていただきました。
現代的な句材、ほどよいユーモア、俳句らしさを生かした無理のない詠みっぷり。自分の目指す俳句の答えがすべてこの句集にありました。この句集を前にして、わたしはこの先なにをどう詠んだらいいのだろうか……というのが、この句集を読んだときの一番の感想でした。
「つくらない句会」でも毎回大人気の松本てふこさんの句。人を惹きつける力がずば抜けていて、推すひとも選ぶひとも多いのが特徴です。
『汗の果実』よりとくに好きな句を挙げます。
おつぱいを三百並べ卒業式
花人や社畜社畜と笑ひ合ひ
問ひかける言葉ばかりの賀状書く
ぐんぐんと風邪にかたむくからだかな
常夏や機体に太きアラブ文字
回りつつ浮くレコードや梅日和
てふてふにうすき砂丘の空気かな
春寒や横抱きにして米袋
冷奴頼むさつさと口説かねば
夕立の匂ふ包帯ほどきけり
叩く叩く見る叩く見るごきぶりを
三十六度五分の闇あり姫始
帰らねばみるみる苦くなるビール
よそ者として一心に踊りたる
空高きことにも触れて弔辞かな