セクトポクリット【コンゲツノハイク】(2021年9月分)の好きな句
芒種かな葉の中の葉の揺れやまず 対中いずみ(「秋草」)
芒種は二十四節気のひとつで6月6日ごろ。種まきの季節であり、そろそろ梅雨に入るころ。葉の中の葉というミクロな視点が見事です。
君の出すチョキはピストル石鹼玉 伊澤やすゑ(「閏」)
通称田舎チョキです。「ピストル」という言い方にノスタルジーがあります。季語「石鹼玉」も幻のようで好きです。
口開けしまま畳まれし五月鯉 寺杣啓子(「円虹」)
こいのぼりが畳まれる様子を見ているところがいいと思いました。口が開けたまま仕舞われるこいのぼりにすこし哀しみを感じます。
湖を鋼と思ふ花火かな 牛田大貴(「群青」)
夜の湖と花火との取り合わせで、大きな景色が見えてきます。暗くて大きな湖を「鋼」と表現したところがすごいです。
ワクチン予約にファンクション・キー連打夏 森 美代子(「澤」)
セクトポクリットの「澤」の句には時事を取り込んでいる句がいつも多いように思います。畳み掛けるような表現が、連打の様子にも思えてきて実感があります。
野遊びの行き着くところ水車小屋 山本洋子(「青山」)
なんてことない水車小屋が目的地になっているところに牧歌的な雰囲気を感じます。心が癒やされる一句です。
夕立中原爆ドーム渇きをり 大野潤治(「鷹俳句会」)
夕立の中にあるので実際にはぐっしょりと濡れているのでしょうが、「乾いている」という表現から、ひどい火傷を想像しました。当事者でなければ正確に読み解くのは難しいかもしれませんが、シンプルで力のある一句。
白きものさらりと乾く麦の秋 藤田千恵子(「たかんな」)
白いシャツかシーツか、薄手の生地がはたはたと風に揺れている様子が想像できます。ぐーっと視点が広がる下五の季語「麦の秋」が抜群に気持ちいいです。
これ以上開くのは無理チューリップ 今市美代子(「田」)
思わず笑ってしまいました。「無理」という、いまどきの口語をうまく一句にとりこまれていると思いました。
一人居の雨を楽しむ新茶かな 岡原美智子(「南風」)
雨と新茶の取り合わせが新鮮です。そして一人居の雨を楽しむという発想が素敵で好感を持ちました。
こちらのサイトより句を引用いたしました。↓