セクトポクリット【コンゲツノハイク】(2022年1月)のすきな句
母の忌の上座に叔母や菊日和 高松由利子(「火星」)
一族の関係性が見えてくるところがうまいです。季語が明るいので楽しくお母様を偲んだのでしょう。
妻慌てごきぶり更に慌てたる 森崎健二(「かつらぎ」)
人間はごきぶりよりも圧倒的に強い存在だということをときに忘れてしまいます。冷静に見ている夫の目が可笑しい。
絨毯の柄を見てゐる土下座かな 田島実桐(「銀化」)
土下座俳句です。「絨毯の柄を見てゐる」という淡々とした描写によって土下座を追体験したかのような気持ちになります。
一等は鉛筆五本鵙日和 高野清風(「雲の峰」)
五本一組になった鉛筆あったなぁ!となつかしい気持ちになりました。アイテムのセレクトが秀逸です。こどもの頃の地域の運動会を思い浮かべました。
衰へてより鶏頭に近づかず 牧辰夫(「香雨」)
鶏頭はパワーが強すぎて、衰えているひとには毒になってしまいそうです。新しい視点で鶏頭を描いてみせた句。
逝く夏の汝がくちびるは雨の味 榮猿丸(「澤」)
くちづけしたくちびるが雨に濡れていたのですね。「雨の味」の表現の切れ味に痺れます。「逝く」もかっこいいです。
利酒やカラヤンのごと目を瞑り 藤栄誠治郎(「天穹」)
この比喩は実に的確で見事だと思います。クラシックがBGMで流れていそうです。
湯上りの下駄や線香花火買ふ 塚本武州(「ホトトギス」)
湯上りに下駄を履くことも、セットじゃない花火を買うことも現代のわたしたち生活ではなかなかないことです。温泉街に泊まったときの景色かなと想像しました。あるいは古き良き時代を思い出して。
窓を見て窓の向うの時雨かな 斉藤志歩(「むじな」)
作者が見たかったものは窓の外の景色ではなく、窓自体です。窓を見たら「あ、雨が降っていた」と思う作者。平易な表現ですが実に不思議な句です。
夜業の二人不定期に笑ひ合ふ 竹内宗一郎(「街」)
定期的に笑うほうが不自然であって、不定期に笑い合うのはむしろ自然なのですが、句として「不定期に」とかかれると不穏な空気を纏うところが面白いです。
こちらのサイトより句を抜粋しました ↓
また、ホトトギスの塚本武州さんの句へのわたしの鑑賞がセクトポクリットさんのサイトにも載っています↓