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ここ最近で1番幸せだった日。
先日、私の地元京田辺から車で1時間ほどの南山城村で、ランチしてきました。
山の上の、旧保育園を活用した「山のテーブル」。
ここで過ごした3時間が、ここ最近で間違いなく、1番幸せな時間でした。
そんな山のテーブルでの食体験についてお話しします。
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「ほんまにこの先にあるん??」て心配になるような山道をどんどん登って行った先に、突然現れる寂しげな保育園の園庭。
建物にはあたたかい明かりが灯っていて、13:30からのコースを予約していた人が園庭で待っていました。
時間になったら、保育園だった建物の真ん中にある1つの大きな木のテーブルに、全員横一列に園庭を向いて着席して始まります。
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最初に、お茶とお菓子を担当される桝本さんが朝散歩中につんできた野草の食前茶が出てきました。野草のお茶、、?と少し身構えながら口に入れると、ミントの香りと、シソかな?なんだか知っている味がする温かいお茶に、ソワソワしていた心がほっと緩みました。
そこから前菜、汁物、冷菜、主菜と続くのですが、全部中身をお話しちゃうともったいないので、そこはその日時間を共にした8人のお客さんだけの秘密にします。
お料理は言うまでもなく、どれもとても美しく、シンプルで、素材の美味しさを最大限に引き出したような、優しいものでした。
食材は全て近郊の、顔の見える生産者さんのものを選ばれています。
今、ここにあるものを味わう料理。だから、また同じメニューは出せないそうです。
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山のテーブルのコースは3時間と、かなりゆっくりです。
毎回お料理を担当される對中さんが、キッチンから出てきて、前で盛り付けをされます。
次はなんだろう??とワクワクしながらそれを眺めたり、今味わったお料理の余韻に浸ったり、みんな違うお皿の美しさに見入ったり、お皿を下げる桝本さんと言葉を交わしたり、移ろいゆく外の空模様をぼーっと眺めたり、、、
携帯を手放して、思考を手放して、ただゆっくり、穏やかに待ちます。
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どのお料理もとても心に残るものでしたが、私が特に感動したのは、土鍋で炊いた今年の新米でした。
ああ甘い。白ご飯がこんなに美味しいなんて。こんなに優しいだなんて。
そういえば私は最近、仕事で小麦ばかり口にしていて、白ご飯を食べるのが久しぶりでした。
こんなにも美味しいお米を食べられて、日本に生まれてよかった!と心から思いました。
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最後は、季節の茶菓と、南山城村の無農薬初摘み新煎茶の自家焙煎ほうじ茶で締めくくります。
お茶で始まり、お茶で終わる。お茶の産地である南山城村らしいコースでした。
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食事を終えた時、なんともいえない、穏やかで、この上なく幸せな、ふわふわした気持ちになりました。
食べた、というよりも、この時間と空間を味わった、という感覚で、来た時より心も身体も軽くなりました。
こんな幸せな感覚は、いつぶり?というか、初めてだったかもしれません。
ああ生きている。ありがとう。幸せだ。そう自然に思えている自分にほっとしながら、ああ、私は最近疲れていたんだ。と気づきました。
いかに普段、せっかちで、考えすぎで、狭い世界に入り込んでいたか。。。
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今、ここにある自然の恵みを味わう。それこそが大地と繋がるということ。循環するということ。
以前紹介したアリス・ウォータースの著書にもあったように、人間も大地に根を張る植物と同じだから。生態系の一部だから。
特に、自分の生まれ育った土地近辺のものを身体に取り込む。それが最も自然で、身体に優しい営みなのではと思います。
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山のテーブルを営む對中さんと桝本さんのお二人は、料理や飲食の経験はなかったにも関わらず、流れるように偶然たどり着いたこの場所で、今を自分らしく生きておられました。
私も、もっとシンプルに生きよう。
気張らず焦らず考えすぎず、ゆっくり穏やかに。誰とも比較せず、自分の内側をみつめて。
不自然に強引に抗おうとせず、流れるままに。
ここにあるものを活かして。
決して生き急がず。
人生なるようにしかならないのだから。
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こうして、3時間の瞑想のような食体験を通して、とても大切なことを思い出させてもらいました。
心も身体も健やかに、穏やかに生きるには、自分が1番自然な状態でいられる場所で、その土地のものを取り入れて、流れるように生きること。
私にとって自然な状態とは、やはり生まれ育った京田辺、山城地域、京都で、その土地のものを食べて、大地と繋がって、それを未来に紡いでいくこと。担っていくこと。
この理想に、強引にではなく、自然に近づいていけるように、もう少し肩肘張らずに、ゆっくり生きていきたいなと思った今日この頃です。
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