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孤独が希望に変わった日|通信制高校で初めて友達になったナナミの話
通信制高校に通い始めた頃、私は自分の居場所を見つけられずにいた。
全日制の学校では、授業中も休み時間も友人と共に過ごすのが当たり前だった。それが通信制になると、教室に毎日通うことはなく、スクーリングという短い期間で授業を受けるだけだった。最初の頃は、その自由さに感謝しつつも、どこか孤独を感じていた。新しい出会いもほとんどなく、友人を作る機会もない日々が続いていた。
そんなある日、私の生活に転機が訪れた。初めてのスクーリングの日、私は緊張しながら教室の扉を開けた。教室内にはすでに数人の生徒が座っていた。どこか浮いているような気持ちを抱えながら、私は空いている席に静かに座った。そのとき、隣にいた少女が話しかけてきた。
彼女の名前はナナミ。同じく通信制に通い始めたばかりだったという。彼女の明るさに少し戸惑いながらも、私は彼女の差し出した手を握り返した。それが、私とナナミの出会いだった。
ナナミはとにかく個性的だった。初めて会ったその日から、彼女は自分の考えや感情を包み隠さずに表現する人で、いつも驚かされることばかりだった。
彼女はアートに熱中していて、教科書の端やノートの隅に独特な絵を描いていた。絵のタッチはどこか不思議で、見ていると心が引き込まれるような感覚があった。そんな彼女が「いつかはプロのアーティストになりたい」と言っているのを聞いたとき、私は本気なのかと驚いた。夢を追いかけることがどこか非現実的に感じていた私にとって、ナナミのその情熱はまぶしくもあり、遠い世界の話のように思えた。
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ナナミとの交流が深まるにつれて、私の考え方は徐々に変わり始めた。最初は自分に自信がなく、ただ授業をこなすだけの毎日だったが、ナナミは私に「自分の好きなことにもっと時間を使ってみたら?」と提案してくれた。彼女自身、アートに対して全力を注いでおり、その姿勢は私にとって刺激的だった。私は、今まで興味はあっても真剣に取り組んでこなかったことに挑戦する勇気を持つようになった。
ナナミと一緒に過ごす時間が増えるにつれて、私も自分の好きなことを見つけていった。
絵を描くのが得意なナナミに影響を受け、私は物語を書くことに挑戦し始めた。
もともと本を読むのが好きだったが、今度は自分で物語を作り出す楽しさに気づいた。放課後、ナナミと一緒にカフェに行き、彼女はスケッチブックを開き、私はノートを広げる。彼女は絵を描き、私は物語を書いた。その時間が何よりも楽しく、自由な時間だった。
ある日、ナナミは突然、「一緒に作品を作ろう」と提案してきた。彼女が描くイラストと、私が書く物語を組み合わせて、何かを作り上げるというアイデアだった。私は戸惑いながらも、その提案にワクワクした。自分の物語が彼女の絵と合わさって一つの作品になるなんて、考えたこともなかったからだ。
そのプロジェクトは私たち二人の楽しみとなった。彼女は物語に合わせて美しいイラストを描き、私は彼女の絵にインスパイアされながら物語を書き進めた。完成したとき、それは私たちにとって一つの大きな達成感だった。通信制高校の教室で会った日から始まったこのコラボレーションは、私たちの友情をさらに深め、私自身の人生にも大きな影響を与えた。
ナナミとの出会いがなければ、私はおそらく今も自分の道を見つけられなかったかもしれない。彼女は自分に素直で、夢に対して真っ直ぐだった。その姿勢に触れることで、私も自分の本当の気持ちに気づき、好きなことに対して素直に向き合う勇気を持つことができた。
卒業後、ナナミは美術大学に進学し、私は文章を書く道を選んだ。お互いの道は違っても、私たちは今でも定期的に連絡を取り合い、互いの進捗を報告し合っている。あの通信制高校での出会いが、私の人生の大きなターニングポイントだったことは間違いない。
ナナミとの出会いを通して、私は自分が本当にやりたいことを見つけ、それを追いかける大切さを知った。通信制高校に通っていたあの頃は、どこか孤独を感じていたが、ナナミと出会えたことで、その孤独は新たな希望と変わった。
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