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崩れた塀を直してください【平和に暮らしたい】

お隣の工事は着実に進んでいます。
連日大型重機による解体工事で、騒音と埃と揺れに頭を悩ませる日々に、在宅ワークをしている長男が、遂に怒りを爆発させて、「仕事にならない」と在宅から出社に切り替えました。
音よりも埃よりも、何より辛いのは揺れ。元々地盤の緩い湿地帯だったこともあり、とにかく揺れます。もうずっと揺れているので、船酔い。地震にすら気づきませんでした。
まあ、それでも違法ではないお隣の工事には何も言えません。しょうもない日本の法律。

解体からおよそ10日がすぎた頃、事態は一変することに。なんと、揺れと同時に、地境に建てた塀(我が家の敷地内)が目の前でガタガタと崩壊。
工事現場の方が、一旦手を止め様子を見ています。空いた隙間からはお隣が丸見えです。
これはどう考えても、あちら側から連絡が来るのだろうと待ってみることに。小一時間が経過して、工事は再開、連絡は来ず。
痺れを切らし、こちらから連絡をすると、営業担当者がやってきました。
「これは本当に今ですか?以前の地震とかの影響では?」
「違います。目の前で今崩壊しました。」
「本来はここだけ補修なんですが。折半で。」
は?なんと?言っている意味がわからず、もう一度尋ねてみましたが、
「本来は、そちらの所有地のものですから、そちらで修繕するものですが、半分は出してもいいと、オーナーさん(お隣さん)が言っています。」
「元々この塀は、お隣さんの強い要望があって、無理して危険なのにこの高さ(1.8メートル)にしたんです。境界線の真上に建てて折半でと申し出たが、お隣は、うちの敷地に全額こちら負担で建ててほしい。壊れて次建てる時はその逆にするという口約束の元ですよ。」
担当者は、この話を一度持ち帰ると、帰って行きました。

翌日、今度は工事現場の責任者と2人でやってきました。
「オーナーは折半しますと言ってくれていますから、それでどうでしょうか。本来は、オーナーが出すものではないんですけどね。そらから、今の壁を建てた時のやり取りは何も記憶がないそうです。書面での記録もないですし、証拠は何も無いということでした。」
あくまでも強気だ。

「そもそも、壁が壊れて現場が止まった時点で現場から報告を受けなかったのでしょうか。こちらから連絡しなければ、こうして訪問されることもなかったのでしょうか。何故被害を受ける側から声を上げなければならないのでしょうか。」
現場責任者は、深々と頭を下げて、
「そこはおっしゃる通りです。申し訳ありませんでした。しかし一般的には、工事の影響で破損した場合、破損部分だけを簡単に修繕して終わります。それを今回は、オーナーさんが半分お金を出すと言っているので、そこをりかいしてください。」
と、言いました。私はひとつ質問をしました。
「では、もしもこちらが連絡をせず、このまま工事が進み、崩れた塀で誰かが怪我をしたら、私たちはその責任を負わなければならなくなりますか?」
「それはそうですね。そちらの建物によって怪我をするわけですから。」
どうにも納得がいかない。ずっと沈黙していた夫は、
「これまで散々申し出をして、こちらから何度となくお願いをして、常に持ってくるのはゼロ回答。口約束だろうが、次に壁を作る時は、お隣さんが建てる約束をしたんだから、こればっかりは譲れない。お金の問題じゃなく、気持ちの問題なんだよ。」
大きな声を上げました。私は夫に続けました。
「この問題は、壁を壊せば、はい、解決。ということではないんです。お日様の問題も工事の騒音も揺れも、全部私たち家族の中に残ります。そうすると、その完成した集合住宅に暮らすお子さんがちょっとしたいたずらをしただけでもこの嫌な感情が蘇ってしまうんです。その人が悪い人でなくてもです。私たちはここにこれからも暮らします。ご近所トラブルを無くしたい。そのためには、お隣さんに、法律とか一般論とかではなく、人道的なもう少し優しい対応をしていただきたいんです。」
夫はもう一度
「絶対に譲りたくないよ。お隣さんにそう言ってくれ。」
そう言って、担当者と現場監督に帰ってもらいました。

私たちはもしかすると『クレーマー』なのかも知れません。クレーマーと思われてでも、伝えるべきことは伝えようと思っています。
結局、その日の夜に、担当営業さんから連絡があり、工事による損壊を認めて、全額先方負担で週明けに全面修繕をしてもらうことにしました。

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