<全3回>「究極の酒器作り~井戸・青磁編~」体験レポート(その2)
2.2019年12月8日(日)釉薬掛け
前回の反省を活かし、今回は大船駅でおにぎりを買ってから「特急踊り子号」に乗車。前回より少し早い時間だったせいか、大船からの自由席はそこそこ混んでいた。といっても、座れないほどではなく、小田原あたりでは少し空いてきて、車窓も一段とのどかになったので、景色を眺めながらおにぎりを頬張る。この日も前回に続き、とても良いお天気で、前半は列車の右側の窓際で冠雪が真っ白く美しい富士山を眺め、熱海を過ぎたあたりで席を移り、左側の窓際で海を眺めながら伊豆熱川へ。2回目だったせいか、前回よりは道中、短く感じた。
伊豆熱川駅で他のメンバーと合流し、タクシーで菱田さんのお宅へ。伊豆熱川豆知識ですが、伊豆熱川駅を拠点としているタクシーは2台しかないらしいので要注意。今回は運良く、あまり待たずに乗れたけど、運が悪いと何時間も待たされるそうです…。
閑話休題。到着するとすでに菱田さんが素焼きしてくださった我々の器たちが外のテーブルの上に並べられており壮観。みんなたくさん作りましたね…。ザブトンと呼ばれる自分の器がわかるようマークされた目印を頼りに自分の作品をピックアップ。私は片口が目印になりすぐに発見できました。今回は素焼きの段階で割れた器はゼロということで、一安心!
まずは紙やすりでバリと呼ばれる凸部を削り滑らかにし、高台がピタリと平らになるよう(ぐらつかないよう)しっかり削る。はじめは、作業中に割りそうな気がして、恐々と削っていたけれども、特に口に当たる部分はここでしっかり滑らかにしておかないと不快なので使わない器になっちゃうよ!とのことで、念入りに削る。
また、口が当たる以外の箇所でも、バリをしっかり取らないと、洗う時にスポンジが引っかかったりするので要注意!と先生からのご指導。確かに!作っている時には思いつかないけれども、実際に使うとなれば、そうした些細な不便(菱田さん曰く、「ちょっとしたイヤだなぁ…ってかんじ」)が不使用に繋がり、不用になっちゃうんだなぁ、と気づきました。器は用の美である、ということを再認識。
そして、バリをきれいに取り、水に浸したスポンジで削りカスなどをきれいに拭い、いよいよ釉薬をかけます。まずは井戸の釉薬から。
すでに丁度良い案配の濃度になっている釉薬(もちろん菱田さんがご準備くださった)を、刷毛で手早く全体に塗る。井戸の特色であり魅力でもある「かいらぎ」(1で前述のとおり、刀剣の柄に巻くエイの皮を「梅花皮(かいらぎ)」と言い、その表面に似ていることから「かいらぎ」と呼ばれる)を出す箇所には釉薬を厚めに塗る。全体としては、井戸の釉薬は薄目にかけてある方が美しいのだそうだ。
…ということで、井戸については手早く施釉を終了。
続いて、青磁の施釉に取り掛かる。こちらは急に難易度アップ。
まず、薄目と濃い目と、濃度の異なる2種類の釉薬をご用意いただいた。薄目の釉薬は二度掛け。濃い目は一発勝負。施釉の方法も井戸とは異なり、刷毛ではなく、右手で柄杓を用いて、左手で器の高台を持ちながら回し掛けていく。菱田さんはいとも容易くくるりときれいに回し掛けているのだが、いざ、自分でやるとなると手首が滑らかに回らない…。柄杓を持つ手は動かさず、器を回す!と説明され、頭では理解するものの、結局、頭と手が支離滅裂となり、ぎこちなく器に釉薬がどぼどぼと零れ落ち、まったく先生のようにスムーズにいかない…。結果、薄目の釉薬にも関わらず、かなり厚塗りになってしまった…。しかし、もう掛けてしまったものは元には戻らないので、あとは焼かれて完成するのを待つほかない。
そんなこんなで、昼頃から夕方まで楽しく作業。参加者は三々五々集合し、それぞれのペースで作業。真剣ながらも和やかな時間で心地良かった!
アトリエで菱田さんちの猫さんが睨みをきかせておりました。私たちの作品を焼いていただく窯も拝見!
作業終了後、菱田さんご夫妻と参加者の有志で、伊豆熱川の海沿い絶景ローケーションの磯料理にて懇親会!酒器を持参したり、日本酒を持参したり…というのは想定の範囲内でしたが、なんと、お燗をする酒燗器を持参する猛者までいて驚き…。さすが、「ふしきの」のイベント!
皆で楽しく酒談義、器談義などに花を咲かせつつ、酒宴はお開き。
次回はいよいよ、完成した自分たちの酒器での酒宴@「ふしきの」。今日、釉薬をかけた灰色の器が、炎の力でどのような美しい色に変化するのか楽しみで仕方がない。