月イチ読書 「もがいて、もがいて、古生物学者!!」
月イチ読書
「もがいて、もがいて、古生物学者!!」
著者:木村由利(国立科学博物館) ブックマン社
☆国立科学博物館特別展「化石ハンター」にて購入
先日、恐竜マニアのムスコくんと、上野の国立科学博物館特別展「化石ハンター」に行ったときのこと。
化石そのものよりも、化石発掘を巡る先人たちの冒険にフォーカスした、やや異色の特別展でした。で、併設のミュージアムショップでムスコくんが「コレ買ってほしい」と手に取ったのが、この「もがいて、もがいて、古生物学者!!」でした。
今回の特別展の企画を担当した木村由莉さんという、女性研究者さんの著作です。
読み応えのあるボリュームですが、やや大きめの字&ふりがな付きで、どうやら小・中学生向けな感じ。
小学5年生になり、最近は「高校まではサッカーをがんばって、その後は古生物学者を目指す」と、やや現実的(?)な夢を描いているムスコくんには、まさにぴったりです。
帰りの電車の中で待ちきれずに開封し、数日で読破した様子。
「すごくおもしろかったよ。おかーさんも読む?」とかわいいことを言ってくれたので、「そう?じゃ、借りようかな」と軽い気持ちで読み始めたのですが、これがなかなか。
ムスコくんだけではなく、ハハの私にも、なかなか「刺さる」本だったのでした。
☆何だろう、身につまされる
1983年生まれの著者・木村由莉さんは、少女時代に映画「ジュラシック・パーク」を観た世代。「女性の古生物学者」という存在にインパクトを受けて、恐竜研究の道を志します。
高校時代に恐竜学者の先生と会って夢を描き、がんばって勉強をして大学へ。しかし、そこで知るのは、運と才能と努力を積み上げた人だけが研究者として生き残れる、という世界で・・・。
北海道で行われるフィールドワークで屈強な男性陣に太刀打ちできなかったり、フツーに東大生が多数派な学会で身の置き場がない思いをしたり。
まさに「もがいて、もがいて」という現実が描写されます。
なんだろう。読んでいて、不思議と「身につまされる」感覚がしました。
努力と才能で夢を掴んだ木村さんと、平凡な共働き主婦の我が身と並べて「身につまされる」という感想はおこがましいのですが。
でも、大学で男性メンバーの体力に驚愕したり(女子校出身者あるある)、勉強会や面接で「なんかすごい人」と隣り合わせになって気後れしまくったり。スケールは小さいながら、「うっわ〜。全然ついていけない!どうしよう」という思いをしたことは数知れず。
そういう、学生時代や社会人として修行を積む中でのヒリヒリした経験を、読みながらついつい思い出すわけです。
そして、同時に気がつきました。
ムスコくんは、これから、こういう経験に体当たりしていく年代に入るんだよねえ・・・と。
親の側も、どーんと見守る覚悟がいるぞ、と身震いがするのでした。
☆妥協しつつも、夢をかなえるということ
恐竜が好きで古生物学の道を志した木村さんですが、いろいろな経験を積む中で、最終的に「恐竜博士」ではない道を選びます。でも夢を諦めるわけではなく、自分に適性のある職を、きちんと勝ち取っていきます。
そうなのよね。そういうモノだし、それでいいのだと思います。
少し話が逸れるようですが、「将来の夢は?」と定番の質問を子どもにするのが、ワタシは苦手です。
たとえば「スポーツ選手!」という答えを聞くと、「それは無理」と思うくせに、「何でもいい」とか言われると、「もっと夢を描けばいいのに」なんて思ったりして、いったい自分はどんな答えを求めているんだろう、と自己嫌悪になるからです。
でも、やっぱり「将来の夢」は、大事。
好きなこと、得意なことを自分で握りしめておかないと、進路が選べないから。
そして、その職業そのものになることだけが重要じゃなくて、自分なりに選んだ進路の中でウロウロするうちに天職に出会ったりするもの、という気がしています。
そういう意味で、木村さんのストーリーは、本当にリアルですてきだな、と同年代の女性として、子育て中のハハとして感動したのでした。
☆数年後に、もう一度読んでみよう
スゴくおもしろかったよ、とムスコくんに本を返却しつつ、ハハは「この本は、君が中学生とか高校生になったら、もう一度読むといいよ」とアドバイスをしました。
古生物学を学ぶための大学や学部の選び方、力をいれるべき学習(ちなみに数学と英語らしい)などの情報は、リアルに「進路」を選ぶお年頃になったら、きっと参考になる、と思ったからです。
ちなみに、木村さんは「保護者の方へのアドバイス」も記してくれています。
「決して否定せず、過度に手を出さず、見守る姿勢を貫いてほしい」とのこと。
うん、その通り。肝に銘じておきます。
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