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音楽と私:3

 私の中学・高校時代において、気軽にいろいろな音楽に触れられる1番の場所がカラオケだった。友達がカラオケで歌っていた曲が気になったのがきっかけで、そのアーティストを好きになった、というのはよく耳にする話だ。当時の私は、誰かと遊ぶとなるとすぐに
「カラオケ行こうぜ!」
と誘っていた。それはもう口癖のように。毎回のように付き合ってくれていた友達には多分しつこいと思われていた。自分が普段聴かないジャンルの曲に出会えるのが楽しかったし、自分の好きな歌を思いっきり歌えたし、共通の好きな曲でバカ騒ぎできるのも最高だった。フリータイムで何時間も、ファミレスと同じように入り浸っていた。大人になった今でも、忙しい日々の隙を見てたまに、一人用カラオケで思いっきり歌ってストレス発散している。職場の人とプライベートで会うほど仲良くなったときも、割とすぐに
「カラオケ…行かない?」
と誘っていた。

 もう一つ、私にとって忘れちゃいけない音楽に触れた経験が、好きだったアーティストやバンドのライブだ。当時バイト代のほとんどをそこにつぎ込んでいたと思う。これも、友達の誘いがきっかけで知らないバンドとの出会いも多かった。背が小さい私は、ステージ上のアーティストをまじまじと見ることは少なかった。爆音に包まれて、自由にノッて、モッシュでもみくちゃになって、演出に感動したりして。そのためだけに何度も足を運んでいた。社会人になって、特に音楽好きではない夫と付き合い始めてから、ライブの帰りに連絡すると何故か必ずと言っていいほど機嫌を損ねさせてしまうのが悩みだった。自分の趣味と彼を天秤にかけ、段々と足が遠のいた。自分の趣味も大事にしたい、と気が付いた時にはもう、まだ小さい子供と義両親もいて、経済的にも時間的にも余裕がなく、もう10年近くライブには行っていない。

 昔ちょこっとバンドでボーカルをやっていた、と話すと
「へー!じゃあ歌上手いんだ!」
とよく言われる。決まってこう返す。
「いやいや、上手かったら今も続けてますよ~」
私は生まれ持ってのセンスだけで上手に歌うことはできない。多分、耳から脳への伝達が良くないのだと思う。聞いたものと同じ音程を出力しているつもりが、ことごとく外してしまうのだ。それだけならば、練習すれば少しは改善しそうなものだ。しかし、努力が苦手だ。これが最大の問題だ。努力をすることをいとわなければ、少しは当時の夢に近づいていたかもしれない。人に下手な歌を聞かせて不快な思いをさせることも少なかったかもしれない。歌手に限らず、様々な分野で“成功”している人のほとんどは、努力する才能、を持っているのだと思う。私にはそれが圧倒的に足りないのだ。
「歌手になりたかったが、諦めた」
ことを話すと、親にも夫にも、努力をしていない、それは本気とは言えない、などと言われた。そんなの私自身が一番わかっている。だけど、「歌が好き!」という気持ちだけで歌っていたあの頃の経験たちは、紛れもなく私の青春だ。

 最近の私は、幅広いジャンルの楽曲を持つ推しグループを中心に、いろいろ聴いている。サブスクでヒットチャートをかけたり、アイドルソングにときめいたり、娘と一緒に縦動画で流行している曲を踊ったり、その時の気分でヘヴィメタルを聴いたり。その中でも、心を動かされる音楽はたくさんある。聴く度に思わず涙が溢れてしまうような曲も。今は今の私なりに、音楽を楽しんでいる。


 あなたの周りにも、私の周りにも、人はそれぞれ。音楽というカテゴリに特別思い入れがない人もいれば、四六時中積極的に音楽と関わって生活している人もいる。私には私の、音楽との向き合い方があった。


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